2014/10/13(月)11:56
『血は冷たく流れる』ロバート・ブロック:早川書房
異色作家短篇集8。SFあり、ミステリーあり、スリラーありで分類に悩むが、とりあえずここに。どれも最後の一行が効いている。
「芝居をつづけろ」
リンカーン大統領を暗殺したブースは、シェイクスピア劇の役者だった。
「治療」
相棒に裏切られ、金は川の中へ沈み、女は頭を文字通り縮められ…
「こわれた夜明け」
全面核戦争で都市が滅びても、まだ「われわれは勝ったのだ」という将軍。
「ショウ・ビジネス」
選挙なんかショウビジネスにすぎない。候補者なんか俳優でたくさんだ。だがそのアイディアはこちとらがすでに実行に移してるんでね、あんたには…
「名画」
毒蜘蛛で死んだ? とんでもありません。あれは無毒でさあ。ただあっしがちょこちょこと蜘蛛にデザインしただけで…
「わたしの好みはブロンド」
地球人の女は大好物さ。ただしブロンドに限るね。極上の美味だよ。
「あの豪勢な墓を掘れ!」
ある種の音楽は麻薬に似ている。女はヤクの犠牲になった。マネージャーは怒ったが、逆に…
「野牛のさすらう国にて」
「こわれた夜明け」の姉妹編。「おまえのやさしい手で」にも少し似てる。
「ベッツィーは生きている」
君は自分の母親を、そんなにも心の奥底で憎んでいたんだね。犯罪小説の白眉。
「本音」
もしもみんなが嘘をつけなくなってしまったら…
「最後の演技」
死人に口なしだって? とんでもない。わしなら死人にだってしゃべらせてみせるさ。これでも昔は一流の…
「うららかな昼さがりの出来事」
催眠術ではなく、本当に物語の世界を夢として提供されるなら、どうします? 『不思議の国のアリス』を下敷きにしたパロディ・ファンタジー。
「ほくそ笑む場所」
私は注目されたかったの。だからあの子を殺したの。けれどそれが呼び水になって自分が変質者に襲われるなんて、考えてもみなかったの。
「針」
針で電話帳を刺していた男は死神ではなかった。針そのものが死神だった。それなのに俺は針を盗んでしまったんだ…
「フェル先生、あなたは嫌いです」
自分の精神の安定を図るあまり、架空の精神科医を生み出し、あまつさえのっとられてしまった男の話。
「強い刺激」
男をカモにしているつもりで実はカモにされてたなんてね。結末はいかにも『サイコ』の原作の作者らしい。
血は冷たく流れる 異色作家短篇集 / ロバート・ブロック 【単行本】