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西條剛央のブログ:構造構成主義

西條剛央のブログ:構造構成主義

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西條剛央

西條剛央

2006/02/15
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カテゴリ:発達
大学院のゼミの後輩達(10名)とスノボに行く。


元来出不精で,こういう企画には「いってらっしゃい!」といって見送る方なのだが,あまりにお得なツアーなので思わず参加表明してしまった。

なんと,往復運賃,3泊の宿泊代,リフトチケット代,レンタル代,そして「天然露天風呂温泉」までついて2万円!

何よりも温泉付きに惹かれた。

締め切り近い校正原稿もかかえていたが,それは持って行って暇を見てやることにした。



初日はサイコーの天気。

滑る途中で1回は横の方で空を眺める。

ふかふかの雪にバタッと倒れたり,雪玉投げたりするだけで気分は爽快。


そんなことしていると,

後輩達に「西條さんが,ふつーの人になっている」と言われる。

「オーラが消えている」らしい。

そんなオーラいつも発しているつもりもないけども,たしかにふだんははしゃいだりしないかもしれないな。


スノボは得意というわけではなくて,1,2年に1度やる程度。

スノボはスキーより簡単だと思う。

初心者でも何度か降りてくればすぐにそこそこ滑れるようにはなる気がする。

しかし,1,2年後には,滑る前にスノボのシューズをはくために留め具のはずし方から分からなくなっており,またゼロから再出発することになる。今回もそうだった。



そこで思い付いたのは,「個体発生は個体発生を繰り返す」というテーゼ。

これは同義反復でも,比喩でもない。

ただの事実である。

「それは個体発生を反復しているのではなくて,単にやり方を忘れちゃっているのであって,それを思い出しているだけだよ」と思うかもしれない。

しかし,これはたぶん事後的な言明なんだと思う。

少なくとも,行為者の進行形の視点からすれば,滑り方も逐一,経験から再び同じ道筋を経ている感じがする。最初からどこかに転がっているモノ(コツ)を探すように「思い出している」のではなくて。

たとえば,うまいひとをみていて,「膝を曲げた方が安定して滑りやすそうだな」とか,「身体を斜面に沿うようにした方が滑りやすそうだな」と気づいた後になって,「あ,これは以前も同じことを思ったな」となって,その瞬間「忘れていた」ということになるのである。

つまりそれが「構成された」時点で,その記憶は実体化し,それと同時に「忘れていた」ということも構成されて,「思い出した」ということになるのである(ややこしい)。

そして,これらは「相即」(隙間がない様子)しているから,「構成した」部分は省略しちゃって,「忘れていた」ということになるんだと思う。

けど,行為者の進行形の視点からすれば,せいぜい「再構成」しているというのが実際のところだろう。



ちなみに,このテーゼのもとは,ヘッケルの反復説である。

それは「個体発生は系統発生を繰り返す」という有名なテーゼである。

系統発生とは「進化」のことである。

つまり,あかちゃんが大人になるにつれて,四本足から二本足になっていったり,頭がよくなっていったという個体発生は,は虫類などから哺乳類,そして人間になるといった進化の過程を繰り返すというものである。

多くの反証事例が出てきて,今となってはこれはフィクション程度の意味しかもっていない。

ヘッケルは,それらが似ているなーと思ったんだろうね。

事後的に,なんだそりゃとか思うのは簡単だけど,広まるということはそれなりにその時代において説得力があったのだから,それはすごいっちゃすごいよね。

けど,今となってはやっぱりウソだよね。



しかし,「個体発生は個体発生を繰り返す」はある側面において本当だと思う。

人間はリコウだからどんどん忘れちゃうのである。

これはスポーツだけじゃない。

だいたい多くの人が悩んでいる問題も,過去に一度は悩んだことのある問題なんじゃないかと思う。

つまり,多くの問題は,一度は「あっ,そうか,こう考えればいいんだ」と抜け出ている経験をしたことのある解決済みの問題なのである。

しかし,スッカリ忘れちゃっているために,上で述べたスノボのように,多くの場合,同じプロセスを追体験することになるのである。まさに「個体発生は個体発生を繰り返す」のである。

