敗けた戦争はトラウマになりやすい。日本にとっては対米戦争が、アメリカにとってはベトナム戦争がそうだった。もっともその後湾岸戦争やイラク戦争を経て、すっかり「帝国」に戻ってしまったが。
主人公は極秘任務を与えられる。ベトナムで独立王国を築いている元グリーンベレーの大佐、つまり同国人を暗殺せよという。「この任務は公には存在しない」とまで言い切って。
名前はあるがあえて呼ばない。彼はどうしたか。ベトナム兵と戦うアメリカ軍と一緒になった。同化して、大佐のいる地域へと旅を続ける。ベトナム人も出てくるが、被災者を支援するなど、コッポラ監督の視線は
『ランボー2』よりもよっぽどベトナム人に対して同情的である。
旅の途中でフランス人の入植者たちと出会う。
「俺たちはもう70年もこうして戦っている。俺たちがここへ来た時、ここには何もなかった。俺たちがこの土地を開墾したんだ。だからここは俺たちの土地だ」
ここで語られているのは大義である。先の大戦を扱った日本の戦争映画は、戦争の悲惨さを訴えるものが多い。だがアメリカ人は大義を問う。「あの戦争には大義があったか？」と。勿論負けたからこその「反省」であり、その後の中東での戦争の「勝利」によって、その問いかけは反故にされてしまったのだけれど、それは今は問うまい。
紆余曲折を経て主人公は目的地へたどり着く。大佐は確かにそこにいた。だが大佐は狂信者でも独裁者でもなかった。聖書やフレーザーの『金枝篇』を読むインテリだった。訪問者の目的を知っていながら、監禁することもなかった。主人公は暗殺を躊躇するが…。
3時間。じっと観つづけるのにとても忍耐を要する映画だった。
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