すべてがFになる(講談社文庫)/森博嗣
読了。面白かった―――の、かな?つまらないわけではなくて、続きが気になりながらどきどきわくわくして頁を捲っていたのも確かなんだけど…でも、手放しで面白かった!!とは賞賛できないのが不思議な感じ。主な原因としては、一部の文章の流れに違和感があったことと、そして多分こっちのほうがずっと大きい、一部キャラの描写がちょっと鼻についた…ってのが大きいんだろうなぁ。とはいえ、そのどちらも著者のミスではなくてあくまでも個人的嗜好というか、注目するポイントの差なんだろうけど。あ、後は恋人かと思ったら実は●●でした、ってのはいくらなんでもお約束過ぎるんじゃないかと思ったけど、そういうお約束は嫌いではなかったりするんでちょっと困る。で、文章の違和感に関しては、まぁ、どう考えても著者自身がその辺りを全く重視していないっていうか、頭の中にすでに完成しきったストーリーラインがあって、それを表現するためのツールとして文を書いている感があるような気が。そしてその手法は決して悪いものではないんだけど、私にとっては馴染みのないものだったから、違和感が生じてしまったというだけで。(ついでにいうなら、平行して創元のラヴクラフト全集の3巻…っていうか、まぁ『時間からの影』を<タイタス・クロウ・サーガ>絡みで再読してたってのも影響が大きかったのかも。表現に関しては、ある意味対極といってもいいもんなぁ)キャラに対する感覚の差は…こればっかりは、ねえ? 個人的にはヒロイン(あれ、博士の方が相応しいかな)である萌絵がどーにもこーにも。シャアを知らないっていってる辺りは可愛いかなとも思ったんだけど、後半になるにつれ色々とビミョーな感じに。設定的には好きでも嫌いでもないタイプのはずなんだけどね、お嬢様属性が全くないわけでもないし。とはいえ、スーパー設定もある意味、探偵役にとっての『通行手形』代わりの機能として持たされているような気がしなくもないんで、もしそうだとしたらちょっと不憫かも。ただ、著者は最初から同性に共感される等身大のヒロインを書こうとしてないよね、どう見ても。ならば萌絵はこれでいいのかなぁ。んー、珍しく賞賛の言葉よりもケチをつけるような箇所の方が多くなっちゃったなぁ。でも、私は面白くなかった小説の感想を書くのに時間を割いたりはしないタイプなんで、やっぱりよく出来た面白いミステリだったんだと思います。ちょっと合わない性質の話だっただけで。続きを読むか否かに関しては、現時点ではどちらとも。数が多いからなぁ…本格的に読み始めるとしたら、しばらくはこの人の本だけに専念せざるを得なくなるだろうし。―――残念ながら、ラヴクラフト全集の方が私の中での優先順位は上なのです。でも、この多作ぶりからして、この人のファンは幸せだろうなぁ。麻耶雄嵩に殊能将之と、寡作で知られるお二方のファンとしては、何よりも羨ましかったり。付いていくのはちょっと大変そうだけど。