2009/03/08(日)11:55
鈴木光太郎著「オオカミ少女はいなかった」
今日は、鈴木光太郎著
「オオカミ少女はいなかった-心理学の神話をめぐる冒険」
という本について。
オオカミ少女はいなかった
*
これ、
学問として読むには、
???なのかもしれませんが、
研究者ではない私には、
とても面白い本でした
図書館本を読んだので、
古本屋に、この本が売っていたら購入しちゃうかも。
*
以下、この本の内容をご紹介。
【あらすじ~まえがきより~】
心理学の中の迷信や誤信、また、
否定されているにも関わらず未だに既成事実として
取り上げられている話・考え(神話)を叩き割り、
再検証したケース8つを紹介。
以下、叩き割られた8つの神話の中から
4つほどご紹介 ↓
オオカミ少女はいなかった-アマラとカマラの物語
インドにいたという、オオカミに育てられた少女、
アマラとカマラ。
このあまりにも有名な話は、実は、作り話だった?
発表された、アマラとカマラの写真は、
同一時期に撮られ、作為的。
また、彼女たちの記録には、
時刻の記載がない他、信憑性にかなり欠ける。
彼女たちは実際に存在したことはしたが、
オオカミに育てられたというのは、ウソで
森に遺棄された、重い自閉症の子供たちだったのではないか?
発達心理学者ゲゼルが、自身の生得説支持から、
環境優位説に脱皮を図るために利用したケースではないか。
まぼろしのサブリミナル-マスメディアが作り出した神話
あまりにも微弱すぎて感じられない刺激は「閾下刺激」と
呼ばれる=サブリミナル
映画にサブリミナル広告(1/3000秒画面映写)を入れたところ、
そこに書かれていたポップコーン・コーラの売上が伸びた。(1956・米)
↑
当時、この実験は、無意識を介して人の心を操るのではないかと
人々の恐怖心を煽った。
しかし、この実験には実は、論文も報告書もなければ
学会で発表もされたこともない。マスコミの記事になっただけ。
1950年当時、1/3000秒の画面映写は不可能。
本来、大きな違いがある、
認知心理学の「意識下(閾下)(今ここにある刺激)」と、
フロイトの「無意識(過去の出来事)」を混同したために、
訳が分からなくなってしまった。
何故、こうなったか。
当時、フロイトの精神分析がアメリカの主流となっていた為。
なぜ母親は赤ちゃんを左胸で抱くか-ソークの説をめぐる問題
母親の多く(80%)は、赤ちゃんを左胸で抱く(1950年代終頃・リー・ソーク・米)
ソークの仮説(心音説)→
母親の心音を胎児の頃から聴いていて、
外の世界に生まれてきた時に、安心感を得るために
母親の左胸(心臓に近い方)に頭を持って
行きたがるのではないか。
↓
以後、同じような研究が別のチームでいくつか
行われたが、ソークの「心音説」に関する
結果・仮設は残念ながら再確認できなかった。
・では父親はどうだろう?(著者研究)
↓
知識・経験の有無(子育て経験など)で、
左抱き・右抱きが変わった。
(子育て経験あり=左率高め、子育て経験なし=左・右同じ割合)
これらから、左胸で抱く傾向は、経験を通して
出現し、固定するといえるのではないか。
左胸に抱く傾向は、霊長類にも同じように見られる。
側性化(脳の機能の偏りの反映)のひとつとしても考察。
(感情・表情を扱う右脳が関係しているのは、体の左半分。
だから左胸で抱く)
その他、色々な説が出されていたが、
結局のところ、なぜ左胸かという謎は、いまだ解けていない。
ワトソンとアルバート坊や-恐怖条件づけとワトソンの育児書
恐怖の条件づけ実験台になったアルバート坊や
(1919~1920年・ワトソン・行動主義派・米)
白ネズミを置いた時に大きな音をさせて
驚かせる(恐怖を植え付ける)
↓
白ネズミやそれ以外のウサギや毛皮のコートを
見ただけで、泣くようになった。
ワトソンのスキャンダルとともに
アルバート坊やの実験は終了する。
その後のアルバート坊やがどうなったかは
分かっていない。
(系統的脱感作用などにより、恐怖を取り除かなくて
もよかったのか)
↓
アルバート坊やは、本当に条件づけされていたのか。
また、「人間の条件づけ」実験結果を
この1事例で一般化していいのか。
ワトソンは、その後、育児書を出版。
親のしつけ次第によって、子供は変わる(つまり条件付け)
→厳格な親本位の子育て法
その後、スポック博士の育児書が発刊
こちらは、フロイト風の快楽原理を採用
→子供を自由に放任して育てる(子供本位)
(↑確かこの本、実家にあったはず。
道理で私、自由奔放・笑)
育児書は、その時代や文化の価値観を反映して作られる。
時代とともに変わる育児書
まとめ・心理学について
・心理学の歴史は短くない
・心理学にとっての父は「哲学」、母は「生理学」、兄弟は「社会学」
・心理学は、間接科学
・「心」という物質でないものを扱う学問→誤解されがち
・心理学の胡散臭さを払拭するには、論理的にものを考えるしかない
原典にあたること、噂に頼らぬこと、疑うこと
*
ここに挙げなかった他4つの神話の検証も
興味深い内容でした
やっぱり「人」「生物」って面白い