影踏亭の怪談
影踏亭の怪談のご紹介です。作者が栃木県出身とのことで、立ち寄ったツタヤで激推しされていたので読んでみました。影踏亭の怪談/大島清昭【3000円以上送料無料】※本記事はネタバレを含みます。【収録作品】影踏亭の怪談「僕」の姉である梅木杏子(うめき きょうこ)は、本名にちなんで呻木叫子というペンネームで怪談作家をしています。久しぶりに姉の元を訪れると、彼女は椅子に粘着テープで拘束され、瞼を自分の髪で縫われるという状態で意識を失っていました。姉が取材中であった栃木県北部にある旅館「影踏亭」に何かの手がかりがあるのではと考えた「僕」は自分も泊まってみることにしました。すると密室となった離れで他殺体が発見されるという事件が発生します。姉を襲った怪異と関係があるのか? 「僕」は事件を調査するのでした。朧トンネルの怪談栃木県某所にあるという朧トンネル。過去に事件や事故が無いにもかかわらず、首無し女性の幽霊が出ると言われました。大学生の男女が朧トンネルへ肝試しに来たところ、女性が1人行方不明になってしまいました。残ったメンバーは行方不明になった友人の手がかりを探すため、朧トンネルで当日の様子を再現することにしました。メンバーの1人が呻木叫子と知り合いであったため、彼女は取材方々検証を手伝うことになりました。検証の最中、トンネルの中でメンバーが首無し死体となって発見されます。撮影していた映像を確認しても、トンネルに出入りした者も、あらかじめ潜んでいた者も確認されていません。大きな密室となったトンネル。何かトリックがあるのか、それとも新たな怪異が起こったのか?ドロドロ坂の怪談叫子は友人から息子が神隠しにあったから助けて欲しいとの連絡を受け、13年ぶりにドロドロ坂を訪れました。そこは泥まみれの人間のようなお化けが出ると言われており、学生時代の友人の故郷でした。友人の息子を捜索する叫子でしたが、やがて泥まみれの死体が発見されました。はたしてドロドロ坂の怪異なのか、それとも殺人事件なのか?ホラーテイストミステリーなのかと思いきや、最後にしっかり怪異が起こっているのが味わい深いです。叫子が真相をひらめいた時の「その途端、まるで地虫が這うように、私の足下から一連の事件の真相が立ち上がってきた」という表現が禍々しくて良いですね。冷凍メロンの怪談警察官の間で密かに語られている都市伝説があります。遺体のそばに冷凍メロンが落ちているという事件が定期的に起こっているのです。そんなある日、心霊番組の収録中に呻木叫子が救急搬送されるという事件が起きました。しかも彼女は落下してきた冷凍メロンが頭に当たって負傷したというのです。彼女の友人である警察官高梨は事件の調査を開始したのですが、たどりついた真相とは……事件現場に冷凍メロンが落ちているという一見奇妙な怪異の中、真相が次第に明らかになっていく様子が何とも不気味であり、しっかりとミステリーでもありました。そして前出のエピソードの真相も判明したりと、見事なまでの伏線回収でした。それにしても、呻木先生無事だといいなあ。怪異とミステリーの融合を試みた作品はたくさんあると思います。本作もミステリーでありながらしっかりと怪異も起こっているのが面白い作品であると思います。次作赤虫村の怪談の記事はこちら。よかったらクリックお願いします。にほんブログ村