ミステリの部屋

2010/09/23(木)00:07

ルイザと女相続人の謎:アンナ・マクリーン/藤村裕美

海外ミステリ(マ行作家)(7)

「ジョーという名前のヒロインの物語はいったい、どんな話になるかしら…」 1854年、ボストン。 作家を目指すルイザ・メイ・オルコットは、つい先日ヨーロッパから帰国した友人 ドロシーの死に接する。 検死の結果、彼女の死は他殺と判明。 ルイザは 独自に調査を開始するが…。 世界中で愛される名作 『若草物語』の作者オルコットを探偵役にした、大胆なミステリ・シリーズ第一弾。 内容(「BOOK」データベースより) あとがきにも書いてありましたが、最近は『若草物語』を読んでいない少女が多いかもしれません。 私が子どもの頃は、少女向けの本としては大変ポピュラーだったのですが。 何度かアニメ化&映画化されているので、内容は知られているのかな? ルイザ・メイ・オルコット作の『若草物語』は、南北戦争時代、牧師として出征した父の無事を祈りながら暮らす家族…優しく堅実な母とマーチ家の四人姉妹、メグ、ジョー、ベス、エイミーの物語です。 慎ましくも温かい家庭の雰囲気と、成長する少女たちの姿が描かれています。 また、自伝的小説ということで、男勝りで小説を書いている次女のジョーは、作者自身がモデルと言われています。 『ルイザと女相続人の謎』では、まさにそのジョーを思わせるような性格のルイザ・メイ・オルコットが、実は名探偵でもあった、という設定のミステリです。 物語は、作家として成功したルイザが、過去を回想するという形で始まります。 22歳のルイザは、新婚旅行から帰ったばかりの友人、ドロシーが亡くなり、しかも他殺らしいことを知ります。 旧家ブラウンリー家の女相続人だったドロシーを殺したのは誰なのか? 持ち前の推理力と行動力で、ルイザは独自の調査を始めます。 ところが、女性が一人で出かけるときには付き添いが必要だったり、帽子をかぶらなければならなかったり、それを守らないと不名誉な噂が広まったり。 この時代の女性は大変だったようです。 重要な社交の場であった舞踏会の様子や、社会的弱者のための施設、上流階級の生活から、貧しい者の暮らしまで、1850年代のボストンの様子が細やかに描かれ、歴史小説としての面白さも兼ね備えています。 それもそのはず、作者のアンナ・マクリーンは、別名義で何冊もの歴史小説を書いているのです。 上流社会の虚飾や、ドロドロした人間関係にあきれながらも、最後には悲しいできごとも優しい目線で振り返ることができる、しっかりしたミステリでした。 2作目『ルイザの不穏な休暇』、3作目『ルイザと水晶占い師』もすでに出ており、読むのが楽しみです。             

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る