2009/01/28(水)20:10
賢者はベンチで思索する:近藤 史恵
<あらすじ>
ファミリーレストラン「ロンド」を舞台に展開する謎の事件。
不可思議な老人は 21歳の女の子の人生にとって、とてもたいせつなものを与えてくれた。
それは常識によらず、人を信じる力。
犬と老人と21歳の女の子が挑むミステリー。
(「BOOK」データベースより)
ファミレスの老人は公園で賢者になる/ありがたくない神様/その人の背負ったもの
21歳の久里子は、家の近くにあるファミリーレストラン「ロンド」でアルバイトをしています。
「ロンド」には、店があまり混んでいない時間帯に、いつも同じ席に座る 国枝老人がいます。彼は 少し痴呆の症状が出ているようです。
ところが、彼は公園のベンチで出会ったときだけ賢者になって、久里子の身の回りで起きる謎を解く手伝いをするのです。
三つの事件は、日常の謎から、いつしか大きな謎へとつながっていきます。
服飾の専門学校に通ったものの、希望の会社に就職できないで フリーターをしていること、引きこもり状態の弟のこと。
久里子が ちょっとしたきっかけで不安になったり、自分だけが取り残されているような焦りを感じる気持ちが、きめ細かく描かれているので、思わず「わかる、わかる。」とうなずいていました。
生きるのがへたな人の心も、少しだけふわっと軽くしてくれるような作品です。
「そう、悪いことより、いいことの方がたくさん起こる。それに、こう考えておきなさい。いいことが起こっても、次に悪いことが起こるとは限らない。反対に悪いことが起これば、次はいいことが起こるんだ、とね」
賢者はベンチで思索する