ミステリの部屋

2006/01/06(金)19:41

サム・ホーソーンの事件簿(1):エドワード・D.ホック

海外ミステリ(33)

サム・ホーソーンとは、アメリカを代表する短編の名手エドワード・D・ホックの数多いシリーズ・キャラクターの中の一人です。 老境に達した医師、サム・ホーソーンが、訪ねてきた友人をお神酒で歓迎しながら、自分が過去に遭遇した奇妙な事件の思い出を語るという連作短編集です。(最後にノンシリーズの短編「長い墜落」も収録。) 一つ一つの話が短いので、寝る前に一つとか、ちょっとしたあき時間に少しずつ読みました。 彼が語るのはすべてノースモントの町でおきた不可能犯罪です。 たとえば『有栖川有栖の密室大図鑑』で紹介されていた「投票ブースの謎」 三方が壁、残る一方はカーテンが引かれ足から下が見えている投票ブースで、ある人物が刺し殺される。ブースに近づいた者は誰もいない上に、凶器も見つからなかったという事件。 私が気に入ったのは、ジャック・フットレルの名作「十三号独房の問題」に挑戦した(?)「十六号独房の謎」 どんな留置所からも脱獄してみせると豪語する詐欺師が逮捕される。だが、十六号独房に閉じ込められたはずなのに、彼は真夜中に姿を消していた。独房にも留置所の入口も鍵がかけられ、入口を保安官が見張っているという状況下で。 他にも、土に埋められたタイムカプセルの中にいつの間にか死体が入っているという事件や、飛行機の上で手を振ってパラシュートで降下した男が、地上におりたときには絞殺されていたという事件など、よくネタ切れにならないと思うくらいのバリエーションです。 しかも、サム・ホーソーンの事件簿は4作目まで刊行されているようです。 (訂正……4作目、『サム・ホーソーンの事件簿〈4〉』は創元推理文庫から、1月22日発売予定です。) 毎回、前振りから本題、さらに次の話の予告というパターンで話が展開します。 都会は性に合わないと、マサチューセッツ州とコネティカット州の州境にあるノースモントという小さな町に診療所を開業したサム・ホーソーンですが、回が進むにつれ、時間も少しずつ経過しているので、新参者だった彼が、次第に町になじんでいくところがよくわかります。 読み手もだんだんこの町や住む人になじんで愛着を感じるようになります。 えらく不可能犯罪の多い町ではありますがw また、1920年当時の、禁酒法が施行された頃の風俗も描かれていて、その当時ののどかな雰囲気も魅力です。 ところで、つまらないことですが、毎回サム老医師が客に薦めるお酒を、「お神酒(おみき)」と言うのが気になりました。 原作ではどういうお酒なのでしょう。  サム・ホーソーンの事件簿(1) :エドワード・D.ホック

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