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カテゴリ:SF
実はこの本、町の図書館にもあるのだが、一種の珍本である。本邦初訳だったり現在では入手困難だったりする短編ばかりが収められている。だが、忘れ去られるには忘れ去られるだけの理由があるのだ。もちろん本書に収められたすべての小説にそれが当てはまるというわけではないけれども。
第一、空想科学小説という呼び名がレトロだ。空想的科学小説という意味なのか、空想科学的小説という意味なのか、にわかに判別しがたい。おそらくその両方なのだろう。 「エイロスとチャーミオンの会話」エドガー・アラン・ポー ウェルズの「星」に先んじた破滅テーマの先駆的SF作品。 「痣」ナサニエル・ホーソーン 完璧な妻の美しい顔のわずかな痣は、生命の泉に直結していた。それなのにその痣をとろうとした夫は… 「いかにして重力を克服したか」F・J・オブライエン いまどき夢オチなんて、漫画でもつかわないね。 「体外遊離実験」コナン・ドイル ウェルズの「故エルヴシャム氏の物語」の方が気が利いている。こちらは単なるドタバタ喜劇で、オチがまた気に食わない。 「来るべき能力」エドワード・ベラミイ もしもテレパシストの島に漂着したら… 「三番目の霊薬」イーディス・ネズビット 『砂の妖精』の作者が贈る不老不死になりそこなった男たちの物語。 「ロンドン市の運命の日」ロバート・バー 霧のロンドン市の大気はある日、毒ガスと化した。たまたま酸素発生装置を手に入れた男だけが助かったが… 「自動チェス人形」アンブローズ・ビアス フランケンシュタイン物語のヴァリエーション。もっとも今では人間がコンピュータに負ける時代になってしまった。 「テムズ・ヴァレイの大災害」グラント・アレン 火山の噴火と溶岩流で滅びたロンドンの話。バーの話に少し似ている。 「電気を買い占める」ジョージ・グリフィス マッド・サイエンティストかレックス・ルーサーか。 「トカゲ」C・J・カットクリフ=ハイン 洞窟の中で主人公が発見したオオトカゲは退化した人間のなれの果てか、それとも… 「無線」ラドヤード・キプリング 無線実験のはずが降霊会になってしまった。 「椅子で暮らした男」ジャック・ロンドン 空想科学小説というより怪奇小説かミステリの範疇に属すると思うけれど。 「未来新聞」H・G・ウェルズ 未来が自分の理想どおりにいかないことを先刻承知のウェルズは、語り手の名前をヒューバート・G・ウェルズと洒落ることにした。 処分本NO.142。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.10.24 20:50:08
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