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想い出桜~ミナト、たゆたう日常~

想い出桜~ミナト、たゆたう日常~

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February 20, 2009
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カテゴリ:小説

久しぶりに、書いてみました。

そんなわけでこんばんは、最近この出だしが定着しつつある桜野草一郎です。(何)
今日のタイトルは見ての通りですね、はい。

書いてみたと言っても、掲示板でコメントがあった方ではなく、2008年の5月ぐらいに3分の2ぐらい書いて放置していたものですが…。(マテ;)
久しぶりに書いてみて感じたことは。
………すごく、うまく書けません…。(ぇ;)
なので、5月あたりに書いた部分と2月19日に書いた部分とで落差が激しいですが、そこはまぁ…生暖かくスルーしてやって下さい。(何)
読んでやるか~という人は下へ、知らない~という人はここで終了をば…。

原作:『あかね色に染まる坂』(feng)
カップリング:準一×優姫
雰囲気:明るめなラブコメディ
登場人物:長瀬準一・片桐優姫・オリジナルキャラ1名
長さ:7,169文字(前編・後編構成)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あなたと過ごす、この日々を
(前編)


 

頬を撫でるかすかな風の感触に、浅い眠りの海から意識が徐々に浮かび上がっていく。

「──────ん……」

バラ色に染まった小さな唇から、吐息とも呟きともとれない音がこぼれ落ちる。
微かな身動ぎにあわせて、ベッドシーツの上に広がった艶のある髪が、波打つように揺れ動く。
常は意志の強さに溢れている瞳は、うっすらと開かれているだけで焦点が定まっておらず、大理石のように白い肌をシーツ1枚だけで包み隠したその様相と相まって艶めかしささえ感じさせる。
微睡みと覚醒との間を彷徨いながら、少女──────片桐優姫は薄く瞼を開いた。
靄がかかったようにぼんやりとした視界の中に、見慣れた自室の天井が見える。
視界と同様に、寝起きで少し重たく感じる頭を横に向けると、閉じたカーテンが目に映った。
そこから漏れ出る光はおぼろ気で、いつも起きる時間よりずいぶん早いことが分かる。

(今、何時かしら…?)

窓の近くの壁掛け時計へと視線をずらすと、短針は3と4の間を指している。
まだ使用人たちも起き出す時間ではなく、もちろんそれは優姫にも当てはまることだ。

(もう少し、寝よ…)

すぐそばで手招きをする眠気に抗うことなく、ころりと反対側へ寝返りをうつと。

「すぅ……すぅ……」

裸身にシーツを纏っただけという格好で、すやすやと気持ちよさそうな寝息をたてている少年──────長瀬準一がいた。

「きゃ、…っ、──────っっ!!」

いきなりのことに驚いて、思わず悲鳴を上げそうになった口を、慌てて塞ぐ。
優姫の思考を疑問符が埋め尽くすが、次の瞬間にそれは霧散していた。

(そ、そうよ、私ったらなにを驚いてるのよ。 私と準一は付き合ってて、それで昨日は──────)

…そこまで思い出したところで脳裏に昨夜の”行為”が鮮明に思い返されて、カァァッ、と優姫の頬に朱が散る。

(うぁーーーっ、きゃーーーっ!? ななななんてこと思い出してるのよ私は~っ!?)

頭の中で像を結んだそれをかき消そうとするかのように、優姫はゴロゴロとベッドの上を転がって。

(はっ───!?)

あることに思い至って、ピタリとその動きを止める。
そして急速に心拍数を上昇させていく心臓を落ち着けるように、優姫は胸を押さえながらおそるおそる準一の顔をのぞきこむ。

(起こし、た…?)

優姫の心配は、しかし杞憂だったらしく、準一の寝顔は先ほどとまったく変わっていなかった。
ほぅ…と思わず安堵の息を吐いた優姫は、力が抜けたのかへたりとベッドに座りこんでしまった。
眠気など完全に吹き飛んでしまった頭に、自分を起こすきっけかになったのは準一の寝息だったのかという考えが浮かぶと同時に。
他にすることもなかった優姫は、静かに準一のそばに座るとその寝顔をじっと見つめた。

(こうして見ると…やっぱり準一って整った顔してるのよね…)

茶色がかった、少し寝癖のついている柔らかそうな髪。
閉じた瞼を縁取る長い睫毛に、筋の通った目鼻立ち。
その下でかすかに開いている薄紅色の唇は、思わず魅入ってしまいそうな艶を帯びている。
視界の端にちらりと見える、呼吸に合わせて上下している胸板は、すらりとした外見に似合わず以外と逞しい。
恋人のひいき目などを差し引いても、充分に美少年という部類に入るのではないだろうか。
…ただし。

「でへへ…」

なにか良い夢でも見ているのか、準一の顔がだらしなく緩む。
その顔と、そして呟いた寝言で、せっかくの美少年ぶりが台無しだった。

(はぁ…。 こういうのが無くて、普段からもっとシャキッとしてれば言うこと無しなんだけど…)

優姫のふっくらとした桜色の唇から、軽いため息が零れ落ちる。
けれど優姫は同時に、でも…、と思う。

(普段はこんなだけど、決める時はキッチリ決めるのよね…)

