プロのつぶやき1111「絶滅危惧種個人商店&シェフたちのコロナ禍」
プロのつぶやき1111「絶滅危惧種個人商店&シェフたちのコロナ禍」6月半ば、梅雨入りしそうでしない千葉です、まさかのコロナ禍のオリンピックが迫ってきています。知らない道を暗闇の中歩いている怖さを感じています。コロナの初期から戦争の時の補給の問題や情報の問題と重なって感じられて・・・特に飲食業にとっては、暮れからの長い緊急事態の状況が大空襲に重なって思われてしまい、オリンピックは原爆や特攻隊のように焼け野原になってしまうのかと嫌~な気持ちになっています。そんなこと考えていたら、先日20年来の仲間がコロナで亡くなってしまいました。夜の10時でも12時すぎても繁盛していたアイリッシュパブを育てていたのに・・・コロナ禍で時間短縮、アルコール禁止になって、それでも昼間のカフェ業態をパブの料理を生かしながら進めていたのに、その苦労に胸が痛んで、ショックが大きいです。アイルランドの大工さん呼んで作った内装の中、ワンパイントの完璧なギネスを飲みながらフィッシュ&チップスをつまむのが楽しいお店でした。合掌さかもとこーひーは飲食業ではありませんが・・・喫茶店で修行してその後紅茶の店を10年営業していましたし、今も飲食業の卸先や知合が多いので・・・コロナで営業時間や営業日の制限受けて、さらにアルコールも出せないという状況では営業努力のしようが無く・・・その切迫感が尋常のものでは無く伝わってきています。しかし、足掛け40年給料ボーナスの無い自営をしていると、そういう状況でも自分や家族知り合いが無事でいられるよう案じながら、自家焙煎店や飲食店の生き残りの道筋を探しています。自営をしていて最初に肝に銘じたのは誰も給料をくれないという現実でした。お客さんに必要とされることが商いなんだと・・・で、19.20から喫茶や飲食関係の本から入って、職人の本とともに他の商店や名店の本もたくさん読んできました。自分が職人タイプで商売センスのなさを自覚していましたから・・・職人タイプの名店の老舗の商いに興味がありました。まぁ、流石にそれは30代40代の頃の話しで、最近はとんとご無沙汰でしたが・・・コロナ禍で「絶滅危惧種個人商店」と「シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録」を知ってあっという間に読んでしまいました。「絶滅危惧種個人商店」 井上理津子著最初に紹介されていたのが日暮里の佃煮屋さん・・・僕はおばあさんが44の時の初孫で小学校上がる前までおばあちゃんに育てられたようなものでした。そのおばあちゃんは日暮里から千葉にお嫁に来て、幼稚園児の僕を連れては日暮里や東京の親戚の家に行っていました、今でも覚えています。この佃煮屋さんに並ぶ佃煮は子供の頃に食卓にいつも並んでいた記憶と重なります。そういうことなので、いきなりの日暮里の佃煮屋さんの話しに引き込まれました。あとは、神田の豆腐店、梅屋敷の青果店、芝の魚屋、台東区の洋品店、神保町の靴店、ハモニカ横丁のジーンズショップ、阿佐ヶ谷の自転車店、西荻窪の時計店、亀有の書店とまだまだ続きます。高度成長期とともに成長繁盛して、その後、商店街からスーパー、ホームセンター、ショッピングモールへと流れが変わってしまい、シャッター街と揶揄されてきました。絶滅危惧種個人商店と言われても、それでも街に必要とされるお店・・・多分同じ商店街に同じ業種のお店が何店舗かあったと思います、そんな中から残っているお店、勿論今でも繁盛しているお店などの話しは興味深いです。繁盛するということ、地域に必要とされて常連さんが多いこと、時代の移り変わりとともに常連さんの暮らしに少し寄り添うこと、常連さんとの関係がしっかりとしていること・・・大手の拡大志向のビジネスとは違う、個人商店の商いのツボが浮き上がってきます。「シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録」 井川直子著一方、イタリアンやフレンチ等々時代の波に乗って繁盛、予約が取れない、グルメ本の高評価、世界的な名声と活躍してきたシェフたちのコロナ禍の苦境の色々な悲鳴が記録されています。イタリアンやフレンチのシェフ、特に都内の店のシェフから伝わってきたのは・・・「勝負」に勝ってきた人たちだなぁーという印象です。勿論、修行して気合い入れて独立したんですから、個人にとっては大きな勝負です。それは、さかもとこーひーでも同じです。しかし、これからの有名店などのシェフは、また少し違う「勝負」をしてきたように感じます。時代や業界や競合との勝負にエネルギーを注ぎ込んできて、生き残ってきた店であり、シェフなんじゃないかと・・・ある意味成り上がりに成功してきたような印象です。そういったお店が、世界的なコロナ禍で苦境に立たせれてしまった・・・高級店、予約制の店であってもお客さんとのつながりの脆さを感じました。