そして,解決した途端に,「あ,そういえば,以前もこんな風にして抜け出したな」となって,「思い出した」ことになるじゃなかろうか。

少なくとも,同種の問題に対して,最初から,「あ,この問題は過去に悩んだことあることだよ」となることの方が例外的なことだと思った方がよいだろう。

そう考えると,こちらからすれば(第三者の立場から見る限り),同じことを不毛なほど繰り返して悩んでいるかのようにみえる人も,違って見えてくるかもしれない。

つまり,当人の進行形の視点からすれば,新たな,あるいは初めての難問にぶちあたっているように感じているんじゃなかろうかと。



文字は他者に伝える伝達手段であるとされている。

しかし,思うに,最初に文字みたいなもの(記号)を用いた人間は,他人に伝えるためじゃなく自分が忘れないために使ったのではないだろうか。



妄想を膨らませてみる。



ある人が大事なモノ埋めた場所に目印の石を置く。

たぶん,他の石と間違わないように特徴的な石を置いただろう。

たとえば,こんな石だ。「◆」

これで「◆石」=「宝物がある」と記号化されたことになる。


あるとき,他者が◆石をひっくりかえしたところ,宝物が出てきた。

◆石と同じ◆石をひっくりかえしてみたらまた宝物が出てきた。

「あ,この石◆のあるところに宝があるんだ」となって,はからずして他者に伝える伝達記号となった。


…なんてね。

池田先生との対談の中に以下のようなやりとりがある。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆
■思いついたときに書いておくことが大事

西條:構造主義科学論は、構造構成主義の中の科学論の部分にインストールされている原理ですから、いわば構造主義科学論と構造構成主義はワンセットになっています。それで、京極真君を筆頭に構造構成主義(構造主義科学論)を継承して発展させようとしている方がいろいろな領域から出てきているようですから、構造主義科学論は、現在の学術界の中で、より優れた枠組みを生み出すためのメタ理論になっていると思います。

 構造構成主義の最大の特長は、「哲学」と「科学」を包括するメタ理論となっている点にあります。つまり、「哲学的構造構成」という営為領域によって相対化する理路も備えていると同時に、構造主義科学論によって科学論的基盤が整備されていますから、科学的知見の生産力を高めるメタ理論にもなっている。

 構造主義科学論によって、科学的営為における有効性を備えることができるからこそ、構造構成主義が提唱されてそれほど時がたっていないにもかかわらず、心理学、発達研究、知覚研究、実験心理学、質的心理学、心理統計学、リハビリテーション、EBM(エビデンス・ベイスド・メディスン)、NBM(ナラティブ・ベイスド・メディスン)、動機づけ研究、古武術(身体技法)、組織論、政治学、歴史学、作業療法、理学療法、看護学、医学、脳科学といった多岐にわたる領域に導入されてきているのだと思います。


池田:ほんと、書いといてよかったし、生きててよかった(笑)。書いたときは、おもしろいと思うやつが出てくるに違いないと思っていたけど、5年10年たって誰も何にも言ってくれないと、「まあ、しょうがないか」っていう感じになってくるよね(笑)。自分でも忘れたころに誰かが理論を利用し始めたというのはびっくりしたけど、嬉しいよね。ホント「書いておいてよかった」って。やっぱり本は、そのときそのときに書かないと、あとでわからなくなるから、思いついたらとにかく書くことだよね。


西條:そうですね。書くのって大事ですよね。「残す」というんですか。


池田:あのときは書けたけど、そのとき書かなきゃそれと同じものをいま書けるかっていうと、たぶんいまは同じものは書けないよ。


西條:うーん、そうですね。忘れちゃいますよね。


池田:そう、忘れちゃう。だから思いついたときにとにかく書いておくことは大事なことでね。


西條:僕は、忘れたことも、最初からもう1回その論理的な道筋をたどれば、同型のことをまた考えることができるとは思うんですけど、これがたいへんなんですよね。ゼロから考え直さなきゃいけないですからね。


池田:そうなんだよ。書いたのを読むのは簡単だよね。だから僕は自分の本を読むことが多いけれど(笑)。自分の本を読まないと、何を書いたか忘れちゃうから。本というのは外部記憶装置みたいなものだから。頭の中にとっておくわけにいかないから。書いておけばそれをまた見ればいいんだから。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆


書かれたテクストは「外部記憶装置」なのである。


部活などを本気でやったことのあるひとは,自分が気をつけていることや,コツなどがわかったときは,それをメモしていたりしていただろう(それをしてなかった人は,コツを忘れて,それを再構成するために多くの練習を要したりしたに違いない)。


それは,追体験する過程を(ある程度)省略するための「外部記憶装置」を作っているってことなのである。


ってことで,今回スノボをして気が付いたことをここにメモしておこうっと。






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Last updated  2006/02/24 01:39:39 AM
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