2009/02/21(土)00:35
あかね色に染まる坂の二次創作小説を…その2・・・
久しぶりに書いてみましたシリーズ、その2です。(ぇ)
こんばんは、桜野草一郎です。
今日のタイトルは見ての通りですね。昨日に引き続き、『あかね色に染まる坂』(feng)の二次創作小説を載せてみます。
今回は珍しく(ぉ;)お待たせすることなく掲載と相成りました。
シュガスパのスピンアウトや、他のあかね色の二次創作小説を書かないといけないのですが、その事実から Run Away です。
……それは置いておいて。
前半部分がえちぃというコメントを頂きました。
ば、馬鹿な…超が付くほど健全に書いたつもりなのにっ!?←嘘吐け;
円天の円の部分に楽を入れたところから消されないか、ドキドキします。(チュアブルソフトのイシダさん風に←ヤメ;)
後半部分にはそういう要素は無い……はず。(ぇ;)
そんなわけで、続きをどうぞです。原作:『あかね色に染まる坂』(feng)
カップリング:準一×優姫
雰囲気:明るめなラブコメディ
登場人物:長瀬準一・片桐優姫・オリジナルキャラ1名(涼瀬泉水(すずせいずみ))
長さ:7,422文字(前編・後編構成)
あなたと過ごす、この日々を
(後編)
広大な敷地面積を持つ片桐家の屋敷は、その外見に違わず中身も豪奢で部屋数も多いが、もはや勝手知ったるなんとやらで準一は洗面所まで迷わずに歩を進めていた。
足音は毛足の長い絨毯に吸い込まれて響かず、辺りには清々しい朝の空気が満ちている。
あと少しで目的の場所までたどり着くというところで、数メートル前方の曲がり角から人影が近づいてくるのが見えた。
頭にレースで出来た白いヘッドドレスを付け、濃紺のワンピースとフリルの付いたエプロンドレス───いわゆるメイド服を身に纏っているのは、この屋敷のメイドたちを取り仕切っているメイド長の涼瀬泉水だった。
背中の中程まで伸ばした黒檀のように黒く艶やかな髪はバレッタで結い上げられており、メイド服は一分の乱れもなくきっちりと着こなされている。
靴から数センチ上までをゆったりと覆ったロングスカートにもかかわらず、その足取りは確としていて乱れがない。
優姫の家に泊まるようになってから何度か顔を合わせているのだが、メイド長というお堅い肩書きに似合わずぽやぽやっとした柔らかい性格の女性だった。
しかし仕事のこととなると、そこはメイド長という地位を与えられているだけあって、小さな仕事1つとってもまったく隙がないほどの仕上がりを見せる。
そんな、どこかアンバランスな印象を与える彼女が、目下のところ準一がこの屋敷で一番気楽に話せる相手だった。
「あ、おはようございます涼瀬さん」
準一の声に気付いたのか、前方から歩いてきていた泉水も準一に視線を向ける。
「あっ、おはようございます長瀬様。 今日も良い朝で、……っ!?」
…が、泉水の言葉は途中で不自然に途切れ、心なしか頬も赤くなっていって───。
「……?」
不思議に思った準一が何か声をかけようとすると。
「あ、あわわっ、そそそのっ……失礼します~~~っ!!」
「え、あ、ちょっ……!?」
泉水は体を翻して一目散に、それでも走るなどという失態は演じず早足で歩いていって、あっという間に廊下の角を曲がって見えなくなってしまった。
「な、何だったんだ……?」
後に1人残された準一は首を傾げるが、当然答えなど出てくるはずもない。
(まっ、まさか寝ぐせが酷くて頭が爆発してるとかっ!?)
慌てて頭に手をやるが、しかし多少の寝ぐせはあっても先のような反応をされるほどではない。
(うーん、だとしたら一体…?)
いくら頭を捻ってみても答えなど解るはずもなく、とりあえず後からまた聞くことにして先に顔を洗ってしまおうと、もう目の前にあったドアを開け、洗面所の鏡を見て───。
「え………」
それが、第一声だった。
そこに映っていたのは、パッチリとした睫毛、目の下に引かれた鮮やかなアイシャドウに、女性のように白く滑らかな頬の美少年とも美少女ともとれる顔だった。
そして、その中でも一段と際立っているのは目にも鮮やかな、それでいて他の存在を殺すことなく絶妙な加減で口紅を引かれている、艶やかな色の唇だった。
そんな、よく見ると自分に似た顔が、鏡の中からこちらを驚いたように見つめている。
(…いや、これって鏡だよな? ってことは、それに映ってるのは………)
思考すること数秒、ようやくその考えに思い至って。
「な、なんじゃこりゃあぁぁぁっっ!!?」
ここからは見えない太陽に向かってほえるかのような雄叫びが、片桐邸の一角を震わせた。
※
「───あはははははっ!」
「笑い事じゃないです、優姫さん…」
「ごっ、ごめっ…で、でもっ、ぷくくっ、あははっ…あはははははははっ!!」
洗面所でのひと騒動から少し経って、再び優姫の寝室に戻ってきた準一は、しかし未だに化粧をされた顔のままだった。
目の前ではいつの間にか制服に着替えた優姫が、肩を震わせ体を折り、文字通り抱腹絶倒している。
「う、うぅ…ひどい、俺もうお婿にいけない…」
「だ、だって、準一が、あの顔のまま……っぷ、くっ、あははははっ、ダメ、笑いが止まらない…!」
放っておいたらそのまま延々と笑い続けているんじゃないかという優姫に、準一は。