優姫の脳裏に、もう2ヶ月も前になるあの日々のことがよみがえる。
会社の危機を救うため、鈴瀬財閥会長の隠し子でありクラスメイトでもあった西野冬彦と結婚させられそうになったこと。
諦めかけたその時、結婚式場から颯爽と自分を連れ出してくれた準一のこと。
もちろん、その影には当事者である冬彦や友人たちの協力があったのだが。
それらの出来事が、まるで昨日のことのように思い出されて、優姫は知らず自分の頬が熱を帯びていくのが分かった。
普段は変にかっこつけようとして失敗したり、情けなかったり。
でも、時折見せる決断力や行動力、そしてなによりも自分に向けてくれる優しい気遣いや言葉の数々は、どうしようもなく自分を惹き付けていって───。
朝の静寂が立ちこめる室内に、早鐘を打つ優姫の心音が染み入るかのように響いていく。

(や、やだっ、私ったらなに考えて…っ)

それを抑えるように両手を被せても鼓動は落ち着くどころか、胸の奥がキュッと握りしめられるほどに甘く切ない疼きを全身に伝播させながら、更にその勢いを増していく。

(う~っ、なんだか私ばっかりドキドキさせられてるみたいで、ずるい…っ!)

準一が聞いていれば、「そんな理不尽なっ!?」とでも言いそうな台詞だ。
自身の心の内を表すかのように、その細くしなやかな指先をくっつけたり離したりしながら、優姫は言葉にならない呟きを漏らす。
だが、誰も聞いていないからといって準一のことが好きでたまらないという気持ちを、素直に認めてしまうのもなんだか悔しい。

(もうっ、私がこんな思いしてるのに準一ったらのんきに寝ちゃって…)

自分でも無茶なことを言っていると分かっていても、そう思わずにはいられない。
こんなことしてないで早く寝よう、そう思うのだがもはや冴えきってしまった頭ではしばらく眠れそうにもない。
こうなったら準一も道連れに起こそうかと思った、その矢先だった。
優姫の目に、鏡台に置かれたあるものが映った。

(……そうだっ!)

優姫の頭の中に、夏空に広がる入道雲のように悪戯心がむくむくと芽生えていった。
それを早速実践すべく、シーツを纏って立ち上がるとそれを持って再びベッドに座る。

(えっと、これとこれに……あとは…)

優姫は慣れた手つきで、持ってきたものからいろいろな形をしたものを取り出していく。
始めてから1分も経たない内にその作業を終えると。

(さて、と……)

優姫はその顔に、悪戯をする子どものような笑顔を浮かべると。
あるものを手にして、ゆっくりと準一へ近づいていった。







「──────う、んん……」

閉じた瞼を、白い光が柔らかくノックする。
まだ寝ていたいという思いとは裏腹に、宙を漂っていた意識は徐々に覚醒へと引っ張られていく。
こうなってしまうと、もう寝ようと思っても寝られないのは今までの経験からして分かっているのか、衣服の代わりにシーツのみを纏った少年──────長瀬準一は、名残惜しむかのようにゆっくりと瞼を開けた。

「ふぁ……」

あくびをかみ殺しながらむくりと起きあがり、ボンヤリとした頭が目覚めるまでの間、何とはなしに周囲を見やった。
まず最初に目に飛び込んできたのは白で統一された壁と天井だった。
部屋に二つある窓にはワインレッドのカーテンが掛かっていて、外からの光に淡く輝いている。
フローリングの床に置かれている調度品は、実用性よりもアンティークな雰囲気を重視したようなものが多く、床や天井の色と相まって落ち着いた空気を醸し出している。
もちろん、マンションにある自分の部屋ではない。
最初は朝起きて目にする度に違和感を覚えていたが、ここ最近はそんなこともなくなった。
周囲を見渡し終えた準一がちらりと横に視線を移すとそこには、この部屋の主であり準一の彼女でもある少女──────片桐優姫がすやすやと愛らしい寝息をたてていた。

(おはよう、優姫)

寝ている優姫が起きてしまわないように、心の中でそっと呟く。
いい夢を見ているのか閉じた瞼は穏やかな弧を描き、上質の絹のようになめらかな肌にはうっすらと赤みが差している。
自分を信頼しきった、あまりにも無防備なその寝顔に、準一はつい惹き込まれそうになって───。

(っとと、あまり見過ぎるのも良くないな)

ついこの前に同じように寝顔を見ていたら優姫が起きて、寝顔を見られてしまった恥ずかしさからか怒られたことがあった。
それはそれで可愛いのだが、あまりやりすぎるのもよくないと思った準一は視線を下に移して……。

(ふわおうっ!?)

奇妙な叫び声を上げそうになった口を根性で閉じると、慌てて視線を上に戻す。

(見ちゃ駄目だ、見ちゃ駄目だ、見ちゃ駄目だ……!)

準一は、先ほど垣間見えてしまった白い膨らみをなけなしの理性を総動員して思考の片隅に追いやると、そっとシーツをかけ直した。
いかに彼女でありそういうことをする間柄だとはいえ、ロマンスグレーな紳士を目指している準一はその辺りのマナーのようなものを心得ているつもりだ。

(あ、危なかった───理性が)

さっきのことで目は覚めたが、代わりに別のものも目覚めそうになってしまった。

(ちょっと早いけど、顔でも洗って頭を冷やすか…)

そう決めると、優姫を起こさないように気を付けながら、床に脱ぎ捨てられたままになっていた服を手早く着ると。
準一は後ろ髪を引かれる思いを振り切りながら、ゆっくりと部屋を後にした。




後編へ続く・・・

 

 

 

 

そういうわけで、今日はこの辺で~。
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Last updated  February 20, 2009 01:09:13 AM
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