2006/09/03(日)13:11
にんげんの。(途中まで…ってか自分用メモ?)
ひとがひとをころすということ。
それを行うことの出来る精神状態と、実行に至るまでの経緯。その、すべてをどういった風に捉えるのか。
彼はいつものように不可解な薄笑いを浮かべながらわたしにそんな事を言った。―――こういった人を困惑させる語り方は、彼の悪癖の一つだ。常に他者の思考の一歩も二歩も先を行く地平にいる彼にとっては、惑わされたり悩んだりする私の姿を見る事は或いは娯楽の一つであるのかもしれなかった。
「それは許されざる行為だと、ぼくは考えているが?」
社会的常識と根本的な倫理観に裏打ちされた、当然の答えを口にしたわたしの顔を、彼はいつも通りに首を僅かに片方に傾げながら凝視している。―――どうやら、わたしの回答は気に入らない物だったらしい。彼はグラスを口元に運び、喉を潤してから、
「そうだ。きみの言う通り、殺人という行為は決して許される物でもなければ許されてよいものでもない。それはいついかなる時代、場所でも変らぬ、人が人として―――いや、生き物が群れをなして生きていく以上、同族殺しは決して看過されてよいものではない」彼はそこまで言って、力強い掌をわたしに向けて差し伸ばし、「しかし、しかしだよ。誠に遺憾ではあるが、それが必要とされてしまう事態、それを容認することが求められてしまうこともまた、稀にではあるがこの社会では起こりうるのだよ」
わたしは彼が一体何を言いたいのか理解できぬまま、それでもじっくりとその言葉を咀嚼し続けていた。―――殺人が必要で、その容認が求められる、異常事態。それは、その名は。
「…戦争、のことをきみは言っているのか?」
差し伸ばした掌に重ねられたわたしの手を満足そうに見下ろしながら、彼はいかにも慎重にゆっくりと言葉を紡ぐ。
「そうだな。戦争…言い換えれば、人を殺すことによってのみ、自らのそして同朋の生命が護られるという事象の前には、殺人は正当化される。もっとも、その判断はけっして個人の手に委ねられてよいものではないがね」
国家や組織の判断に従って行うからこそ、その行為は罰せられることはない―――彼はそう言っているのだろうか。
★★★★★★★★★★
たまにはシリアスっぽい短編を―――と、ド暗いテーマではじめてみましたが、バカなのでこの辺で力つきました。ちなみに所要時間は30分弱。…どう考えても最初から無理だろう。
微妙に出てるキャラ共がどこぞのキバヤシなオカルティストとその親友兼相棒兼下僕っぽいのは気のせいです。…ええ、一人称とか二人称がそれっぽい感じもしますが、それは全て気のせいです。間違ってもこの二人の名前の間に「×」マークの入った801な短編のボツネタではありません。
―――いや、そのつもりだったんだけどね。無理なのよ、倫理観とかその辺とか難しくて。選んだテーマが地雷中の地雷だってせいもあるんだろうけどね。でもね、やっぱり文才と頭脳がかけてる人間には無理なのよ、こういう奴は。じっくり時間をかければ兎も角。しかもその場合は十中八九最後まで書けないし。
次はもうちょっと、平和でラブラブで馬鹿馬鹿しい話に挑戦してみます。