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2010.12.14
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カテゴリ:本の話
おばあさんはしきりに、からだで覚えなさい、といった。踵にさわる感じで、着丈のちょうど良さがわかる。ふくらはぎへ纏いつく感じをおぼえれば、裾のしまり具合がわかる。腰の何処へ紐をわたせば、きりりと軽快に感じるか。どんな強さにしめればいいか。みんなからだで覚えてしまえ、という。

大正時代の東京の下町を舞台に描かれた、自伝的要素が強い幸田文最後の小説。
ずっと読みたかった作品でした。

主人公「るつ子」が、少女から一人の女性に成長していく過程が、彼女がその人生の折々に"何を、どんな風に着ていたか"を克明に追うことで、見事に表現されてしまうことが驚き。
今も昔も女性にとって、装うことの意味はかくも大きい…

人一倍、きものの着心地にこだわりを持つ「るつ子」の性分と鋭い感性は、強烈な観察眼や価値観を持った作者自身を投影したものでしょう。
きものの細かい描写にとどまらず、人々の心の機微や暮らしぶりにも、その眼は容赦なく向けられます。

「坂の上の雲」の時代からしばらく経った頃の日本人は、どんな風にものを考え、暮らしていたのか…という点からも、面白く読めた一冊でした。
着るものも、手土産一つ選ぶにも、どれほどの気働きと知恵を使っていたか。「るつ子」の生活の師匠となる、おばあさんの教えは心に響くものばかり。

やがて「KY」などという乾いた表現につながっていくことになる、日本人の「場にふさわしく行動しなければならない」という思考習慣の源流を見た思いです。

現代では、私達にとって、数多くあるファッションの選択肢の一つとなった着物。
そうではなかった時代、主婦にとって、家族の着物を過不足なく整えることが重大任務だった当時。
季節の衣替えや、よそゆき着とふだん着の区別、嫁入り支度といったものがどれほどの重みを持っていたか。
それは常に、世間の目という試験に合格し続けなければいけない大仕事だったのですね。昔のお母さんはつくづく偉かった!



娘である青木玉さんの著作によって、作者自身の着物の好みを知ることが出来ます。

女性は皆、着せられていた子どもだったのが、脱がされることでおとなになるんですねぇ。





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最終更新日  2010.12.14 11:30:40
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