2008/12/17(水)23:42
七姫幻想:森谷明子
遙か昔から水辺に住み、日ごと機を織る美しい女たち。罪の匂いをまとう織女をめぐり、物語が密やかに始まる。時を超えて語られる織女伝説ミステリー。
(「BOOK」データベースより)
ささがにの泉/秋去衣/薫物合/朝顔斎王/梶葉襲/百子淵/糸織草子
たなばたの織女伝説をモチーフにして、七人の姫と和歌をからめた連作短編ミステリーです。
その姫たちとは……秋去姫、朝顔姫、薫姫(たきものひめ)、糸織姫、蜘蛛姫(ささがにひめ)、梶葉姫、百子姫。
万葉集や源氏物語など、様々な日本古典文学を織り込みながら、話は平安から江戸へと進んでいきます。
悲しい恋、陰謀、残酷な結末なども描かれるけれど、そんな中で乙女のように胸をキュンとさせてくれる「朝顔斎王」が、とてもいとおしい話でした。(女性は いくつになってもキュンとなれるのだと断言しますw)
それぞれの短編の最後には、和歌や句が添えられています。
たとえば
君こずは 誰に見せまし わがやどの かきねにさける 朝顔の花
(拾遺和歌集 詠み人知らず)
のように。
歴史や古典に興味がある人ならば、一層楽しめるでしょうが、私のように詳しくない者でも、すっかり物語に惹き込まれました。
歌から連想して紡がれていった話なのでしょうが、全体に通じるもう一つの物語もあって、構成とバランスの良さに感心しました。
創造された世界は豊かで、うっとりするほどです。
同じ作者の時代ものですが『千年の黙』(感想)よりも、好きでした。
これはおすすめです。
七姫幻想 :森谷明子