ミステリの部屋

2008/12/17(水)23:42

七姫幻想:森谷明子

日本ミステリ(ま行作家)(38)

遙か昔から水辺に住み、日ごと機を織る美しい女たち。罪の匂いをまとう織女をめぐり、物語が密やかに始まる。時を超えて語られる織女伝説ミステリー。 (「BOOK」データベースより) ささがにの泉/秋去衣/薫物合/朝顔斎王/梶葉襲/百子淵/糸織草子 たなばたの織女伝説をモチーフにして、七人の姫と和歌をからめた連作短編ミステリーです。 その姫たちとは……秋去姫、朝顔姫、薫姫(たきものひめ)、糸織姫、蜘蛛姫(ささがにひめ)、梶葉姫、百子姫。 万葉集や源氏物語など、様々な日本古典文学を織り込みながら、話は平安から江戸へと進んでいきます。 悲しい恋、陰謀、残酷な結末なども描かれるけれど、そんな中で乙女のように胸をキュンとさせてくれる「朝顔斎王」が、とてもいとおしい話でした。(女性は いくつになってもキュンとなれるのだと断言しますw) それぞれの短編の最後には、和歌や句が添えられています。 たとえば 君こずは 誰に見せまし わがやどの かきねにさける 朝顔の花 (拾遺和歌集 詠み人知らず) のように。 歴史や古典に興味がある人ならば、一層楽しめるでしょうが、私のように詳しくない者でも、すっかり物語に惹き込まれました。 歌から連想して紡がれていった話なのでしょうが、全体に通じるもう一つの物語もあって、構成とバランスの良さに感心しました。 創造された世界は豊かで、うっとりするほどです。 同じ作者の時代ものですが『千年の黙』(感想)よりも、好きでした。 これはおすすめです。 七姫幻想 :森谷明子

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