「…早くこの化粧をどうにかして下さい、優姫さん……」
ショボンとした声で懇願した。
このまま登校なんて事になったら、男として…いや、人として大切な物を失ってしまいそうな気がする。
「分かってるってば、ちゃんと…っ、今から戻…戻す、から……っ」
収まらない笑いを懸命に堪えながら、優姫が化粧を落とす液を染み込ませたものを近づける。
「ほら、すぐ済むからそこに座ってちょっと目を閉じてて」
言われた通りにベッドに座り、目を閉じる。
視界が閉ざされて鋭敏になった触覚が、顔に押し付けられ物の感触と嗅ぎ慣れない薬品の匂いを直ぐに伝えてきた。
自分が動かしているものではない感触が顔にあるという少しの不安感と、優姫がしてくれているという安心感、そして微かに感じ取れる優姫の息遣いや体温などが相まって、妙なくすぐったさを感じる。
「うん、目の方はもういいわね。 じゃ、最後に口紅を取るからね」
さすがに慣れたもので、優姫はあっという間に目元や頬などに施した化粧を落とし終えた。
その声に目を開いた準一は、しかし。
(あれ、そういえば……)
すぐ目の前にあった優姫の顔に少しドキリとしながら。
「なぁ、優姫」
「なに、準一? 今は喋らないでじっとしてなきゃ…」
「あ、いや、1つ気になることがあるんだけど…」
「気になること?」
「俺に悪戯するために、わざわざ新しいのを開けたのかなーと思ってだな」
「…? なんでそんな勿体ないことする必要があるのよ?」
「…へ?」
「私が使っているのを使ったに決ま………って…?」
ハッと、何かに気付いたような表情のまま、硬直すること数秒。
そして、次の瞬間。
「う、うああぁぁぁああ~~~っ!?」
優姫は首筋から顔までを夕焼け色に染めながら、両手で頭を抱えるようにして叫んでいた。
どうやら、今の今まで気付いていなかったようだ。
「あ~なんだ。 まぁ…今更、間接キ…ぶふっ!?」
「う、うるさいうるさいうるさいっ!」
それ以上しゃべらせまいと、まるで汚れを目にしたどこかの目つきの悪い掃除好きな男子高校生のようにゴッシゴッシと、勢いよく擦ってくる。
先ほどまでとは違い、当然のことながら力加減などされているはずもなく―――。
「いひゃっ、いひゃいれすっ、ひゅーひひゃんっ!?」(痛っ、痛いですっ、優姫さんっ!?)
うまく口を開けて喋ることができないため、間の抜けた準一の悲鳴が響き渡る。
だが、優姫は準一の声が聞こえていないのか、その勢いが弱められることはない。
「はいっ、これで終わりっ! もう時間が無いんだから、準一は向こうの部屋で早く着替えて!」
「うわっ、たっ、ちょっ……」
あっという間に残りの化粧を落とし終えたかと思うと、何かを言う隙も与えられずグイグイと押して立たてられて、そのまま廊下に放り出された後。
バタン、と些か乱暴な音を立てて優姫の部屋の扉が閉じられた。
※
「う~~~っ、準一のバカ…っ!」
準一を部屋から追い出して、残りの身支度を整えた優姫は、鏡台の前で問題の口紅を手にして唸っていた。
(そりゃあ、悪戯したのは私なんだし、私が一番悪いのは分かってるけど…)
(でっ、でもっ、わざわざ言わなくてもいいじゃないっ!)
(べ、別に、今更間接……ごにょごにょ…ぐらいで恥ずかしがったりしない、けど…)
「優姫、そろそろ食べないと間に合わないぞー」
(そ、そうよ、使う度に思い出しちゃうじゃないのっ)
(あっ、それに泉水にも見られたって言ってたような……!?)
「優姫? えっと…入るぞ?」
(うああぁぁ、それじゃあもしかして泉水にも知られてるってこと!?)
(これから顔を会わせた時に、どういう顔をすればいいのよ~っ!?)
優姫が口紅を持ったままの右手をブンブンと振り回していると。
「優姫…さん? その…いったい何をしておられるのでしょうか…?」
「……え?」
横から準一の声が、何故か敬語で聞こえてきた気がして、優姫はそちらに顔を向けた。
「いやそのっ、俺はちゃんとノックしたし、何回も呼びかけたからなっ!? だけど時間が迫ってるのに優姫が一向に出てこなかったから入ってきたわけで……」
するとそこには、なぜか妙にあわてふためく準一がいて。
(………はっ!?)
今の自分は、傍目に見てどうだっただろうかと、自問自答する。
・鏡台の前に制服姿で立っていた
(…うん、問題ないわ)
・準一に使った口紅を持って、何事かを口走りながらそれをブンブンと振り回していた
(…問題………あるじゃないの、私のバカーーーっ!?)
なんとかごまかそうという気持ちと、恥ずかしいという気持ちと、なんでもっと大きな声で呼んでくれなかったのかという準一への理不尽な怒りとが、頭の中で混ぜ合わさってごちゃごちゃになって。
「……し、」
「……し?」
「死なすうぅぅう~~~っっ!!」
「なんでだあぁぁあ~~~っ!?」
優姫の絶叫と準一の悲鳴が交差した、直後。
重く鈍い音が優姫の部屋の空気を震わせ―――その後、何かが倒れる音がした。
あなたと過ごす、何気ない日常が私の宝物。
いつまでも、いつまでも―――。
―――積み重ねていこう。
あなたと過ごす、この日々を。
END
そういうわけで、今日はこの辺で~。
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