2018/05/19(土)12:10
ヤモリ
お奨めの一冊、歌人小池 光著「うたの動物記」より、今日話題にする動物はヤモリ。
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突然ですが、皆さんはヤモリとイモリの違がわかりますか?。
当然のことながら、ヤモリは爬虫類、イモリは両生類。生物の進化上両生類から進化して爬虫類が現れた。このくらいのことなら大概誰でも知っていますよね。でも、爬虫類と両生類の排尿の代謝の違いまでご存知の方は少ないのじゃないか?私も知りませんでした。
代謝により体内に発生したアンモニアを水溶性の尿素として体外に排出するのが両生類。爬虫類は不溶性の尿酸として糞とともに排出すると説明が書いてあったので驚きました。
これは俳句や短歌について書かれた本のはず。なのに「科学もの知り本」かと勘違いするほどです。難しい生物学的な分類上のことはさておき、イモリの腹は毒々しいほどに真っ赤、対してヤモリはさらさらと真っ白。
子供のころ夜ともなると明かりに誘われやってくる蛾を狙って、窓ガラスによくこのヤモリが現れたものでした。大きいものでも体調10センチほど、ピタリとガラスに貼りつくようにして、近づいてくる蛾をパクリと捕らえる。時にはヒタヒタと足をしのばせ自ら獲物に近づいていく。そんな様子を飽きもせず眺めていたものでした。
「家を守るから家守(ヤモリ)という。家を災難から守ってくれているのだから、決して殺してはだめですよ」と、祖母から何度も聞かされたものでした。
おおよそヘビ・トカゲに代表される爬虫類ほど、人から気持ち悪がられる動物はいないのではないか。湿ったうろこ状の皮膚、先の割れた細長い舌を口の先からチロチロ出し入れするさまは、決して気色のいいものではありません。ところが同じ爬虫類でも、ヤモリにかぎっては、皮膚もさらさら乾いた感じで、口の両端の上に離れて位置する大きな目玉はくるりとかわいい。蛾を捕食した後に口の端を舌で舐めるようなしぐさを見せたときなど、不二家のペコちゃんのようにさえ見えたりします。
最近ではいくらガラス戸の内側で待っていようとも、とんと姿を見せないヤモリはどこへ行ってしまったのだろう。
あっ、そうそう、肝心の歌についてご紹介するのを忘れていました。
さすがにヤモリは俳句には歌われていないようで、いづれも短歌が詠まれていました。
硝子戸に白く守宮(やもり)の腹が見ゆ 生きるしるしの手の皺が見ゆ 〔西村 尚〕
まさしく何時間も飽きることなくガラス窓の前にたたずんだ少年の日の私を思い出します。呼吸をするたび大きく息づく白い腹とピタリとガラスに貼りついた大きな指先の皺まではっきりと思い出すことができます。
ひったりと手をあて窓に貼りついて守宮(やもり)のごとく君を待つのだ 〔花山 周子〕
う~ん、ストーカーか!?(笑!
冗談はさておき、どうか愛しい人に己の存在を気づいて欲しいと願う小心な男の気持ちをヤモリの様子に上手く投影していますね。男はみな小心なんです。焦心の末に傷心するのも男というものなんです。「ひったり」という言葉にそれがよく表れているように思いませんか。
・・・ヤモリに少年の日の私を懐かしみ、また男の本質に思いを寄せたことでした。
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