2024/02/22(木)11:50
「炒(チャア)」の極意
かって日本では、「男子厨房に入るべからず」などと言われていましたが、今そのようなことを口にすれば、すぐに「男女共同参画」などという言葉が当たり前のように返って来る時代となりました。男女がよきパートナーとしてお互いに尊重しあい、性別にかかわらず、様々な生活の場面で一人ひとりの個性や能力を十分に発揮できる社会の実現が叫ばれて久しいです。
私の家内などは「あたしゃ、おさんどんか!?」などと、しばしば口説くところをみれば、わが家では依然として共同参画はなされていないということになるのでしょうか。
私だって「男子厨房に入るべし」と、台所に立つこともあるのです。まあ、そんなときはだいたい女房殿が留守のときですが・・・。(苦笑!
冷蔵庫の中を覗いてみる。え~と、豚のバラ肉があるな。おっ、モヤシもある。あとキャベツとネギか・・・ということで、これらの具材を適当に刻んで、フライパンで炒めるというのがきわめて順当な選択ということになるのです。豚肉の野菜炒めですな。(笑!
ところで本場の中国料理の特徴は、油で炒める「炒(チャア)」にありますね。
野菜炒めこそ「炒(チャア)」という調理法がぴったりの料理だと思いませんか。日本料理には湯通しという調理法こそありますが、油通しということはあまり聞きません。それは煮る、炊くという調理法が主で炒めるという調理法には馴染みがなかったからかもしれません。同じ野菜を使ったとしても、日本料理なら土鍋でしんなりと煮て、味噌で味をととのえるということになるのでしょう。
仏教しかり、漢字しかり、律令制度しかり。歴史をひも解くまでもなく、古来より日本人は大陸の文化を積極的に取り入れて来たはずなのに、どうして「炒(チャア)」という料理法は取り入れようとしなかったのだろう。
中国料理が今日のように広く普及したのは、戦後になってからのこと。わずか70年足らずですから、そうすれば日本人は2000年の長きにわたって、中国料理の代表とも言える「野菜炒め」を食べそこねてきたと言えるかも知れませんね。
そんな取り止めのないことを思い浮かべながら、フライパンを振っていたからでしょうか。レンジの回りはこぼれた野菜で油まみれ。う~む、「炒(チャア)」の極意を極めるのは、なかなかに難しいようです。(笑!
・・・さて、どうしたものか。女房殿がご帰還あそばす前に、証拠隠滅をはからねば。(笑!
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「酒とそばと」幻冬舎から好評発売中
この度幻冬舎さんのご協力を得て、拙著『「酒」と「そば」と』を出版しました。このブログの酒とそばについて書いたものを加筆修正したものです。肩肘張らずに気軽にお読みいただけるエッセイ集です。
まず「はじめに」から、書店での立ち読み気分をお味わいください。
はじめに
小粋な蕎麦屋に入って、いきなり「天婦羅そばを一つ」なんて注文するのは、いただけませんな。まあ、うどん屋に入ったわけじゃないのだから、蕎麦屋に入ってそばを注文して何が悪いということになるのでしょうけれど。しかし、もしあなたが「そば通」と呼ばれたいのなら、そして真の「酒飲み」と呼ばれたいのなら、カウンターに座ってまずは厨房からこちらの様子を眼光鋭くうかがういかにも頑固そうな店主の視線を浴びながらも、店の雰囲気をしばし味わうようなそぶりを見せてから、おもむろにこのように言ってみたいもの。
「酒を一本つけてください。熱燗がいいでしょう」
そんな古き良き時代の蕎麦屋の流儀なるものについて書かれた本を、書店で目にしたことがありました。私がまだ高校に上がったばかりのころだったでしょうか。
ほぉ~、蕎麦屋とは、まず酒を飲むところだというのか。俺もやがて蕎麦屋へ入ることがあったら、そんなセリフを吐いてみたいものだと思ったものでした。
・・・あれから五十年、何の因果か製麺業を営むことになった私は、その蕎麦屋へそばを納めに行っては、「毎度ありがとうございます。今日から新そばで打ってあります」などと言うことはあっても、「酒を一本つけてください。熱燗がいいでしょう」などと言ったためしが久しくなかったことに今さらながら気づき、失望に打ちひしがれています。
日々仕事に追われながらも、いつかきっとそんな至高の悦楽を味わうことができる日の来ることを夢見て、「酒」と「そば」のうんちくを秘かに温めていると、驚いたことにこれはこれで楽しいではありませんか。
そのささやかな楽しみの一端を披露して、世の酒好き、そば好きといわれる皆さんと喜びを分かち合うことができれば幸せと、ペンを執った次第です。
「酒」と「そば」、二編に分けてご紹介していきましょう。
まずは「酒」編より、人は何故酒を飲むのでしょうか?
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第一部「酒」編
「過ぎたるは及ばざるがごとし」
古来より「酒は百薬の長」といいます。実にいい響きを持ったことばですな。私は常々この心地良い響きを妻に言って聞かせるのですが、妻は私にこう言うではありませんか。
「あら、そういうものですか。では『過ぎたるはなお及ばざるがごとし』って、どのように響きになって?」と。
このほど世界保健機関(WHO)が発表したところによると、2016年に世界で死亡した人のうち約三百万人が、飲酒関連が原因と考えられるということです。「酒は百薬の長」とも語り継がれているのに、これほど多くの人が、飲酒が原因で命を落としているということは、これはやはり飲み過ぎたから、ということになるのでしょうか。
大雑把な計算になりますが、世界の人口を約七十億として、アルコールを摂取する人の数を約半数と考えれば、35億。
3,000,000 ÷ 3,500,000,000 = 0.086% という計算になりますから、なんだ、酒飲みの千人のうちの一人以下じゃないかと胸を撫で下ろした愛飲家の方、多いのではないでしょうか?
しかしながら、どうしても気になるのは、どれだけ飲めば「過ぎたる組」になるのかということ。WHOの定義によれば、大量機会飲酒とは純アルコール換算で60グラム以上の飲酒機会を30日に一回以上持つことと書いてあります。そこで早速調べてみました。エチルアルコールの密度は、0.789g/ml ですから、 60 ÷ 0.789 = 76 ml、ビールのアルコール度数は、概ね5%と考えれば、 76 ÷ 5% = 1,520mlビール大瓶(633ml)二本半という計算になります。同様に清酒のアルコール度数を15%として計算すると、2.8合。
すなわちビールなら三本、清酒なら三合をひと月に一回でも飲む機会があれば、WHOは大量機会飲酒と定めているということになります。
確かにわが国はWHOに加盟しているかもしれないが、私個人はWHOになど加盟していないと主張する人もいるでしょう。見上げた心意気と拍手喝采を送りたいところではありますが、清酒三合以上を飲んだ翌朝のことを常々経験している者からすれば、やはりそうであったかとうなだれるしかありませんね。
あなたはうなだれる口ですか、それとも清酒三合ぐらいではうなだれませんと豪語する口ですか?
う~む、古来より語り継がれてきたことわざ「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」とは、なるほど深い含蓄のあることばだと認めざるを得ません。
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飲ん兵衛な製麺会社社長が綴る、クスっと笑える蘊蓄(うんちく)が満載。
酒の文化や歴史、あらゆる種類の「○○そば」の由来、偉人の逸話に至るまで。
世の酒好きとそば好きに贈ります。日本人たるもの、これを知らなきゃはじまらない。
ぜひご一読いただければ幸いに存じます。
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