2008/02/24(日)00:12
つくもがみ貸します:畠中恵
江戸の片隅、姉弟二人が切り盛りする「出雲屋」。鍋、釜、布団、何でも貸し出す店ですが、中にはちょっと妙な品も混じっているようで……妖怪たちが引き起こす騒動の数々、ほろりと切なく、ふんわり暖かい連作集。
(出版社 より)
序/利休鼠/裏葉柳/秘色/似せ紫/蘇芳
「しゃばけ」シリーズの作者、畠中さんの時代小説です。
今回は深川で小道具屋兼損料屋を営む姉弟が主人公の連作集。
損料屋というのは、鍋や布団に着物にふんどしまで、色々な品を貸し出すという便利なお店です。火事が多い江戸では、物をたくさん持っていても失いやすく、逃げる邪魔になるというので、こういうお店が結構多かったようです。
出雲屋は、お紅と清次の姉弟でやっている ごく普通の小さな小道具屋兼損料屋です。
ところが、商いが終ると誰もいないはずの部屋に一つ、また一つ奇妙な声が聞こえてきます。
この声の主が、影の主人公である「付喪神」(つくもがみ)です。
生まれて百年を経ると、器物の中には付喪神になるものもあるとか。
妖(あやかし)として力を得て、口をきくこともできるのです。
これは「しゃばけ」シリーズを読んだ人にはもうおなじみだと思いますが、違うのは、登場する根付や煙管や掛け軸の「付喪神」たちが決して人と口を利かないこと。
プライドが高く気難かしいのではないかと思えますが、実は仲間の付喪神とのおしゃべりができる出雲屋での暮らしを楽しんでいるようです。
姉弟は「付喪神」が話をすることをとっくに承知しているのですから。
好奇心旺盛なのを利用して、色々なところに貸し出しては、謎を解くための情報を集めたりもします。
謎には持ち込まれるものもありますが、お紅が探し続けている蘇芳の香炉とその持ち主のことが気になります。
清次は人は好いけれど、思っていることがすぐ顔に出たり、付喪神に言われることに腹を立てて道具を乱暴に扱うところが子供っぽいと感じました。
でも考えてみたら、昔の人は、ごく若いころから大人として扱われるんですよね。私の方が未熟でしたw
章題に合わせた扉絵の色も素敵なこの本。
恋の行方がどうなるのかやきもきしますが、何やら春を思わせる風が……♪
つくもがみ貸します:畠中恵