ブラム・ストーカーのドラキュラ伯爵と違って、こちらは若きヴェルテルならぬフランツ君。このドイツ青年、主人公なのだが自分がヴァンパイアであることにまったく気がつかぬ。あまつさえ文字通り献身的な恋人ロッテを吸血鬼だと誤解するが…
第一次世界大戦を背景にしたヴァンパイア・ストーリーが乙。「一人の殺害は犯罪者を生み、百万の殺害は英雄を生む。数が(殺人を)神聖化する」という『殺人狂時代』のチャップリンの台詞に倣って言えば、
「俺はただの一人の女も殺さなかった。ただの一人の女も吸血鬼にしなかった。カブトムシが生きていくために樹液をすするように俺も生きていくために人様の血を少しばかりすすらせていただいただけだ。然るに君たちはナイフよりも野蛮な武器を持ち、血まみれになって殺しあう。血塗られた歴史にまみれているのはどっちだ? 呪われた存在はいったいどっちだ?」
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