ミステリの部屋

2006/08/08(火)23:34

向日葵の咲かない夏:道尾秀介

日本ミステリ(ま行作家)(38)

『背の目』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビューした、道尾秀介さんの受賞後第1作です。 柴田よしきさんのブログをよく覗いていますが、(まめに作られるお弁当の記事も参考にさせていただいています。)、カテゴリー「こんな本を読みました。」の中にこの作品がありました。 ネタバレしないでレビューを書くのが困難といいつつ紹介されている文をみて、読みたくなりました。 明日から夏休みという終業式の日、小学校を休んだS君の家に、先生から預かった宿題を持って行った僕は、S君が家の中で首を吊っているのを発見する。 慌てて学校に戻り、先生が警察と一緒に駆け付けてみると、なぜか死体は消えていた。 「嘘じゃない。確かに見たんだ!」 その夜、混乱する僕の前に、S君はあるものに生まれ変わって現れ、訴えた。 ……僕は、殺されたんだ。 半信半疑のまま、僕と妹・ミカはS君に言われるままに、真相を探る調査を開始した。 最初はジュブナイルの趣で始まるこの作品ですが、どこか郷愁をさそう雰囲気から、あっという間にホラーの世界へ入っていきます。。 ひたすら黒く、いえ、どす黒く、気持ちが悪く、どう考えても私の苦手なタイプでした。 でもやめられないのです。 どこか麻耶雄嵩さんの「神様ゲーム」(感想)を思い出していました。 子供が主人公だというところも、嫌だけどやめられないところも……。 そして、後半はホラーに、しっかりとミステリが絡みだします。 本格です。 思わせぶりな記述が頭を混乱させて、疑心暗鬼になっているところに、ラストに向けての暴走のような展開で、散りばめられた謎が収束していきます。 壊れた世界と終わらないどんでんがえしがすごい。 これは読み返して検証したくなります。 でも、もう読みたくないという葛藤もありました。 凝った作りで、とにかく読ませる物語でした。 でも、柴田さん、私は希望を見失ったようです。  向日葵の咲かない夏 :道尾秀介

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る