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カテゴリ:小説・ノベル
明智恭介の奔走のご紹介です。
屍人荘の殺人において強烈な存在感を見せつけた青年明智恭介。 本作は彼を主人公にしたスピンオフ作品です。 神紅のホームズと呼ばれた明智恭介と、その助手(半ば強制)葉村譲。 彼らの活躍(?)を描いた短編集です。 明智恭介の奔走【電子書籍】[ 今村昌弘 ] ※本記事はネタバレを含みます。 【収録エピソード】 最初でも最後でもない事件 明智とその後輩葉村が関わった、文字通り最初でも最後でもない事件です。 彼らの通う神紅大学のコスプレ研究部において窃盗事件が発生しました。 窃盗犯は外部の人間で、窃盗の常習者でした。 犯人はすぐに逮捕されたのですが、発見時意識を失っていました。 部室の2階で盗みをはたらいて降りて来た時、何者かに遭遇し投げ飛ばされて気を失ったとのこと。 奇妙なことに手袋と革ジャンを持ち去られていました。 警察が調査したところ、2階の指紋が拭き取られていました。 手袋をしていたなら指紋を拭く必要はないので、警察は犯人の供述自体が嘘だと考えていました。 しかし明智は、泥棒は窃盗を否定せず具体的な行動まで白状しているのに、そこで嘘をついてもメリットが無いと考えました。 はたしてもう一人の侵入者は存在したのか? 居たとしたらその目的は何なのか? 泥棒や侵入者など、各人物の立場に立った明智の推理が面白い話でした。 とある日常の謎について さびれた商店街で喫茶店を経営している加藤久夫は、行きつけの立ち飲み屋で奇妙な話を耳にします。 商店街にあるビルが売れて、オーナーが老人ホームに入ることになったそうです。 そのビルはだいぶ古くなっており、そんな高値で売れるようには思えません。 はたして何か裏があるのでしょうか? シャーロックホームズの赤毛連盟を髣髴とさせるお話ですが、最後はハートウォーミングな感じに終わって良かったです。 泥酔肌着引き裂き事件 とある休日、葉村は明智の電話で目を覚まし憂鬱な気分になりました。 というのも、昨晩クラスメートとの飲み会で泥酔した明智を介抱してアパートに送り届けたからです。 「すぐに来てくれ」というので行ってみると、神妙な顔つきをした明智が待っていました。 奇妙なことに昨日穿いていたパンツが引き裂かれ、部屋に落ちていたそうです。 部屋は施錠されているうえにドアガードまでかかっていて、密室です。 しかも、明智は目が覚めた時ズボンはしっかり穿いていて、布団をかけて寝ていたそうです。 つまり侵入者がいたとすると、明智のパンツをはぎ取った後、わざわざズボンを穿かせてベッドに寝かせ布団までかけていることになります。 しかも密室まで作って。 肝心の明智も泥酔していて何も覚えていない状態です。 はたしてこの密室の真相はいかに? とてもしょーもない内容なのですが、しっかりミステリーをしているのが面白いですね。 宗教学試験問題漏洩事件 名探偵は一日にして成らず。 信頼と実績を積むため、明智、葉村コンビは今日も今日とて迷いネコの捜索をしていました。 そんな時、宗教学の試験問題が盗まれるという事件が発生します。 事件発生時、教授の部屋では講義で代返をしていた生徒が反省文を書いていました。 しかも生徒がトイレに立った数分の間に事件は起こりました。 人が居る時に盗みに入るのは不自然です。 部屋はめちゃめちゃに荒らされていることから犯人は試験問題のしまってある場所を知らない様子でしたが、数分で部屋を荒らすのも難しいでしょう。 さらに置きっぱなしになっていた生徒の携帯も盗まれていました。 不可解なことが多い盗難事件の真相やいかに? 犯人も予想しない事が起こったために不自然な状況ができてしまっているという手法が面白いお話でした。 手紙ばら撒きハイツ事件 明智が葉村と出会う前の事件です。 明智がバイトしている田沼探偵事務所に調査依頼がありました。 ストーカーめいた手紙が、同じハイツの複数の住人に投函されたのだそうです。 ただのいたずらなのか、ストーキング対象の部屋が分からないので手紙をばら撒いているのか? 映像や音声の無い小説ならではのミスリードが面白いお話でした。 また、この探偵社の面々も味わい深いです。 このメンバーでスピンオフのスピンオフができるんじゃないかという程に魅力的なエピソードでした。 【美麗な扉絵も見どころ】 本作は各エピソードの扉ページにイラストが載っています。 これまでの作品では表紙だけだったので、より多くのイラストが楽しめます。 明智と葉村のツーショットが良いですね。 【在りし日の思い出】 シリーズ第1作目屍人荘の殺人でインパクトのあるキャラクターを見せた明智恭介。 それがあんなことになってしまい降板となってしまいました。 残念に思っていたのですが、彼の在りし日の活躍が見られたのは良かったです。 屍人荘の殺人内で語られていた宗教学試験問題漏洩事件がちゃんとエピソード化されているのが心憎いですね。 こうした作中で別の気になる事件名が語られるのは、シャーロックホームズでもありましたね。 これはこれでシリーズ化されてくれたら嬉しいなと思った作品でした。 【中古】屍人荘の殺人 /東京創元社/今村昌弘(文庫) 屍人荘の殺人です。 紹介記事はこちら。 よかったらクリックお願いします。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.09.08 20:00:12
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