陳情令 ラスト(2)
またいつか会えるとわかっていても、別れは悲しいですよね。さっきまで普通にそばにいた人が、もう目の前にはいないのですから。ウェインとランジャンはこの丘の上で別れ、別々の方向に歩いていきます。カメラはランジャンをとらえます。テーマソングが流れる中、ウェインの声が聞こえてきます。「帰ってくる時までに、曲名を考えておけよ」「もう考えてある」昔、洞窟で、ウェインが怪獣と戦って死にそうになったことがありました。ランジャンが彼の手首を取り、必死でエネルギーを投入していた時、ウェインはあまり静かすぎるから、何か歌ってくれと頼みました。その時に、ランジャンがある曲を口ずさみ、ウェインは「何という曲」と聞きます。それがこの曲でした。ランジャンが「ワン」とタイトルの上のほうを言うのですが、そのあたりでウェインの意識が朦朧としてしまい、気を失ってしまうので彼は覚えていませんし、視聴者にもわかりません。後で、この曲はランジャンがその時に作ったもので、16年後に、ウェインがこの曲を吹いたことから、ランジャンは彼がウェインだとわかるのです。ドラマの中で、この曲の題名が出てくることはありませんが、テーマソングのタイトルを見ると、「忘羨(ワンシェン)」だということがわかります。ランジャンの字が「忘機」、ウェインは「無羨」で、つまり、「ランジャンとウェイン」または「ランジャンからウェイン」という意味です。ドラマのタイトルは「陳情令」ですが、それは「忘羨令」、「忘羨小曲」というこでしょう。さて、ウェインの字の「無羨」の意味は「羨ましがらない」でしょうね。彼の生い立ちは幸福なものではありませんでしたが、そのことで他人を憎んだり、羨ましがったりはしていません。ランジャンの「忘機」のほうは、「一生懸命」とか「一途」とかいう意味だと思います。たしかに、ランジャンがウェインを思う気持ちは一途です。さて、どのくらいの時間が流れたのでしょうか。ウェインが丘の上で、「忘羨」を吹いています。また戻ってきたみたいです。「ウェイン」という声が聞こえ、ウェインがゆっくりと振り向き、笑顔になります。その視線の先に、ランジャンが立っているのは確かです。この肖戦さんという役者さんの笑顔はとてもかわいくて、魅力的です。このドラマは、中国では社会現象になるほどの大ヒットだったそうですが、その成功の大きな部分は、おもしろい人物設定と、このウェインの笑顔とランジャンの美しさにあったように思います。よくこういうぴったりの人を見つけましたよね。このドラマはこうやって、ウェインの笑顔で終わっています。それも、すてきな終り方だと思いました。ドラマの中で、特に印象的なスナップは、上のウェインの笑顔がひとつ、そして、町に行って、空から花が降ってくるのを見上げているランジャンの姿。ランジャンはこういう華やかなものを見たのは初めてなのでしょう。ピュアなところがよく表れていました。そして、もうひとつ。この夜、聶懐桑は祖先の秘密を話すことになるのですが、宿の部屋にランジャンと仮面をつけてはいってきた時の、彼の表情です。聶懐桑はウェインが生き返ったことは知っていましたが、面と向って会ったことはありません。そのウェインが莫さんの仮面をつけて現れたのですから、さぞ驚いたことでしょう。驚くと同時に、「こうやって、本当に生き返ったんだ」と思い、うれしかったと思います。それが、この表情、イノセントでストレートで、印象的でした。というわけで、私の「陳情令」はおしまいです。4、5回だけ書く予定でしたが、途中ではまったしまい、こんなに長くなっていました。はまるものに出会うというのはめったにないですからね、楽しい時間でした。謝謝。