シングル母のアメリカ暮らし

2006/12/12(火)07:14

我が町サンノゼ

アメリカよもやま話(65)

カリフォルニアには 大きくいって5つの大きな都会がある。 言わずと知れたロサンゼルス、サンフランシスコ、 そしてサンディエゴ、州都であるサクラメント、 最後は私の住む町であるサンノゼだ。 (といってもその周辺、ってことで住所は違う) サンノゼは都会のはずだ。 天下のシリコンバレーを抱えている、 周辺人口170万人の大所帯だ。 少なくとも住民はそう思っている。 それでも知らない人が少なくない。 いつもサンフランシスコの影にかくれているからだ。 それだけじゃない。 ダウンタウンも超ちっぽけなのだ。 アメリカの都会と言うと、 ばーんと高いビルがそびえ立っていて、 人や車が行き交い、活気に溢れている。 サンフランシスコのダウンタウンなんて、 どこから見ても文句のつけようがないゴージャスさだ。 なのに、はじめてサンノゼのダウンタウンを高速から見たとき、 不謹慎にも「あれ、あそこビルがいっぱい立ってるねー。 なんだろうねー」とうっかり尋ねてしまったほど簡素な場所なのだ。 ビジネスアワーの平日の真っ昼間でさえ閑散としている。 ダウンタウンと呼べる地域は数ブロック四方と言った感じだ。 申し訳程度にいくつかのミュージアムが生えているが、 あれじゃあ客は呼べないだろう。 実際観光のみに来るものなどほとんどいやしない。 レストランやクラブなど繁華街に付き物のビジネスも ほとんどがそこで働く人たちのためのもの。 ショッピングなどは皆無だ。 れっきとした用事がない限り、足を踏み入れても何もない。 そこからさらに北へ5分の日本町など、 あまりの寂しさに身震いがするほどである。 私はここに来るといつも「越冬ツバメ」を口ずさんでしまう。 大手日系スーパなどは最初からこの町を見限ったのか、 全然別の場所に居を構えている。 そこへ行くとサンフランシスコは違う。 1年中観光客で賑わっている。 車でたった1時間の距離なのに 天候も雰囲気も活気も別天地のようだ。 車はいつもにぎやかにクラクションをならし、 道ばたに隙き間を見つければ前に後ろに車をぶつけながら駐車をし、 私のようにサンノゼから上京した田舎ものはすぐに中指を立てられてしまう。 これだけの大都会に生息するせいか、 毛髪なども普通の遺伝子にはあり得ない色をされている方も多いし、 学校に行けば「うちのお母さんもお父さんも両方お父さんなんだよ」 というわけのわからない子供も少なくない。 サンフランシスコに住んでいる人たちはとても鼻が高い。 「ちょっと自分は人と違う」と言いたい人たちも多い。 皆がそう思っているので結局人と同じになっていることには気がついていない。 そして会話の中に「サンフランシスコ」という単語が、 1分間に平均10回は登場する。 そこへ行くとサンノゼという単語は会話の中に登場しない。 言ってもわかってもらえなかった哀しい過去のせいか、 「シリコンバレー」とか「サンフランシスコのちょっと南」 などといってお茶を濁す。 あまつさえ市そのものだって未だにこの町を 「サンホゼ」なのか「サンノゼ」なのか「サンホセ」なのか はっきり発音を定めていないくらいだ。 いい加減なものだ。 ところで居住歴14年の私の印象は、 サンノゼは甲府市に似ている、ということだ。 思い切り独断だが、甲府市周辺の人間のお墨付きだから あながち思い込みだけではないだろう。 武田信玄の像もないし、ほうとうも売っていないが 現在姉妹都市の岡山市はその座を譲ったらいいのではないか。 私は自宅学習でネットの「甲州弁講座」を見ながら学習しているが、 ドライブをしながら覚えたてのフレーズをつぶやくと とてもしっくりとくるのだ。 3年前、そんなサンノゼに何を思ったか ヨーロッパ調のショッピングセンターができた。 住民が誇る、街の自慢「サンタナロウ」だ。 どこへ行っても駐車の心配のないこの町で 週末のこの場所だけは駐車探しに殺気だっている。 都会感を味わえる唯一の場所だ。 しかしここはダウンタウンからは残念ながら離れている。 ゆうべ私は子供達を連れてダウンタウンに行った。 サンノゼ冬の名物「クリスマスパーク」だ。 ここはぜひとも夜に訪れてほしい。 昼間はあまりにもお粗末だからだ。 それぞれのブースでくるくる回っている、 素人まるだし風味の手作りパペットやマネキンが 私たちに冬の底冷えを思い切り感じさせてくれる。 夜ならばそれなりにライトアップされて クリスマスの雰囲気を味わえるし、 マネキンやパペットもおどろおどろしい雰囲気をかもし出すのだ。 そんな作り物でも毎年喜んで繰り出す我が子たちが ちょっぴり不憫だったりするが、まあそれはいい。 そして私はそんなB級のこの街が好きだ。 どうしても何をしても洗練されないこの街を、 こんなに健気な場所を、誰が嫌いになれるだろうか。 そして「だっさー」と言われて苦笑いをしながら 実は全米3位と言われる住居費の高さを密かに保持する、 その根性の悪さもまたサンノゼのいいところだ。 いつか、必ず、引っ越してやるぞ。見ておれ。

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