A Rose Prison ―13―崩される事の無かった微笑みが、驚きの表情へと変わる。「なっ・・?未だ、薬が効いているんじゃ・・。」 口からペッと血を吐き出し、 「フン。そのバカ女が俺を怒らせたお陰でな。 意識が覚醒した・・で、思いっきり蔓の棘を握り締めたんだよ。」 右の掌(てのひら)からボタボタと血が流れている。 「まっ・・使い古された“手”だけどよ?」 そう言い終わらないうちに、 ガウンガウンガウンッ――――聚楓に連射する。 「うあああっ!!」避けきれなかった一発の銃弾が、聚楓の肩口に当たった。 「ご主人様っ!!」沁紗が叫んだ瞬間、 ザアシュッザシュッ・・悟浄が錫杖を振るい、自由を取り戻す。 「―――――クッ!!」 沁紗の体が宙を飛び、聚楓の体を抱え庭に飛び出した。 「八戒!大丈夫かっ!?」 未だ踞(うずくま)っている八戒に、悟浄が声を掛ける。 「はい・・僕は、大丈夫ですから・・。」 青い顔をしながら、それでもいつもの笑顔を浮かべる八戒に、悟浄が苦笑した。 「あいつらっ・・ぶっ飛ばすっ!!」 自由になった悟空が、庭に飛び出す。 「猿だけじゃ心許ないっしょ。俺も行ってくるわっ!」 次いで、悟浄も飛び出した。 「三蔵・・桃花、大丈夫ですか?」 何とか起き上がった八戒が、三蔵達へ歩み寄る。 「てめぇはどうなんだよ?」不機嫌な顔でマルボロを出し、火を付ける。 「あはは・・流石に悟浄達ほど、血の気が多くないので・・・。」 苦笑しつつ、 「桃花も頑張りましたね?」と、手を差し伸べた。 「あ、いいよ!このぐらいヘーキヘーキッ!」 断り、自分で立ち上がる。 「三蔵、二人に加勢した方が良いんでない?」と促す。 「・・・面倒くせぇ・・・。」そう言いつつ、紫煙を吐き出した三蔵に、 「アンタねっ・・そんな事言ってる場合っ!?」桃花が目を吊り上げたが、 『・・・あっ。』 三蔵の顔色が悪い。おそらく出血と、嗅がされた薬の影響で 本調子ではないのだろう。その状態を口に出さないのが“三蔵らしい”のだが。 『あからさまに心配すると、怒るしな・・。』うーんと悩む。 プライドが高い三蔵。他人に弱みを晒したり、悟られるのが何よりも嫌い・・。 「よしっ!悟浄君達の次に血の気が多い、このあたしが様子を見てくるっ!!」 そう言って庭に出ようとしたのを 「僕が行きますからっ・・・桃花は此処にいて下さい!」 八戒が止めた。 「やだな~八戒ちゃん、貧血なクセに。もうちょっと休んでて? 三蔵!八戒ちゃんを見張っててよ?んじゃっ!!」 早口にまくし立てて、庭に飛び出す。 「・・・・あぁ。」 八戒がグッタリとソファに腰を下ろす。 「あのバカ女・・・。」 三蔵が新しく、銃に弾を込めだした。 ジャンル別一覧
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