身につけたいものがある。
仕事を探していた彼女が選んできたのは、なんと、フルコミッションの営業職だった。つまり、完全歩合給。契約が取れなければ、一円の収入にもならない。それを聞いたとき、一度は眉をひそめた。営業の世界は厳しい。今まで定型の仕事しかしてこなかった彼女にとって、それがどれだけつらいものになるか、想像したくなかったからだ。けれど、彼女の思いをよくよく聞いて、それが中途半端なものでないことに、心強い気持ちを覚えた。会社が保証している訳ではない、しかし魅力あると思える仕事にのぞむ決意を、強く持っていることが分かったからだ。 かくいう僕も、フルコミッションの営業に就いていたことが、何度かある。営業は面白かった。ひとかたでない稼ぎ方をしたが、当時お金の使い方を知らなかった僕は、結局浪費癖がついただけで終わった。お金の活かし方を、学ぶことがなかったのだ。それを考えると、今の彼女はいきいきしている。僕のした失敗とは、何を目指すかが明確でなかったこと。夢があってこその仕事なのだと、いまなら分かる。彼女は、すでに大きな目的を持っている。今の仕事は、そのための通過点だ。この仕事を通して、身につけたいスキルが沢山あるんだと目を輝かせて語る姿に、安心のようなものを覚えた。これから、予想もしない困難につき当たるだろうけれど、きっと乗り越えて大きな何かをつかむだろう、と。僕は、心から応援したいと思った。 そんな彼女に、メッセージを贈ろう。これが、僕からのエールだ。 1、数字に強くなれ。数字の意味を考えろ。2、友に学べ。うるさがられるほど、聞いて回れ。3、出会ったお客さんとは、一期一会。出会いを、大切にしよう。