すぐれものです、『人新生の「資本論」』(斎藤幸平著 集英社新書)
『人新生の「資本論」』(斎藤幸平著)を読む斎藤幸平著『人新生の「資本論」』(集英社新書)をご存じでしょうか。コロナで同窓会が中止になったんですが、その時のやりとりの中で、「NHK100分で名著」での斎藤幸平「甦る、実践の書 マルクス資本論」が話題となり、複数の人から紹介がありました。今年の1月に4回で放映されたんだそうですが。当方はみかん仕事の渦中だったんで見ていなかったんですが。それがきっかけで、なんとか再放送を1,2回見ました。しかし全部は見れなかったんです。それで、中身を確かめたくなり、NHKテキストを取り寄せてフォローしてみました。その時の印象は、環境問題にら『資本論』に注目したんだな、マルクスが後期になって唯物史観の考え方をかえたと新解釈をしている、よくある、知ったかぶりの勝手な解釈論の類だ、くらいの印象だったんですが。この9月にはいって、数日前ですが、書店で『人新生の『資本論』』を入手して、読んでみたんです。といっても、まだ第四章「人新生」のマルクス、を読んだだけなんですが。印象は、第4章のマルクス論を読んで少し変わりました。まじめに34歳の若き研究者が、マルクスと『資本論』を研究していることを知りました。だいたい、私などの周りでは、『資本論』を天まで持ち上げるんですが、本をもったことはあるんでしょうが、それを本当にひも解いて読んでいるのか、首をひねることが、一般的だったんです。それはそうなんですね。この大著をねばり強く読み通すなんて奇特な方は、世の中にそうそう多くいるとはおもえないんです。勝手な解釈ばかりして、読んだ格好だけはつくろっている人が、多いんです。まず驚いたのは、この本が、いま日本社会に30万部を突破して広がっているんだそうです。日本は、戦前からマルクス研究では、脈々として国家・警察権力の弾圧に抗して、続けられた歴史がありますが。今日、戦後の自由社会において、そんなことは一部の人の認識で、多くはそんなことは問題にならならないじゃないですか。そう思っていたのに、この『資本論』に関する本が、30万部を突破して読まれているとは、国民の良識もたいしたものですね。それとこの本は、まじめに、マルクスの考え方を探ろうとしています。しかも若い研究者です。これは、それだけでも、一つの希望を感じさせてすね。ただ、私などは感じるんですが、一般に研究者が弁証法をしっかり学んでないんですね。そのために、マルクスの主張を矛盾した混乱したものとってしまうきらいがあるんです。それは、この斎藤氏がそうだということではないんですが、まだ私はそこまで言えるほど読んではいないんですが。あくまで、大きな一般論として、マルクスを研究している大御所的な人たちのなかでも、哲学・弁証法的考え方が教科書的な理解にとどまっていて、そのために解明するのではなく、勝手な混乱した見解をならべて、さも新解釈を見つけたかの如く言っているのを見聞するんですね。そんなことで、新しい見解というものには、私などは、すぐにまゆつば的な感じを持つんですが。しかし、この斎藤幸平氏の見解は、未だマルクス論しか読んでないんで、全体的見解は分からないんですが。全体的な評価はまだできないんですが。それでも、新たに提起している見解の是非はともかくとして、少なくとも誠実に真摯な姿勢で、マルクスと『資本論』を探究していることはうかがえます。そこに未来を感じます。これから、この本の全体を読んで、その見解を吟味させていただこうと思っています。どの様な見解を提起しているのか注目ですね。それと、30万余人の読者が、どの様な感想をもったかも、知りたいですね。