2009/02/10(火)10:47
冷たい校舎の時は止まる: 辻村深月
雪が降っていること以外はいつもと変わらぬ朝のはずだった。
8人の生徒が登校し教室に集まってきたが、何かが変だった。
ほかには誰も登校してくる気配がないし、教師もいない。
外に出ようとしても、なぜか一階のドアも窓も開かない。
8人は雪の降りしきる冷たい校舎に閉じ込めらた。
その中で8人は気づく
二ヶ月前に自殺した、級友の名前を思い出せないことに。
いつの間にか時計は5時53分で止まっていた。
それはクラスメートが自殺した時間だった。
この作品はメフィスト賞受賞作です。読んでみて、すごい新人が現れたと思いました。
上・中・下と分かれている理由は結局わかりませんが、ちょっと長いです。
その理由は登場人物8人それぞれの素顔や心に抱えるものを丁寧に描き出そうとしているからです。
私は途中で何回か休憩しましたが、これを一気に読もうとするとちょっとつらいかもしれません。
でもとにかく面白いです。先を知りたくて知りたくてどんどんページを繰る、という感じです。
最後に描かれる人の過去の物語がいいので、そこは疲れていない状態で読んでほしいと思います。
この作品には高校生の抱える不安や悩みが、みずみずしく描かれています。
雪の中を登校するシーンだけでも、自分の高校時代にもそんなことがあったような気がしてくるし、次第に、多感な時期の揺れ動いていた自分の心を思い出して、彼等の気持ちに近づきながら読んでいました。
高校生たちが学校に閉じ込められていくという不思議な状況にすっかり引き込まれていると、その後時計が動き出してからはホラーと言ってもいいくらい、かなり怖いです。
そして全員の過去や思いが明らかになったときに謎は解明されるわけですが、それは見事で感動的でさえありました。
そこまで長い道のりだったのに、読み終えてしまうのが寂しい気持ちにさえなりました。
ただ、作者と同じ名前の人物が作中に登場するのはなぜでしょう。探偵役というわけでもないし、作者の写真も見てしまうと、微妙に気になってしまいました。
ご自分を投影させているのかも。
青春小説が好きで、長くても大丈夫な人にはおすすめです。
とにかく何も考えずに読んでみてほしいと思います。
私は次作を読みたいです。
冷たい校舎の時は止まる(上) : 辻村深月
冷たい校舎の時は止まる(中) : 辻村深月
冷たい校舎の時は止まる(下) : 辻村深月
2007年文庫化されました。
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