フタバスズキリュウ発掘物語
■気になる本 - フタバスズキリュウ発掘物語 -------------------------------------------------------- 閑伽井嶽と夏井川 遠き近きに見るところ 平工業高校の 学舎に集う健児団 新天新地光明の 輝くもとに励み合う この歌詞、「あーかいがーだけと なついーがわ」で始まる校歌は、福島県立平工業高等学校です。 昭和15年に創立した、福島県内でも歴史ある工業高等学校で、当時は、電気科40名 採鉱冶金科30名でスタートしました。勿論、常磐炭鉱が地元にあったからです。 昭和41年1月15日いわき市に「日本のハワイ」と謳った常磐ハワイアンセンター(当時)がオープンしました。(現在は、スパ・リゾート ハワイアンズ です。)そして、映画「フラガール」のモデルになった都市でもあります。http://plaza.rakuten.co.jp/sakae2/diary/200701150000/ 著者によりますと、その福島県立平工業高等学校の2年生であった鈴木直(すずき ただし)さんが、福島県いわき市大久町入間沢の大久川河岸で化石を発見し、昭和43年10月に、国立科学博物館の小畠郁夫博士に手紙で連絡しました。 それが、フタバスズキリュウの大発見だったのです。 私の母校でもあるので、鈴木さんは私の先輩になりますね。でも、当時、別の高校生であると知らされたような記憶があるのですが・・・、ま、記憶違いかもしれません。(著者の長谷川善和さん、間違いではないでしょうか?) なぜ、大発見だったか。著者によると、当時、日本では恐竜、海竜等の化石は見つかっておらず、せいぜいアンモナイトや三葉虫のたぐいだったらしいのです。 まして、その時代には、脊椎動物化石を専門に研究している人は、著者によると日本では皆無だったようです。 いま、「フタバスズキリュウ発掘物語 8000万年の時を経て甦ったクビナガリュウ」(著者 長谷川善和 著、出版社 株式会社化学同人、発行年月 2008年03月)を読み終えました。 著者は、長谷川 善和(はせがわ・よしかず)氏で、プロフィールはこちら。-------------------------1930年長野県生まれ。1955年横浜国立大学学芸学部卒業。国立科学博物館研究員、横浜国立大学教育学部教授を経て、現在、群馬県立自然史博物館館長。理学博士。専門は古脊椎動物学(ナウマン象、恐竜、ペンギンもどきなど)。これまでに採集・発掘した15,000点を超える化石は「長谷川コレクション」としても知られ、博物館で展示された。子とも向けの絵本や恐竜図鑑の監修、訳書などが多数ある。------------------------------- フタバスズキリュウ。学名は「フタバサウルス・スズキィ」人類が存在していなかった、いまから8000万年くらい前。海生爬虫類に属する新属新種であることが、やっと2006年に認められました。発見から38年も経過してです。 それだけ、発掘、調査等、時間がかかるものです。あと費用もでしょうか。費用については、著者が問題点として述べています。 さて、鈴木さんの手紙をみた国立科学博物館の小畠郁夫博士は、同じ階で仕事をしていた著者にも相談をしたそうです。それで、何通かの手紙のやり取り(当時は携帯電話もなければ、黒電話も、一般家庭では設置していなかったと記憶しています。)そして、いわき市にいくことにした と述べています。 ところで、人間の骨の数はいくらあるか知っていますか?。おおよそ、200個位だそうです。それらの骨を組み上げて人体を構成してみて といわれても知識がないし技術もないし無理でしょうね、私には。 著者は、当時を振り返り、学術書を輸入で購入しており、現地にいく前に、世界で発見された海生爬虫類のイラストやメモを頭に入れていったといいます。 みつかった骨がおおよそ、どの部位かを推定するために。そして、それが発掘の作業手順や場所にも影響をするというのです。 現在ですと、著者らのお蔭で、イメージ図ができあがっております。川崎悟司氏のイラストを参照してみてください。http://kawa3104.hp.infoseek.co.jp/hutabasuzukiryu.html 発掘作業は、第一次、第二次とわかれ、第一次は、昭和43年10月31日から行っていますが、なんと発掘費用は、著者らの自費で行ったということです。勿論、鈴木少年から手紙を受け取って、いわきにいったときも自費だと述べています。 そして第二次発掘が開始される前に、朝日新聞社から事業費の提供をうけて、国の補助もでて大規模な発掘作業が始まったそうです。 著者の本に掲載されている白黒の写真(現場写真)と同じ写真(カラー)を見つけました。(参考)いわき市石炭・化石館http://www.sekitankasekikan.or.jp/html/ifutaba.html また、最近の著者を写真でみることもできます。