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2021.08.15
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プロのつぶやき1120「おいしいもんと珍しいもんは違う」

*8/14(土)~8/17(火)夏休みです。

8/17(火)まで夏休みいただいていますが、今年は毎日雨です。コロナに豪雨が重なってしまっています、しかも広い範囲です。くれぐれも注意用心してください。

カード払い用のネットショップ ​http://sakamotocoffee.shop/​ に常連の皆さんが登録してくださって、励みになっています。カフェやレストランの卸向けの会員登録も毎日増えていまして、コンビニでの支払いの手間を減らせています。

そして、おかげさまで、さかもとこーひー開店28周年迎えました、いつもありがとうございます。これから29周年30周年へ向かっていきます。

紅茶の店テ・カーマリーで10年、さかもとこーひーで28年、誰もお給料をくれない暮らしでした、勿論ボーナスもありません(笑)こーひー紅茶を専門として、なんとか食べられるようになって、息子ふたりが店長としてやってくれています。若手だと思っていたら・・・最近知り合うカフェのスタッフさんは息子よりも年下の若者ばかりになってしまいました。

19歳で喫茶の道に入って47年・・・あと10年か20年か分かりませんがこーひー紅茶のある暮らしを伝えていこうと思っています。

そんなこんなで、「京味物語」野地秩嘉(著) 友人に勧められて読みました。

30歳で独立して50年、最高峰の京料理店、カウンター割烹と言われた新橋京味の西さんが亡くなられて2年経ちました。先輩が京味の常連さんでその伝で2回食事会に紛れ込むことができました。2階の個室でしたが、西さんが上がって来られて緊張している我々をリラックスさせて、料理のお話しもしてくださいました。

部屋に通されて最初のお茶をひと口、あぁお茶もこんなに気を使っているのかと期待が膨らみました。高級なお茶なのはひと口で伝わってきましたが・・・爽やかな香りと味わいで、そこは食事前ですのでこれからの食事を邪魔しない加減で期待が高まってきました。お茶の産地まではわかりませんでしたが・・・深蒸しの強い味わいのタイプでは勿論ありません。

料理が終わって甘味は3つから選べたのですが、3つ頼んでも良いとのひと言で・・・ぜんざい、葛切り、わらび餅といただき、一つ一つのクオリティの高さ際立つ魅力に静かに感動しました。

最高峰の和菓子店のレベルと言っては陳腐ですが・・・ぜんざいは繊細さの先にある味わい深さ、なんでも小豆の渋切りはしていないそうでひたすらアクを取るそうです。葛切り、わらび餅も葛粉わらび粉と仕入れる生産者が決まっているそうで、作りたての魅力に包まれました・・・まぁ、西さんはそういうことを売りにしてはいないのですが、たまたま聞くことができました。

そして、最後のお茶が最初とは少し違っていて味わい豊かで感心するばかりで、帰り道まで食事とお茶の余韻を楽しめました。

「京味物語」は一応飲食の端っこにいるものとしてはぐいぐい引き込まれ、二日で読み終わってしまいました。

まず、京味は家族経営の店だったこと・・・そして子供の頃の話しから修行時代、東京での独立・・・素材のこと、お客や商売のことと続いていきます。

昭和40年代、東京には知合いがいない京都の人が新橋で京料理のカウンター割烹で独立されたそうです。その頃はグルメ時代にはほど遠く、SNSもグルメ本もなく、接待と言えば銀座赤坂日本橋柳橋で新橋はサラリーマンが自腹で飲み食いする地域で・・・その時代の東京は高級な日本料理店はいくつもあっても京料理は広まっていなくて、しかも日本料理は料亭が当たり前で、新橋のカウンター割烹の京料理は時代が早すぎたようです、50年も前のことです。

食事会の時にも西さんが仰っていたんですが・・・「おいしいもんと珍しいもんは違う」と、価格の高い「走り」よりも「盛り」の素材を使っている。目の前の材料を見て考えて料理をするんだと。キャビア、フォアグラ、トリュフを使うことはない。鯛の子、魚の星(鯵の心臓)、松露は使うと。

