シングル母のアメリカ暮らし

2006/10/16(月)10:15

おもてなしの心

先日、あるお茶会で、 よその流派のお手伝いをさせていただいた。 始めて拝見するそのお点前は、 私が習っているそれとはまったくの別物で、 とても新鮮だったし、自分なりに楽しめた。 その流派の方が、きのう 手伝いをしてくれた人を招待したいという事で、 和食のレストランに招いてくださったのだ。 お酒とアペタイザーはすでに用意され、 あとは思い思いの食事を注文した。 みんなで和やかにお互いの注文品をつつきあいながら、 お腹も相当くちくなった頃、 小ぶりの椀によそわれたそばがそれぞれに運ばれて来た。 そして締めくくりに、ホストの方手作りの和菓子が出され、 お開き解散ということになったが、 お持たせにケーキのおみやげまでつくという 豪勢なお食事会だった。 久しぶりに「日本らしいおもてなし」を受けた、という感じだ。 はっきりいってここまでしてもらうような事は 何もしていないのだ。 たかが数時間、裏方としてお菓子を用意したり お茶を点てたり、茶会の席ではいつもしている事。 その合間にお菓子をいただいたりおしゃべりしたり、 けっこうこちらも楽しく過ごしたのだ。 アメリカだったら、サンキューカードで終わりだろう。 個人的にはそれで本当にいいと思っているし、 あれだけの事にここまでのお金と時間を費やされると、 大変申し訳ないと思ってしまう。 ああ、でも日本というのはこういう文化だったなあと アメリカに来てそろそろ14年が経とうとしている身には あらためて新鮮に感じられる出来事だった。 どこかに食事に呼ばれれば、 これでもか、というほどの料理が出され、 やれお酒だ、お茶だ、果物はどうか、デザートはと 果てしなく勧められる。 あげくおみやげまで持たされる事も少なくない。 アメリカに来たばかりの頃、 アメリカ人の家庭に食事に呼ばれて、 前菜にコーンチップ、 そしてグリルで焼いたハンバーグがお皿でどんと出され、 チョコレートケーキのデザートをいただいた。 もちろんお腹はいっぱいになったし、 シンプルでおいしかったけれど、 正直いってなんか味気ないなと思った。 そのうち家でも人をもてなすようになり、 日本人的感覚でいろいろ作ってサーブすると、 「まるでクリスマスかサンクスギビングみたいね」と 派手に驚かれたのを覚えている。 日本人の、というかアジア人のホスピタリティは 山のような食事やおみやげ、 西洋人のホスピタリティは雰囲気と会話、といったところか。 もちろん個人差もあるし、国によっても違うだろうから、 一概には言えない事は承知の上で言わせてもらえば、 何となくそういった印象がある。 日本人のもてなし方は時に拷問になり得る事もある。(笑) お腹が苦しくて死にそうな状態でも 「これくらいなら入るでしょ」といいながら、 すでに用意された状態で目の前に出される事も多く、 断りきれなくて死にものぐるいで詰め込まなくちゃいけない羽目に 陥った事も過去に何度もあった。 比較的年配層の方に多いもてなし方だ。 アメリカでもおばあちゃんタイプの人は、 これでもかと勧めてくるが、強引に皿に盛るような事はあまりない。 こちらが「もう無理です」と断れば引き下がってくれる。 そして居間でくつろぎながらおしゃべりをする。 「おみやげ」という概念もアジア人の特有のものではないか。 一般に西洋人は「義理みやげ」は用意しない。 家族と親しい友人に買っていく事もあるだろうが、 日本人のようにどこかへ出かけたからと言って、 会社にお菓子を買って持っていくような事はまずないのでは。 私は仕事の一つが外国から移住してくる人に会う事なのだが、 過去に何度か、初対面の人から、 小さなお土産を手渡されたことがある。 そのような事をしてくれるのは日本人や韓国人をはじめとする、 アジア人にほぼ限られている。 プログラムが終わった時にちょっとしたギフトをくれたりするのも まず例外なくアジア系だ。(インドも含む) 私はステレオタイプで話をするのはあまり好きではないけれど、 こういったちょっとしたお国柄、というのはやはりあるのではないか。 お茶の世界では、 そういったホスピタリティも 日本らしさに溢れているので、 今回のお食事会のようなことが実現するのだろう。 それでも、そういうきめ細やかな配慮の仕方、 お礼の仕方、そしてその心というのは、 ここまで大事じゃないにしても、 アジアの、日本特有のものであるのかもしれない。 アメリカに長く住む私たちも、 忘れずに受け継いでいくといい事なのかもなあと、 おもてなし方法だけはすっかりアメリカ式になった私は、 ちょっとだけ反省なんかしてみた。 本日の献立:玄米、ウナギの蒲焼き、ブロッコリーとカリフラワー、豆腐とわかめと玉ねぎの味噌汁

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