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西條剛央のブログ:構造構成主義

アドバンス編のためのまえがき





「アドバンス編のためのまえがき」

 本書は『ライブ講義・質的研究とは何か SCQRMベーシック編』の続編です。当初は一冊の本として構想されたのですが、分量が多くなってしまったためベーシック編・アドバンス編に分けることにしました。読者の関心に応じて、それぞれを活用できるようになっていますが、本書は続編になりますから、ベーシック編と併せて読んでいただくのがよいかと思います。

 質的研究とは何だろう?といった素朴な疑問からこの本を手にした人は多いことでしょう。実際、本書(ベーシック編とも併せて)には、それについて考えるためのリソース(資源)がたくさん詰まっており,たとえば、ベーシック編の「はじめに」には、あらゆる質的研究法に通底するエッセンスが書かれています。

 そこでここでは「質的研究とは何か」を考える際に役立つ奥義(ヒント)を伝授しておきたいと思います。

 ヒント。質的研究とはコトバです。

 あ、本を閉じないでください。決してふざけているわけでも、煙に巻こうとしているわけでもありません。「質的研究」と呼ばれる以上、誰が何と言おうと、それはコトバなのです。そんな当たり前のことは知っていると思われるかもしれませんが,質的研究とはどのようなコトバなのかを深く理解している方はそう多くないように思われます。

 「質的研究とは何か」という問いは,あたかも確固たる答えのある事実についての問いのように見えますし,実際,自分のやっていることこそが質的研究であると主張する研究者も散見されます。

 しかし、「質的研究」というコトバは、特定のモノを指し示す実体概念ではないのです。

 「いや、実際に質的研究というモノが在るからこそ、それを指す質的研究というコトバが存在しているのではないか」と思われるかもしれませんが、それは錯誤であって、実は話は逆なのです。つまり,僕らが「質的研究」というコトバを使っているからこそ、あたかも実体があるかのような錯覚に陥ってしまい、「質的研究とは何か」という問いは、解けない難問となっていたのです。

 「質的研究」というコトバを使っているのは誰でしょうか? 僕やあなたや専門家と呼ばれる人々ですよね?したがって、質的研究とは何かを知ることは、唯一の正しい質的研究法を発見することでも、質的研究についての知識を詰め込むということでもなく、質的研究と呼ばれるもののあり方や、それについての自分の理解の仕方を知るということなのです。

 そのように捉えることによって、領域や時代によって質的研究と呼ばれるもののあり方が違ったとしても、そのつど妥当な「答え」を作れるようになるのです。最も大事なことは、そのための“原理”を掴むことなのです。

 そして,それを可能とするためには,研究とは何か,方法とは何か,理論とは何か,それを得るためのデータとは何か,それのもとになるコトバとは何か,そもそも存在とは何か,それを認識するとはどういうことかといったように根本にまでさかのぼっていき,原理的に問い直す必要が出てきます。

 このアドバンス編ではそうした難問をわかりやすく解説するとともに、あらゆるプレゼンテーションに役立つ視点、賢い質疑応答のやり方、研究評価の実践的解説、論文を書くときの技法とコツ、研究法を上手に修正して使うための方法、一事例でも一般化可能にする枠組み、科学性の担保の仕方といった、あらゆるタイプの質的研究を進める上で役に立つ「メタ研究法」が書かれています。そして、それらを支えているのが、本書の理論的基盤となっているSCQRMであり、最後にはその体系的な姿を目にすることになるでしょう。

 SCQRMとは、Structure-Construction Qualitative Research Method(構造構成的質的研究法)の略称であり、これを身につければ、あなたの研究能力は飛躍的に上昇することでしょう。というのも,それはあらゆる研究を行う際の「基本的な考え方」となる原理的な研究法だからです。

 え、本当にそんなことが書かれているのかですって? そればかりはやはりご自分で確認していただくほかなさそうです。それでは本論の講義でお会いしましょう。


西條剛央 



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