この話しなると自ずとスペシャルティコーヒーの世界を考えてしまいます。

20年前スペシャルティコーヒーに出会った時は、それまでのコーヒーの有名産地やブランド名とは関係なく、農産物としてクオリティの高い素材をお客が感じる際立つ美味しさが大切だとの考え方に共感して・・・そのような素材を使いたいと行動し、今では当たり前のように使えるようになっています。

その素晴らしい素材の魅力をどう自分の店のお客さんに喜んでもらえるかにフォーカスしてきた20年でした。

しかし、10年くらい前から生産者、インポーター、ロースターまで差別化競争に入って、今までにない品種や精選方法珍しい香りや味わいを追いかけるようになってしまいました。

スペシャルティコーヒーのインポーターやロースターは基本マニア体質が多いので・・・どんどん新しい珍しい素材に向かってしまう傾向があります。するとエンドユーザーのお客さんの求める美味しさから遠く離れてしまいます。マニアックなお客さんは喜んでくれますので、盛り上がりますし・・・ネタや記事にもしやすいのですが。

「季節が教えてくれた」・・・料理でもコーヒーでもその素材の特徴や魅力をよく考えて、それをお客さんが魅力的に感じるように仕上げることが基本でしょう。

カッピングスコアが高い素材、価格が高い素材が美味しいわけではないのです。勿論、クオリティが低くては使えませんが、それぞれの美味しさがあるものです。

さかもとこーひーのブラジルでも「ブラジル・クラシクス」をリピートする常連さんは多いですし「ブラジル・カルモナチュラル」や「ブラジル・パッセイオ」「ブラジル・ペドラレドンダ」に感動してくださる常連さんも多いのです。

そして、50年繁盛してきた商売の話しも深い内容でとっても共感し、勉強になりました。帰りのお見送りの時、店の前で「この通りで50年続いている店はうちの店と1軒2軒くらいしかないなぁ~」としみじみと仰っていました。

料理屋の修行では店の主人や先輩が教えてくれることと、教えてくれないことがあるそうで・・・礼儀や言葉遣い調理器具の使い方、料理の仕方は仕込まれるが、お客さまとの接し方、器の選び方、盛り付けなどは手取り足取り教えてもらうものではなくて、経営もそうだそうです。

横から見て習い覚え、あとは自分で勉強していくものだと。

小僧をしていた時から約束を守ること、背伸びをしないことが大事だと教わり・・・そしてお客さまを大切にすること・・・「私の経営とはもう一度、来てもらう店になることだけです。」

実はこの「もう一度来てもらうこと」がスルッと聞けば誰にでも当たり前にことですが、見聞きしたことは料理や味のこと、来てほしいお客さんのこと、接客からお見送りと・・・たくさんの奥深い考えと実践に裏付けられていることでした。ご常連の名前の入った提灯にも想像できない深い意味がありました。

ミシュランへの掲載をあっさりと断り、メディアへ出ることも控えて、ご常連が増えて、予約がなかなか取れない店になった50年・・・星を取ったり、グルメサイトやグルメ本で目立っての集客、予約困難の店とは全く別世界の本寸法の経営に支えられていることを覗き見されていただきました。

さかもとこーひーは「部屋中にひろがる香りと後味の美味しさ」を大切にしています。






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Last updated  2021.08.15 08:34:57
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岡田昌徳@ Re:プロのつぶやき1223「27歳で最初の独立」(08/13) 色々あったけど、純粋に懐かしいですね!…
はじまりの春@ Re:「はじまりの春」(03/23) はじまりの春の知りたいことは、089624445…
ハンサムクン3714@ Re:プロのつぶやき1040「技術と成熟」(02/02) はじめまして。勝手に訪問させて頂いて、…
Mikye 市右衛門@ Re:プロのつぶやき896「ターナーのペアリングレポート」(04/23) ブログ読ませて頂きました。今度お伺いし…

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