シングル母のアメリカ暮らし

2004/05/10(月)07:02

アメリカン・ドリーム

アメリカよもやま話(65)

数年前、この地域にはアメリカンドリームがあちこちに転がっていた。 ストックオプションで一夜あけたら億万長者になっていた人、スタートアップの会社を始め、波に押されてあっというまに昇りつめていった人たち。On the Hillには若いカップルが豪邸を構えて住み始め、この辺を走る車は高級車ばかり。 バブルがはじけて財産がただの紙屑となり、家を売り州外に出た人もたくさんいる。でもいまだに大勢のヤング・ミリオネアが高台を占領しているのだ。(元夫の兄もそんな一人である。高級住宅地に時価6億円の家に住み、湖畔の別荘と、他に6軒の家を所有しているエンジニアである) ゆうべ息子のクラスの父兄親睦会があり、それぞれ一品ずつ持ち寄ってパーティを開いた。場所は父兄の一人の家。息子がお邪魔した事があるので迎えにいった際にチラっとのぞいたが、なるほどまさしく高台の豪邸である。 家にはいると、だだっぴろいエントランス。左手には大きなキッチンとファミリールーム。正面は一面ガラス張りの広いダイニングルームとリビングで、街とベイの夜景がはしからはしまで見渡せる。思わず「ヒュウ」と口笛を吹いているゲストのお父さんがいる。 芝生には犬。スイミングプール、バスケットコート(などは珍しくはないが)。たまげたのが邸内に映画館がある事だ。階段をおりていくとそこにあるのはまさしく映画館のあの扉。 中にはスクリーンとゆったりしたスペースに30席くらいの椅子。映写室まである。映像もサウンドも本格的である。 前にこのうちの子供が私の家に遊びにきたが、息子が「君のうちよりせまいでしょ。」と言ったら「そう?ああ、そうかもね。ちょっとね。」と言っていたが、何が「ちょっと」なんだか・・・。うちはぜんぶいれてもこの映画館のスペースくらいじゃないのか? 皆で食事をはじめた。ガラス張りのダイニングルームに夜景、キャンドルと花がテーブルに飾られ、静かにジャズが流れ、気分はまるで高級レストランである。各自セルフサービスで食事をし、このうちのご主人が皆にワインをついでくれる。デザートは奥さんが手作りのムースケーキを一人分づつきれいに盛り付け、これまたご主人がサーブしてくれた。 食後に彼も交えていろいろ話をした。私が「今日ガレージセールをやってね」などと話していたら、このご主人が「ああ、アメリカに来たばかりの頃は、何にも持ってなくってね。僕らも生活用品はぜんぶガレージセールで揃えたんだ。そのうちアパートの住人が皆でガレージセールを開こうって提案したけど、うちはどこ見渡しても売るようなものが何もなくってね。」と笑っていた。 息子のクラスの親の、実に半数近くが移民である。プライベートスクールなので上のようなお金持ちもいる事はいるが、月謝の設定が他とは違うので、うちのような貧乏人も通える仕組みになっている(むしろ地域が限定されている公立学校よりも経済的背景はピンキリの度合いが激しい気がする)。とにかく人種も経済的な事情も言語もさまざまな背景の人たちが、子供を通して知り合い、こうして集って楽しいひとときを過ごせるのはいいことだ。子供達も色々な比較の中でお互いのバックグラウンドを感じたり理解したりするのだろうな、と思う。 笑うと顔がしわくちゃになって、とてもとても人の好い今夜のホストを努めたお父さん。何も持たずにアメリカに来て、今はこうして夜景を見下ろしながら満足げにワインを啜っている。ここまで来るには並み大抵の苦労ではなかったかもしれない。いやひょっとすると、いい時にいい場所にいた、という幸運の持ち主だったのかもしれない。 でも本当にこういう絵に書いたようなアメリカンドリームが、現実におこってしまうのもアメリカの一面なんだなあと思う。 アメリカン・ドリーム。実際にはほとんどの人に縁のない言葉でもあるけれど。(特にうちね) 本日の献立: 母の日&子供の日スペシャル/ほうれん草のキッシュ、グリルドチキン、ゆで野菜、ガーリックブレッド、フルーツサラダ 自分で祝う母の日はちょっと哀しい(涙)

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る