本来高級店ならば、特定少数の顧客相手の商いが基本ですし・・・そういったお店を何件も知っています。しかし、グルメサイトやグルメ本等メディアの高評価とともに、不特定多数のお客相手のウエイトの大きさを感じます。著者の井川さんは・・・「強いて言うならこの苦境に強いと感じたのは、人気かどうか、ではなくお客との信頼関係を築いている店でした。彼らに取材をお願いした理由もまた、人気の有無というところにはなく、私自身が「この人の考えを知りたい」と思った人たちです。」「これまでの取材活動から、「このシェフは食の仕事を社会の視点で捉えている」「流行を追うのでなく、なぜ人がそれを求めるのか、事象の根底にある心の動きに敏感」「まだ人には見えていない、〝その先〟を見ようとする」など、何かしらの気づきを与えてくれた店主たち。」「最後に。レストランは嗜好品で、「生活に必要」なものではありません。でも心豊かな生活を営むうえでは必要な存在です。」「このコロナが終息したら、人々の食生活は、きっと変わっているような気がします。流行りの店を転々と食べ歩いたり、一年予約待ちのプラチナシートを競うように押さえたりといった、外食への向き合い方が。」・・・と、書かれています。シェフたちの印象に残った言葉を並べてみます。「僕はシェフになった時、長く生き抜くにはどうしたらいいんだろう?と考えていました。最近になって思うのは、お店にしても料理にしても、自分のやりたいこと=楽しさと、お客さんがいいと言ってくれるもの=要望が並走することだと。「今これが受ける」といったところにはきっとありません。」「以前は、店のルールにのっとってもらうスタイルもいいなと思っていたけど、今は逆。お店を開放して、お客さんが自分で使いやすいようにつくっていく、そんな在り方に惹かれます。僕らはそれを見守る感じでちょうどいいんじゃないのかなって。」「女将さんのメンタリティは本当に尊敬します。こんな時期でも、いつ行っても元気に溢れているんですよ。閉店が十八時になっただけで、従業員も多いのにまったく変えずに営業している。苦境を笑い飛ばすように。」「与えられた状況に合わせて、臨機応変、たくましく変えていく。お店としての大事なものだけしっかり摑んで、余計なものは捨てて。変わらない店は変わり続けてきたから今も続いているんだと、またヒントと勇気をもらいました。」「慌てることもないですし、悔しくもない。飲食店は「休業要請」の対象外ですから補償もありませんが、はなからあてにしていません。個人事業主は、一匹狼なんです。結果が良くても悪くても、全部自分に返ってくる。つまり自分の足で立たなきゃいけないんです。」「むしろ数字は後からついてくるもの、と腹をくくって、お客さんのためになることを積み重ねていく。それが何十年と店を守ってくれます。」「こういう時でも、お客さんがなぜ「マンナ」に来てくれるのか?私はずっと「その人(お客さん)がいいように」作ってきたので、それでじゃないかな。お客さん一人ひとり、誇張でなく本当に一人ひとりのために料理を作るという意味です。」「つまりミシュランみたいに「わざわざ行きたい店」じゃなくていい。食通とかお金持ちなど一部の人たちでなく、普通の人たちに提供したい。それで私の料理がその人の記憶に残るような、人の心を探るようなものでありたいだけです」「これからは仕事のつき合いよりも家族や恋人と食事を楽しむ人が増え、いわゆる〝書き入れ時〟のピークがなくなって、年間を通してなだらかになるような気もします。」「僕らは、グルメサイトの点数が高いことより、その人の頭の一番初めに思い浮かぶ店でありたい。これからもそこを目指していきます」戦後の飢餓から高度成長期へ移り、飲食店も盛況になって、初めて出会う海外の食事や飲食のスタイルが次から次へときて、ブームが起こり、グルメ本やネット情報で情報が増えて、予約困難店行列のできる店と75年かけて変遷してきました。移動と情報が豊富になっての流行や繁盛だと思っていますが、その移動が制限されてしまいました。昔の地元の贔屓のお店の良さを今の時代に合ったお客さんと近すぎず、離れすぎず、寄り添った、そんなアフターコロナのスタイルが徐々に出来上がっていくんでしょうか。後輩や仲間に相談された時は・・・地域にお客が増えると遠くのお客も増える・・・最近は通販の相談も増えてきて、通販も同じで、まず来店されている常連さんが通販を便利に使えるようにすることからスタート、そして町内市内県内にフォーカスして通販が増えてくれば全国に広がるとアドバイスしています。通販の強みはハウスリストが集まることで・・・それをベースにしてお客さんとコミュニケーションできます。販売促進ではありません。実店舗でも同じなんです。地域とお客さんとの関係・・・古くて新しい自営業向けビジネスモデルだと思っています、急成長はできませんが、一生安定して成長できる可能性があります。さかもとこーひーは「部屋中にひろがる香りと後味の美味しさ」を大切にしています。