ミステリの部屋

2006/11/06(月)17:53

米澤穂信講演会に行きました

ミステリ関連(58)

早稲田大学の学園祭で行われた米澤穂信さんの講演会に行ってきました。 ワセダミステリクラブ主催で、代表の質問に答えるという形式で行われました。 作品に関してはネタバレ全開で、突っ込んだ質問にも丁寧に答えておられましたが、ネタバレにならない部分を、メモを元に少しだけお伝えします。 録音したわけではないので、米澤さんの言葉通りではありません。 Q お好きなミステリについて教えてください。 事前にアンケートをいただき、優れているとかベストではなく「好きな」でいいということで挙げさせてもらいました。 泡坂妻夫『煙の殺意』………短編集で「椛山訪雪図」が美しくてベストだと思っていましたが、最近読み直してみると「狐の面」がいいんですよ。それは私の出自に関係があるのかもしれませんが。 岡嶋二人『ツァラトゥストラの翼』……ゲームブックというものを知らない方もおられるかもしれませんが、一時かなりはやりました。これは偉大です。思いついても普通はやらないと思います。 横溝正史『三つ首塔』……半ば冗談で挙げさせてもらったけれど、冗談にならないかもしれません。(ピュアな少年には刺激的で)大人の物を盗み読むという体験でした。文体や教養も大人のものでした。 アントニー・バークリー『最上階の殺人』……『毒入りチョコレート事件』は好きですが、今回はこれを挙げます。半分以上冗談です。この作品はミステリファンをバカにしているところがあります。ミステリをメタに扱っていて面白い。裏をかかれます。 デアンドリア『ホッグ殺人事件』……デアンドリアの作品はこれしか読んだ事がありません。ミステリにすれた読者は仕掛けを見抜いてしまうような気がします。自分はサプライズ重視ではないので、こういうものに憧れます。 マイクル・Z・リューイン『沈黙のセールスマン』……主人公は中年でありながら少年を奥底に持っていて、でも生活に疲れています。諦観やペーソスという、今の自分には書けない味があります。とんでもない終わり方のまま十数年たちましたが、最近やっと続編がでました。 その後、米澤先生の各作品についてネタバレで詳しく語っていただけました。 そのほかには…… 中学生の頃からノートの片隅に小説を書き始め、高3には650枚以上になっていました。これ以上の長さものは未だに書いていないんですよね。内容がポリス・アクションだったのでリメイクする気持ちはありません。 影響を受けた日常の謎を書かれる作家としては倉知淳さん(でも猫丸先輩シリーズの1作目と2作目は殺人も起きるんですよね。)そして北村薫さんの『六の宮の姫君』はミステリーでこんなにもすごいことができるんだと……。大事にしています。 好きな名探偵は都筑道夫さんの物部太郎と猫丸先輩です。 この二人は本当に働かないんですよ。 文化祭の体験としては、クラスでビデオ映画を上映することが決まり、進んで脚本を書きましたが、当日は校舎のすみっこで本を読んでいました。 ミステリは理で割り切れていくから好きです。そして必ずしもそれだけでは終わらないところも。 『春季限定…』におけるココアの作り方は実体験に基づいたものです。 ココアを作ろうとしたときに、ラーメンを作った鍋が流しにあるという状況がありました。 ここで鍋を洗ってまでココアを作りたいのか、と考えて(笑)、そこから生まれた話です。 ほかにも取材については『夏期限定…』のためスイーツを食べ過ぎて栄養失調になったこと(夏の食欲のないときに甘い物を食べると食事が入らないため)。女子大生ばかりの中でパフェを食べて写真を撮らせてもらったこと。 『ボトルネック』では一泊二日で金沢・東尋坊を回るハードな取材をしたことなどの話もありました。 その後会場からの質問もたくさん手が挙がりました。 そのうちの一つ Q『夏期限定…』は衝撃的でしたが、次作はいつごろ出ますか? 直球ですね。(胸に手をあて)デッドボールかもしれません(笑) 連載を考えていましたが、関係各位と相談した結果書き下ろしの方が早く出せるのではないかということになりました。 来年の………夏…………ひぐらしが鳴く頃には…(会場笑) ということでした。 米澤先生は柔らかな語り口で、質問には丁寧に答えられるし、メチャメチャ感じが良い方なんですよ。 正確に答えようという誠実さが伝わってきましたし、笑いも交えながらの楽しい講演会でした。 絶対これからも応援しますよ! 講演会終了後にはサイン会もあったのですが、私はその後プロバスケットの試合を見に行く予定だったので、ダッシュで駅に向かわなければならず、残念でした。 本当は私のミスでダブルブッキングぎりぎりのスケジュールだったのですが、講演会をあきらめなくて良かったと心から思いました。

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