赤虫村の怪談
赤虫村の怪談のご紹介です。前作影踏亭の怪談の記事はこちら。赤虫村の怪談【電子書籍】[ 大島清昭 ]【あらすじ】独特の妖怪が多く伝わっている赤虫村。怪談作家呻木叫子(うめき きょうこ)は取材のためこの村を訪れました。取材は問題なく終わったのですが、彼女が帰った後、妖怪伝説になぞらえるように奇妙な事件が起こります。降り積もった雪に足跡も無く、大木に吊るされた死体。鍵のかかった蔵の中で明らかに他殺である焼けた死体。次々に起こる殺人事件は妖怪のしわざか、それとも人のしわざか?その真相はいかに?【構成が巧みな作品】本作は各章ごとに赤虫村に伝わる妖怪にスポットを当てています。各章の主人公の物語が語られた後「呻木叫子の原稿」で章を閉めています。各章の主人公は事件の謎を解こうとする女子高生だったり事件を捜査する警官だったり、呻木叫子だったりします。それぞれ違う人物に焦点を当てることによって目の付け所や得られる情報が違うので、読んでいて飽きませんでした。作中の人物たちにとって真相は憶測の域を出ないのですが、怪異については読者に真相が分かるようになっています。この展開のおかげで消化不良にならず、さっぱりと読み終えることができました。この見せ方は上手いと思いました。一方で人為的な事件の真相については犯人も判明しますし、事件自体は解決するのですが「ひょっとしてこうなんじゃ……」という不気味な含みを持たせて終わります。怪異の方がさっぱりしているというのが皮肉ですね。【クトゥルフファンも楽しめる作品】架空の神話でありながら独特の世界観を持ち、多くの作品に影響を与えているクトゥルフ神話。本作ではクトゥルフ神話をもじったネーミングが多数出てきます。クトゥルフ神話を知らなくても作品自体は楽しめるので、こだわらず手に取ってみてはいかがでしょうか。よかったらクリックお願いします。にほんブログ村