ミステリの部屋

2007/02/17(土)12:20

図書館戦争:有川浩

日本ミステリ(あ行作家)(52)

以前友人に薦められて読んだ有川さんの作品は『海の底』(感想)。横須賀にザリガニの怪物が上陸するというとんでもない設定でした。 今回も、図書館員が武装して銃撃戦を繰り広げるというかなりとんだ設定です。 図書館に掲げられている『図書館の自由に関する宣言』を見かけたことがありますか? 私は気づきませんでした。 一、図書館は資料収集の自由を有する。 二、図書館は資料提供の自由を有する。 三、図書館は利用者の秘密を守る。 四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。 図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。 (実際の宣言はもっと詳しい内容も書かれています。) 有川さんはこれを見て作品の構想を得られたらしいです。 これがこの作品の各章のタイトルになっています。 正義の味方、図書館を駆ける! ―公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として『メディア良化法』が成立・施行された現代。 超法規的検閲に対抗するため、立てよ図書館! 狩られる本を、明日を守れ。 『メディア良化法』の制定を受けて良化特務機関は図書の検閲を行い、武力を行使して違法な図書を没収するようになりました。図書館側は図書隊という防衛組織を結成してこれに対抗しています。 なぜ図書館が武装しなければいけないのか、という事情がすんなり納得できたわけではありませんが、組織の内実や軍事訓練の様子などの描写が詳しいのでリアルに感じられ、グングン引き込まれていきました。 読みやすいのは、登場人物のキャラクターがはっきりしているからでもあります。 主人公の笠原郁は、新人図書館隊員で日々軍事訓練に励んでいます。 身長170センチで体育会系、直情型で考えるより先に行動してしまうので失敗も多く、叱られてばかり。 そんな郁を指導する上官が、正義感、判断力にすぐれ熱い心を持つ鬼教官・堂上と、笑い上戸だけれどクールな小牧。 そして、情報通で口は悪いが美人の友人・柴崎、融通が利かない同期のエリート隊員・手塚。 この5人を主要人物に据えたのは、有川さんによれば、行政戦隊図書レンジャーのノリらしいです。 本を守るために命を懸けて戦う、という厳しい状況が描かれながら、この作品は青春ドラマのイメージがありました。 郁が防衛隊員を希望したのは、高校生の時に没収されそうになった時に本を取り戻して助けてくれた図書隊員、つまりに「王子様」に憧れたからです。 叱られてばかりの上官と新入隊員の関係は部活のようで、恋の雰囲気もあり……。 ライトノベルに慣れている人なら大丈夫でしょうが、そうでなければ甘酸っぱさに戸惑うかもしれません。 私は少しだけ気恥ずかしく……でも、とにかく面白くて一気に読んでしまいました。 それに、本が好きならばその気になります。 本を読む自由を守らなければ!と。(結構入り込んでいますw) またまた、薦めてくれた友人に感謝!   図書館戦争 : 有川浩 すでに続編も出ています。  

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