ミステリの部屋

2010/03/17(水)21:58

聖女の救済:東野圭吾

日本ミステリ(は行作家)(42)

男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていたその妻には 鉄壁のアリバイがあった。 草薙刑事は 美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。 湯川が推理した真相は ―虚数解。 理論的には考えられても、現実的にはありえない。 内容(「BOOK」データベースより) これも、大分前に読みました。 短編集「ガリレオの苦悩」と同時に刊行されたもので、こちらは長編です。 前回の事件以来、警察とは距離をおくようになっていた湯川は、「草薙さんは恋をしています」という内海の一言に、興味を示します。 容疑者に惹かれていくなんて……草薙は冷静さを失いはしないのですが、やはり、活躍は内海に譲ることに。 彼女は今回、なかなかのキレ者でありました。 私は、ミステリを読んでいて、犯人側に立ってしまうことも多いのですが、今回も内海刑事の、女性ならではの観察力の鋭さとしつこさが、怖くなりました(笑) 犯人も、動機も、早いうちに明かされるのですが、「どうやって」犯行に及んだのかということが、なかなかわかりません。 ハウダニットで最後まで引っ張っていく力は、さすがに東野さん、と思わされます。 湯川が出したのは、虚数解、「理論的には考えられても、現実的にはありえない。」という答。 まさにその通りです。まともな思考では考えられません。 タイトルの意味も最後にわかります。驚き、切なくなりました。本当にそれだけの価値があったのでしょうか! 情念とも呼べそうな、ここまでの意志の強さは、女性でないと理解できないかもしれませんね。     

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