つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

2017/11/12(日)23:38

最後の挨拶

障害のことなど(110)

みなさん、こんにちは。今日は〇〇特別支援学校OB懇親会に来ていただき、誠にありがとうございます。早いもので、本校も××歳になりました。私とほとんど同じ年です。 OB懇親会も、今回で△△回目になります。第1回は、ちょうど私が本校の中学部を卒業して、□□高校に入学した年です。そう思うと感慨深いものがありますが、来年度の本校創立××周年を機に、同窓会として生まれ変わることになりました。 私が会長になって今年でちょうど×0年になります。この間、職責を全うできたとは思いません。至らなかった点も多々ありました。しかしとにかく、次の時代への道筋をつけることはできたかな、と考えております。そこでこの×0年を区切りとして、私は懇親会の会長を辞したいと思います。ここにいらっしゃる大方の皆さんにとっては初めて聞くことかもしれませんが、新しい時代には新しい会長さんがふさわしい、と考えます。 会長としての話を終える前に、昔話と夢物語に少し、おつきあいください。 ××年前、〇〇養護学校ができた当時、本校はまだ義務制でなく、地元の小学校、中学校に行けなかった子どもたちが来るところでした。私もその一人です。それが昭和54年の養護学校義務化とともに、それまで就学すら免除されていた子どもたちが本校に来るようになり、通学できない子どもたちのための訪問学級もできました。 今では建物の外観もすっかり様変わりし、廊下や校舎の位置と場所、そしてこの体育館だけが、昔ながらの養護学校の面影を今に伝えています。何より時代の流れを感じるのは、学校に看護師さんがいらっしゃることです。医学的ケアが必要な子どもたちの教育を保証するためですが、設立当時、いや昭和の常識や感覚では、とても考えられないことです。 何が言いたいかと申しますと、障害をもつ子どもの教育にとって、時代の流れはいい方向に向かっているということです。そしてもうひとつ、先のことは誰にも分らない、ということです。 ​どんな障害をもつ子どもにも教育を保証する、本校設立以来、時代の流れは確実にそういう方向に進んできました。しかし、これをさらにもう一歩進めて、どんな障害をもつ子どもたちも、障害をもたない子どもたちと同じスペースで教育を受けることができる、そういう時代に向かって次の時代は進んでいくのではないか、いや進んでいってほしいと、私は願っています。​ 夢物語。まさに夢物語です。しかし、ここがゴールなのでしょうか。​障害の軽いこどもは地元の義務制の学校に行く。そうでない子どもは特別支援学校に行く。それが最終的な答えなのでしょうか。私はこっち側の学校に行くからこっち側の人間、あの人たちはあっち側の学校に行くからあっち側の人間。そうやって知らず知らずのうちに生まれた世の中の差別意識が、あの相模原の事件、やまゆり園の悲劇を生んだのではないでしょうか。​ 私は恐いのです。小学校、中学校でもっともっと健常児と障害児がともに学び合う環境を作っていかなければ、いつか再び、あの相模原事件のような悲劇が繰り返されるのではないかと恐れています。これは、私の思い過ごしでしょうか。 ​私はあるいは、先走りすぎているのかもしれません。しかし、新しい理念が語られなければ、何事も現状維持のままで終わってしまいます。新しい理念が語られなければ、養護学校が義務化されることも、特別支援学校に変わることもなかったでしょう。​ 時代は変わります。私が今ここで申し上げた夢物語も、今でこそただのほら話ですけれども、10年後、20年後の教育現場では、また違った受けとめられ方がされるかもしれません。 もちろんそうなれば、今の特別支援学校の規模はかなり小さくなるでしょう。小学部、中学部の児童生徒や先生たちがみんな地元の義務教育の学校に行ってしまって、本校も、たとえば〇〇「高等特別支援学校」と名前が変わっているかもしれません。 くどいようですが、これは夢物語です。夢が実現するとは限りません。しかし、語られなかった夢は、結局は夢のままで終わってしまいます。​もし夢に実現する可能性があるとすれば、それは、その夢がみんなに向かって語られたからです。​ アメリカの南北戦争で奴隷が解放された後も、黒人は長く差別されてきました。その差別は今も続いていますが、昔と同じではありません。黒人牧師マーチン・ルーサー・キングが語った夢は21世紀になって実を結び、アメリカではじめての黒人大統領が生まれました。 時代は変わります。みなさん、私の夢が実現するかどうかはわかりません。しかし、それは問題ではありません。​お互いのもっている夢を、明日のために、お互いに語り合おうではありませんか。​ 私は今年度をもって懇親会の会長を辞しますが、この学校が将来どうなろうとも、本校の卒業生であったことを、誇りに思います。 ご清聴ありがとうございました。

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