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2022年06月20日
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​ヘーゲル『法の哲学』10 c立法権 第301節​

6月12日に開かれた第4回ヘーゲル『法の哲学』(福田静夫講師)学習会は、
第三章「国家」、c立法権の前半の、第298節から309節を学習しました。

今、6月22日公示-7月10日投票で参議院選挙が行われていますが、
今回の学習は、ヘーゲルが「議会」の役割について考察している部分ですから、私たちにとっても参考になる面がありますよ。ズームによる学習でもあり、聴きとりにくい面もあり、録音CDが到着してからでないと、講義の正確な紹介は出来なくて。これは私などの勝手な受けとめといったところなんですが。




今回は、第301節についてです。

一、事前に配布されたテキストの1は、福田先生による『法の哲学』該当部分の翻訳です。
24ページ分のレジメですが、第301節は、本論、注釈1、注釈2、注釈3、注釈4、追加の、6つの部分からなっています。


この部分のヘーゲルの論点を、私なりに勝手に要約してみました。

1、〔本論〕議会の使命は、公事を、議会で意識的に顕現させることにある。

2、〔注1〕議会制民主主義の討論には、「非現実的な信託や美化」を許さない文化と教養が国民全体に必要である。国民・憲法・議会について歪んだ見方が一般に流布している。
その第一は、代議士は何が国民の福利にとり最高かを理解している、との誤解。
第二は、国民は福利について最高の意志をもっている、との誤解がある。

3、〔注2〕議会制度の公務員・官吏制度に対する国民認識の差の問題。
第一の代議士に対する誤解については、第1に国民は自分の欲することを知ってるわけではない。それを知るには深い認識と洞察がなければならない。
第2に公共の福利や自由について、議会にはその洞察がない。国家の公務員・官吏が国家の諸々の機構や要求について包括的な洞察・技能をもっている。議会がなくても最善のことが出来る。
第3に、議会のなすことは「一種の添物的な洞察」で、官吏に対する緊急な要求や欠陥を見抜いて、最善の対処をうながす点にある。

4、〔注3〕議会に対するヘーゲルの暴徒感と啓蒙君主国家感の複合的なコンプレックス
第二の議会(国民)が善い意志をもっているとの誤解については。
政府に対し悪意やよくない意志があると前提してかかる賤民の見方、総じて否定的な立場による。
しかしそれは官吏たちから逆ねじくうことになる。議会は個別的特殊的利益ばかり追求して、国民的・国家的な普遍的な利益を見ていないと。

5、〔注4〕公共の福利や理性的自由は、議会による保証だけでなく、君主の主権・王位の世襲・裁判制度などにもよっているし、議会より後者のがはるかに強く存在している。
それ故に、議会の独自の概念規定〔役割〕は、市民社会の各圏の洞察と意志が、議会においても国家と関連して顕現する点にある。この契機が総体性にまで展開された理性の規定であり、内的必然性として出てくる。

6、〔追加〕議会に対する政府の立場は、本質的に敵対的なものであってはならない。敵意をもって反目することを必然性としてみるのは悲しい誤謬である。
政府は党派ではなく、党派的に対立するのは不幸であり、健全な状態ではない。
議会が可決する租税は、国家への贈り物と見なされるべきでなく、自身の福利のために可決されるのである。
議会の本来の意義は、国家が議会を通じて国民の主体的意識の中に入っていくことであり、そして国民が国家に参与しはじめるということにある。

以上が、この第301節の要約です。

ヘーゲルの『法の哲学』は1821年の刊行です。ヘーゲルは1831年に死去するまで、ベルリン大学でくりかえし講義をかさねていたんですね。それはプロイセンの君主国家体制を念頭にした憲法論なんですが、なんたって日本では江戸時代ですから、その中身に時代社会の制約はあるんですが、しかし今に生きる思想です。その憲法論は、いわゆる反動的な専制君主制を説いているものではなくて、イギリス・アメリカ・フランスの近代民主主義の流れにたって、法治国家の精神にたった立憲的君主制のあるべき姿を説いているんですね。これはすばらしいことだと思いませんか。

