ミステリの部屋

2007/06/27(水)19:42

中庭の出来事:恩田陸

日本ミステリ(あ行作家)(52)

瀟洒なホテルの中庭。こぢんまりとしたパーティの席上で、気鋭の脚本家が不可解な死を遂げた。 周りにいたのは、次の芝居のヒロイン候補たち。 芝居とミステリが融合し、まったく新しい恩田ミステリの幕が開く―。 (「BOOK」データベースより) 私の家で、マトリーシュカちゃんと呼んでいた人形を思い出しました。 娘がまだ小さい頃に、おじいちゃんが買ってくれたもので、娘のお気に入りでした。 中が空洞になっていて上下にはずれて中から少し小さい人形が出てくるのです。 その人形のなかにはさらに小さな人形が、と言うことが4、5回くりかえされます。 この作品はそのマトリーシュカちゃんに似ています。 つまり入れ子構造ということです。 面白い不思議な感覚を味わうことができました。 これだけで済ませたいけれど、そうもいかないので少しだけ丁寧に書いてみます。 大まかに言うと、三つの話が交互に進んでいきます。 「中庭にて」 ホテルの中庭が隠れ家のようになっているカフェ・レストランで、二人の女優が亡くなった脚本家の死の真相について話しています。 「旅人たち」 年配の男と若い男が、深い山に中をどこかを目指して歩いていきます。 『中庭の出来事』 三人の女優たちがオーディションを受けています。その芝居の脚本を書いたのは「中庭にて」の亡くなった脚本家です。 同じようなでき事が繰り返されるけれど、固有名詞があったりなかったりして、だんだん不安になります。 これは現実なのか? それとも劇の中のできごとなのか? それとも劇の中に出てくる劇の中でのできごとなのか? わからなくなってきます。 内側の話だと思っていたら、いつの間にか外側になっていたり、外側が内側になっていたり、 中庭がぐるぐる回りだす場面があるのですが、読んでいる私もまさにその状態です。 めまいを感じる作品でした。 ところが最後には全てにすっきり結末がついていることがわかります。 でも、それがわかるまでに、私には少し時間がかかりました。 わかったと思いました。 ところが、あれはどうだったんだろう?とまたいつの間にか考え続けています。 めまいは今も続いているようです。 この話がケータイ文庫で配信されていたなんてとても信じられません。  中庭の出来事 : 恩田陸

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