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つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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2019.09.28
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勉強になった​。春画はアートである。断じてポルノではない。現代の彫り師や刷り師の匠の技をもってさえ、完全には再現できないほどの緻密な木版画である。浮世絵の兄弟なのに、日本では日の目を見てこなかった。なぜか。

歴史をさかのぼってみよう。春画は、もともと大名のものであった。御輿入りする娘に、夜伽の嗜みとして持たせたものだ。江戸時代、確かに規制はあった。しかしそれは後に明治になってからの「弾圧」のようなものではなかった。お上はただ、春画とともに書かれる台詞の中に、時の政府を揶揄するような内容があることに敏感だっただけで、庶民の中に深く結びついていた春画そのものまで杓子定規に取り締まるつもりはなかったのではないか、と研究者は語る。

春画は海外でも好評だった。ピカソは、試みに自分でも春画を描いている。そこから得たヒントをもとに、あの、いろいろなアングルから見えるはずのものを同じアングルから描いた、不思議な「肖像画」を描いたのかもしれない、と思う。

それは違うかもしれないが、海外で好評だったことは確かだ。ポルノではなく、最初からアートとして受け入れられたのは、その発想と技術の高さによるものだろう。大英博物館で開かれた本格的な春画展は大人気だった。ところが同じことを日本で、特に東京でやろうとすると、趣旨には賛同するものの、みな及び腰になる。逮捕されたくないのである。

猥褻罪、という名の罪が刑法に定められたのは、明治時代の終り頃であった。それまでは、少なくとも日露戦争ごろまでは、春画は縁起物、生命讃歌の象徴、弾除けとして、戦場に持参されるくらい、みな当たり前に持っているものであった。ところが刑法にこの言葉が出現することによって、数多の春画が焼かれ、春画作家も逮捕された。近代日本の焚書坑儒である。

もともと日本の性文化は西洋に比べおおらかなものだった。それを暗く陰惨なものにしたのは、明治という時代である。西洋に追いつき追いつけとばかりに、あちらの基準に合わせて劣っている、恥ずかしいと自分たちで勝手に判断したものは、どんどん抑圧し、弾圧していった。実はその中にこそ、日本の誇る珠玉の宝があったのに。春画はだめで西洋の裸体画はよいなどということがまともに言われたことを、日本人は恥ずかしいと思わなければならない。

だが、亡霊はまだ生きている。20世紀末、平成の世になって、ようやく春画が無修正で出版物として出回るようになった。最初は何十万もする代物だったらしいが、警察が逮捕しなかったことで、安く手に入ることになった。春画がアートとして認められた瞬間だったのかもしれない。だが、個人的には、インターネットで無料でヌード写真が手に入るようになったからだ、と思っている。

それでも、展覧会の道は遠かった。地方では、あった。しかし東京の美術館はなかなか手を挙げてくれない。細川元首相の援護射撃で、やっと永青文庫で開催することができた。それが今から4年前の話である。そのあとはまるで音沙汰なし。

日本がなぜ無謀な戦争に突っ走っていったか、突っ走ったのは仕方ない面もあるにせよ、どうして止めることができなかったのか、わかったような気がした。だれも現状を変えたくないのである。怖いのである。逮捕されるのが。非国民というレッテルを張られるのが。誰かにやってほしい、でも自分は手を染めたくない、という卑怯な精神。日本人は結局、この100年何も変わっていないのではないか。
そんな感想をもってしまった。


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Last updated  2019.12.10 00:31:44
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