2691706 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Calendar

Category

Freepage List

2011.07.27
XML
カテゴリ:海外文学
旧訳の『ライ麦畑でつかまえて』で有名なサリンジャーの代表作。以前野崎孝さんの翻訳を手にしたときは、不良言葉が嫌で、三頁も読めませんでした。村上春樹さんの新訳で、初めて読み通すことができました。

物語は、高校退学→放浪→帰宅→精神病院という一連の流れに沿って進みます。内容と解説については、旧訳者解説を参考にしてください。ただ解説では本書を『ハックルベリー・フィンの冒険』や『坊ちゃん』と比べていますが、不具の感想は違います。ホールデンは彼らのようにタフではありません。不良になりきれない、むしろ神経症的で純な少年です。村上春樹さんの翻訳のせいかもしれませんが、どちらかと言えば『車輪の下』を連想しました。

この小説は今も世界中で読まれているそうです。この齢になって読むと小気味よい諷刺くらいにしか感じませんが、確かに、主人公が大人社会の嘘や俗物性やインチキを糾弾する様は、10代の若者の共感を呼ぶでしょう。
もっとも本書に入れ込みすぎるあまり、人を殺してしまった事件もあるようで、怖い話です。その影響力の大きさからも、日本文学でいえば『坊ちゃん』よりむしろ『人間失格』に近い毒があると言えるのではないでしょうか。

以下覚書。
『アフリカの日々』は『1Q84 BOOK3』にも出てくるが、いまだ読んでいない。村上春樹氏は、本書を念頭に置いてあれを書いたのだろうか。

トマス・ハーディの『帰郷』、ヘミングウェイの『武器よさらば』、フィッツジェラルドの『グレート・ギャッピー』(これも村上氏の新訳がある)、いずれも読んでいない。あるいは最後まで読み通していない。読んでから再読すると主人公の気持ちがよりわかるだろうか。

『ロミオとジュリエット』についての尼さんとの会話は、思わずにやりとしてしまった。

「未成熟なるもののしるしとは、大義のために高貴なる死を求めることだ。その一方で、成熟したもののしるしとは、大義のために卑しく生きることを求めることだ」これを引用したアントリーニ先生は、本当にゲイだったのだろうかね、ホールデン君。百歩譲って先生に男性(少年?)に対する偏愛があったとしても、君だって純な子供(とくに小学生の妹)に対する偏愛的傾向があるじゃないか。だからと言って君は変態ではないだろう、ホールデン君?

W・P・キンセラが『シューレス・ジョー』の中でサリンジャーを登場させているのは有名な話だ。一方、本書には『シューレス・ジョー』の主人公、レイ・キンセラの兄弟リチャード・キンセラと同姓同名の少年がホールデンの話の中に登場する。「話のポイントからちょくちょく離れ」る、「ナーバス」な生徒だったそうだ。

最後に、本書で不具がもっとも好きな一節を引用して覚書を終わりにする。

一度チャイルズに質問したことがある。イエスを裏切ったユダのやつは、自殺をしたあと地獄に堕ちたと思うかと。もちろんさ、とチャイルズは言った。それは僕が彼と意見をまったく異にするところだった。千ドル賭けたっていいけど、イエスはユダのやつを地獄には送らなかったはずだ、と僕は言った。今だって、もし手元に千ドル持っていたら、そっちに賭けると思う。十二使徒の連中なら、それが誰であっても、きっとユダを地獄に送っていたことだろう。それも問答無用の超特急で。でも、なにを賭けてもいいけどさ、イエスならそんなことはしなかったはずだ。



【中古(未使用)】キャッチャー・イン・ザ・ライ<未使用本>

 【中古】新書 ライ麦畑でつかまえて【画】






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011.07.28 01:45:24
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.