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桜上水雀

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2009/11/27
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カテゴリ:カテゴリ未分類
【更新情報】
『GALLERIA』に『NorthIsland2009』を追加しました。


そう、桜上水の中で彼女の記憶の一番古いものは浪人生のときです。もう20数年前になるんですね。
その頃の彼女はまだ若々しく、しかも非常に愛嬌があったためこの近辺では評判でした。縄張りの見回りは日々欠かさず、いつでもどこでもこの一帯で彼女の姿を見ることが出来ました。

状況が一変したのは今年の夏あたりからです。彼女の家に新しく若い子が入ったのと引き換えのように彼女は家に入れてもらえなくなったようです。おまけにもう20歳くらいですから老衰が始まっており、皮膚病も患っていたようなので彼女は家に入れてもらえなくなりました。幸い、ここ一帯の気概のある人たちが交互交互に食事を与えていたので食事にはあまり困っていなかったようでしたが・・・

ちなみに桜上水は煮干を与えていました。日に日にやせ衰えて行く彼女を見るに耐えられなかったのです。どうやら煮干は彼女の大好物だったようで秋ごろには桜上水が門扉を開けるとそこに当たり前のように彼女がいました。しかしそんな彼女の姿を見て大本の飼い主がどう思ったのかは知りませんが、大本の飼い主は彼女を家から一切閉め出す行動に出たのです。夕方ごろ必死に”家に入れてー”と泣く彼女の声が切なくてしばらく居た堪れない気持ちになりました。

どうして人間は長い付き合いでも要らなければ彼女たちをいとも簡単に捨てたり処分出来たり出来るんでしょう? そりゃあ各家々には各家々の都合があると思いますが、命あるものは玩具じゃないんです。死んでも生き返るようなリセットボタンは付いていないんです。彼女等と一緒に自分の『情』まで簡単に捨てたり処分したりしてはいけないんです。それを行ったとき人はもう人間ではなくなってしまうのですから。

そして、桜上水が北行きから帰ってきた頃彼女の泣き声は聞かれなくなりました。姿も見えなくなりました。
20数年も生きたんだから大往生だと他人は言います。でも、少なくとも桜上水は彼女の心に、魂の中に記憶として残っているのでしょうか?
わたしは、彼女という生命に対して、その行動で充分に答えることが出来たのでしょうか?

彼女に伝えられなかった言葉が沢山あります。そして、もう二度と伝えることが出来ない今、その言葉は毎日のように増えていっては風の中に消えていきます。
言う相手のいない言葉は消えるしかないのです。

今はただ『さよなら、そしてありがとう』と、そして何年か後私がグソー(あの世)に行ったあと彼女に会うことが出来たなら、こう聞きたいです。

『幸せだったですか?』と



『彼女』
RICOH AUTOHALF-SE FUJIFILM400





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Last updated  2009/11/27 07:08:39 PM
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