日本の現状を見るに、その基本がまだ理解できない政治家がはいて捨てるほどいるんですから。時代錯誤というか、啓蒙の以前なんです。同じような君主制として、戦前の日本帝国憲法はこれに習おうとしたんですが、絶対主義的な専制君主制に完全変質しました。今でも安倍元首相などをはじめとして、その同類が見られます。ヘーゲルの憲法論の法治主義などは、今でも大切な課題なんですね。
政治家についても、ここで指摘してますが、「第一の代議士に対する誤解については、第1に国民は自分の欲することを知ってるわけではない。それを知るには深い認識と洞察がなければならない」、ようするに見識がもとめられており、誰でもよいわけじゃない、とヘーゲルは指摘しています。ズバリですね。

ようするに現在の日本の政治家の多くは、近代民主主義や1821年時点でのヘーゲルなどの、世界の憲法論の流れや到達点が理解できていないということです。自分勝手な恣意的な思いをならべたて、それを合唱しているわけですが。日本学術会議の6名の任命拒否も、戦後75年の解釈改憲の流れも、共通ですね。これは学術の世界の基本的な到達点ということを、これらの政治家たちは分かってないことを、自らの不毛を証明しているんですね。


二、これに対して、マルクスが『ヘーゲル法哲学批判』(1843年)を残しています。

『国民文庫』版で、この第301節に対してですが、マルクスはP108からP119の、12ページもの批判を展開しているんですね。

私は、以前にその学習を発信してるんですが、

第五回マルクスの『ヘーゲル法哲学の批判から』(c立法権 その2) | みかんの木を育てる-四季の変化 - 楽天ブログ (rakuten.co.jp)

参考までに、それを紹介しておきます。

というのは福田先生の今回の講義の場合、ヘーゲルの『法の哲学』第298節から309節までの、13節分を一回で講義するわけですから、マルクスの批評を検討するまでは、とても時間が足りなかったんですね。
そして、福田先生が読み込んだ成果によって、マルクスが言いたかっただろう点が、よりはっきりと見えてくるんです。

マルクスは、じつに丁寧にヘーゲルを批判しています。
これはこれで、大事な問題ですから、別に読んでいただくこととして。

一点だけ紹介させていただきます。
ヘーゲルは客観的観念論者として具体的な現実の事例をあげて、理念というか、そのあるべき姿を説いています。啓蒙君主制の社会改革のリーダーシップをといていたわけです。ところが、その死後、1840年代のマルクスの時代となると、君主制が反動的なものとして変わってきます。マルクスはライン新聞を廃刊せざるをえなくなるし、自由を求めてフランスに亡命せざるをえなくなるんですね。
ヘーゲルの理念の具体的現れとしての現実を評価する立場ではなく、現状の歪んだ姿を批判して、それを変えていく中に、あるべき姿(理念・精神)がみえてくるとの立場に立ちだすわけです。

マルクスの言葉ですが、
「ヘーゲルによってもっとも筋道だった、もっとも豊かな、そして究極的な形にまとめられたドイツの国家および法の哲学に対する批判は、一面、現代国家とそれにつながる現実との批判的分析であるとともに、他面また、ドイツの政治的および法的意識の従来のあり方全体の決定的否定でもある」(『ヘーゲル法哲学批判序論』より P340)

三、最後に、国家公務員・官僚論に関係して、一冊の本を紹介させていただきます。

『官邸の暴走』(古賀茂明著 角川新書 2021年6月10日刊行)です。

改革のヴィジョンで一致しているわけじゃないんですが、そこには多々問題を感じさせられるんですが。しかし、長く通産官僚をつとめてきた人ですから、今の政治家と政権運営の実態を体験してきた人ですから、その人が昨今の政治権力を批判しているんですね。これは、今の政治構造を知ろうとする上で、傾聴に値すると思います。それは国家公務員として本来の責務を放棄して、官僚の体質悪を地で行っていることが紹介されてます。
ヘーゲルの国家公務員としてのあるべき姿と、同時にマルクスの官僚批判が、ズバリとあてはまる現在の姿を明らかにしてくれてます。こうした政権を告発する人が出てくるというのも、やはり今日の時代の声ということですね。

今回は以上です。






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Last updated  2022年06月20日 18時38分45秒
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