ミステリの部屋

2005/08/26(金)18:07

メイン・ディッシュ:北森鴻

日本ミステリ(か行作家)(40)

ネコさんとミケさん、この二人は雪の日に出会って一緒に暮らし始めました。 ネコさんは劇団「紅神楽(こうじんらく)」を主催する女優の紅林ユリエ、 そしてミケさんとは、玄人はだしの腕前でおいしい料理を作りながら、名推理で色々な謎をといていく三津池修です。 ネコさんと一緒に劇団を始めた座付き作者の小杉は大の推理マニアなのですが、こちらは迷推理。 騒動を巻き起こすけれど憎めないキャラクターです。 そして、劇団が遭遇する謎を見事に解いたミケさん自身にも、どうやら謎がありそうなのですが……。 まず、これは連作短編集と言っていいのだろうか、と思うでしょう。 挟み込まれた一見何の関連もないようなストーリー、その意味は後にわかります。 そして、この作品は料理抜きには語れません。 料理というものがいかに人の心を掴むものか、暖かさを伝えるものかを強く感じます。 ミケさんがどこの家庭にでもあるような材料を使って作る料理は本当においしそう。 空腹時に読んだら、きっとおなかが鳴ります。 私が一番食べたくなったのが、中身がわからないという不思議なフリッター。 それを食べる時の描写は次のようです。 揚げたてに山椒塩を軽くまぶして食べると、そのクニクニした舌あたりが、口内でタップを踏んで、 「ホヘ、ハヘ、アフフ」と誰もがうれしい悲鳴をあげる こんなおいしい描写がたくさんあるんですから、これはきっとそのうちに作ってやるぞ、とか、誰かに作ってほしいと思ってしまいます。 各章のタイトルも料理にちなんでつけられています。 アペリティフ ストレンジ テイスト アリバイ レシピ キッチン マジック バッド テイスト トレイン マイ オールド ビターズ バレンタイン チャーハン ボトル"ダミー" サプライジング エッグ メイン ディッシュ このうち「バッド テイスト トレイン」だけは読んだことがありました。その中には池波正太郎さんの『食卓の情景』という作品が登場します。 そういえば池波さんの作品にも料理がたくさん出てきます。 料理へのこだわりがあるというところに共通点がありますね。 それから、聞いたところによると、文庫化する際に最後に「特別料理」というものが加筆されたというではないですか。 それも是非読みたいので捜したいと思います。  メイン・ディッシュ : 北森鴻 食卓の情景改版 : 池波正太郎

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