(参考)千葉県立中央博物館 化石展トークショーhttp://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/exhibitions/special_ex/2007kaseki/gyoji_6_talk.html 南アフリカのローズ大学に在籍していた魚類学者J・L・B・スミス博士は、1957年に「Old fourlegs」(古い4本足)という本を出版したのです。(この本を著者は自費で購入したといいます。結局、給料の3分の1は書籍代金に消えたといいます。) 著者の言葉を借りれば、「専門家の立場からすると、生きているシーラカンスの生体の構造や生態を知ることによって、化石として知られているシーラカンスの復原を考え、シーラカンス全体の進化の方向をより詳しく知ることができるという意味からも、たいへんに興味をそそられる生き物なのです。」と述べていて、「生きている化石」といわれるシーラカンスに興味深々です。 勿論、フタバスズキリュウと同じ時代に生きたシーラカンスですから。 2007年(平成19年)11月24日には、福島県いわき市の「ふくしま海洋科学館(通称アクアマリン)」で「シーラカンスの謎に迫る! 2007」という国際シンポジウムが開催されました。 アクアマリンでは、海洋に関するユニークな研究を実施しています。私の記憶によると、2000年(平成12年)の7月15日にオープンしています。 その翌年の1月には、アクアマリンシーラカンス委員会が発足しています。 2002年2月には、第1回シーラカンス国際シンポジウムを開催しています。 そして、2006年5月30日には、アクアマリン調査隊、日本で初めてシーラカンス撮影に成功しています。場所は、インドネシア・スラウェシ島のボオール沖でシーラカンスの映像撮影に国内のチームでは初めて成功したのです。インドネシアでシーラカンスが発見されたのは5個体目で、映像撮影に成功したのは、世界でも1999年のドイツのチーム以来、2例目となりました。(参考)ふくしま海洋科学館ホームページhttp://www.marine.fks.ed.jp/japanese/coelacanth/coelacanth_01.htm そして、著者が関係している新しい発見をもう一つ。これは、地元タブロイド版の2003年(平成15年)7月2日夕刊の切り抜きから引用します。------------引用--------------------------------草食恐竜脊椎化石国内最古元年にアンモナイトセンターで発見 高橋さんら論文発表 市アンモナイトセンターがあるいわき市大久町の双葉層群足沢層から平成元年に発見された中生代白亜紀後期(約8500万年前)の大型草食恐竜・ハドロサウルス科の脊椎(せきつい)の化石が、これまで国内で確認された中で最も古いタイプの化石であることが分かり、群馬県立自然史博物館が3月に発行した「館報」に発表された。同センターでは、4年のオープン当初から発見場所に発掘した状態でレプリカを展示してきたが、今回の論文の発表で、学術的な見地からの位置づけと時代が明確になった。 化石は、元年に市アンモナイトセンターの建設を前に、海竜の里化石発掘調査団(高橋紀信代表)らが発掘基礎調査を行い、中生代白亜紀後期の地層から発見した。2年に市教委が出した発掘報告書にはハドロサウルス科の首あたりの背骨ではないかとされていた。 これまで高橋氏、長谷川善和同館長らが詳細な調査を進めてきたが昨年、国立科学博物館地学研究部の真鍋真氏が加わり、本格的に研究を開始。世界で発見されたハドロサウルス科の骨と比較し、ハドロサウルス科の成体になる前の段階である亜成体のハドロサウルス科の首と背骨を結ぶ一番前の骨の「第1胸胴椎」の部分と同定。発掘した地層から国内最古の化石であることが分かった。県内ではほかに、時代は新しいが双葉郡広野町からもハドロサウルス科の化石が出ている。 ハドロサウルス科は、白亜紀後期に登場した鳥脚類の大型草食恐竜。多数の列に連結する歯を持ち、木の枝など堅いものも食べることができるなど、植物を効率よく食べるのに適した特徴を持つ。------------------------------------------------ でも、時代を8000万年前にタイムスリップし、いろんな種の動きをみせてくれる、そして自然の壮大な想いを垣間見させてくれる本です。 著者は、この本を通じて、発見から発掘、復原、種の固定まで解説してくれています。考古学や化石採掘、等に興味のある中学生以上の方でしたら、なんとか読了することができるかと思います。 最後にフタバスズキリュウを発見した鈴木直さんは、現在はどうか未確認ですが、いわき市アンモナイトセンターに勤務されています。 このセンターでは平成20年度も発掘体験をすることができますので、次のホームページを参照して、是非、チャレンジしてみてください。(参考)いわき市アンモナイトセンターhttp://www.ammonite-center.jp/(4月14日)フタバスズキリュウ発掘物語