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三角猫の巣窟

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純文学の小説を中心に読書録を書いています。基本的にネタばれしています。
小説の構成や描写技法を中心に考察しているので、小説家を目指す人にとっては参考になる部分もあるかもしれないし、小説家を目指すつもりでない人も次に読む本を選ぶ参考程度にはなるかもしれません。
古いほう読書録はほとんどこのブログへの訪問者がいなくて日記代わりに雑感をメモしていただけなので他の人が読むほどの内容じゃないです。自分で読書録を読み返してもあらすじを思い出せない本があって、もうちょいあらすじなり特徴なりを詳しく書いておけばよかったと反省したので、最近は時間をかけてちゃんとレビューするようにしています。
いち本好きとして良いと思った小説は賞賛して悪いと思った小説は罵詈雑言を浴びせているのですが、小説の感想というのは個人の知識や価値観を反映させるので、結局のところ自分で読んでみないと意味がないのです。
ネットの中をさまよって偶然この読書録にたどりついた人は、面白いと賞賛しているのを読んでみたり、逆に罵倒している小説がそんなにつまらないはずはないと読んでみたりするのもよいでしょう。
この読書録がきっかけとなって他の人にも本が読まれることで、小説の発展にほんの少しでも貢献できればよいと思っているのです。

 ∧ ∧
(=‘ω‘ =)つお勧め本
辻原登『東京大学で世界文学を学ぶ』
辻原登『東大で文学を学ぶ ドストエフスキーから谷崎潤一郎へ』

評価基準:
★★★★★:感動したニャー
★★★★☆:技術や感性に芸術性があって面白いニャー
★★★☆☆:暇つぶし大衆小説程度ニャー
★★☆☆☆:描写技術や知識が出版に満たないレベルニャー
★☆☆☆☆:ゴミニャー

 ∧ ∧
(=‘ω‘ =)<Amazonのほしいものリストから私にギフトを送れるよ。
2019.04.15
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こないだ『プロメテウス』という映画を見たのだけれど、どんなウイルスや細菌がいるかもわからないのにウェーイ系乗組員がいきなり宇宙服のヘルメット外したり、調査が始まったばかりなのに船に帰ると言い出す奴がいたり、仕事が終わってないのに船内でいちゃいちゃする奴がいたり、未知の生物に不用意に手を出して噛まれる奴がいたりして、何兆円もかけた宇宙探索プロジェクトのわりにお前ら幼稚園児かよというくらい協調性や計画性のない自己中心的な馬鹿ばかりでひどいものだった。あまりにもひどかったので、なぜSF映画がつまらなくなるのか考えることにした。

●登場人物がだめ人間ばかりで魅力がない

・トラブルは見せ場になるけどだめ人間を見せ場にしてはいけない

SF映画では宇宙船の乗組員が順調に作業をこなしていたらたんなる作業映像になってしまって見せ場がない。そこで宇宙生物がいたり、天変地異が起きたりして、予想外のトラブルの対処にてんやわんやするのがSF映画の見せ場になる。しかしそのトラブルの原因を登場人物の性格に頼るのは安直なやり方で、宇宙を舞台にする必然性さえなくなるのでだめである。『アルマゲドン』のように急ごしらえの民間人チームなら不和や連携ミスが起きるのにリアリティがあるけれど、『プロメテウス』は企業が入念に準備した宇宙探索計画なのに命令を無視する馬鹿だらけでリアリティがない。
『ロックアウト』は宇宙の刑務所に大統領の娘が視察に行ったら囚人の人質にされる話だけれど、大統領の娘と同行する男が犯罪者との面会に銃を持ち込む馬鹿で、大統領の娘は救出に来た主人公に反抗して脱出ポッドに乗らない馬鹿で、対策チームはポンコツで通信が囚人に筒抜けで、刑務所は面会室から制御室までIDカードなしで直行できるという設計ミスにもほどがあるご都合主義の間取りで、囚人も無駄に人質を殺しまくる馬鹿で、そこまで馬鹿ぞろいにして不自然な状況を作らないと物語を展開できないならシナリオを作り直すほうがましである。
宇宙船は乗組員の人数が限られているので、少ない人数の中からできる限りエピソードを絞りだそうとする。乗組員が仲良くしていたらエピソードが生まれないので、乗組員同士の衝突を起こすために癖のある性格や経歴のキャラになりがちである。『プロメテウス』はロボットがいるのでいきなり人間を探査に向かわせなくてもロボットを先行させて安全確認をすればいいはずなのに、それをやらないのは人間が困っているところをエピソードにしたいからだろう。しかし主人公を含めて乗組員が馬鹿ばっかりというのではトラブルが起きても自業自得という感じになってしまって、頭の良い視聴者が共感するどころか愛想をつかしてしまうのでよくない。『インターステラー』の惑星に一人でいたメンヘラの人のようにピンポイントでだめ人間を使って物語の転換点にするほうがまだましである。
『パッセンジャー』は宇宙船で冷凍睡眠していたら機械の故障で予定よりも90年早く目が覚めてしまった男が気に入った女を無理やり起こして恋愛しようとしたらバーテンダーのロボットのせいで道連れにしようとしたのがばれる話で、主人公がだめ人間でロボットがポンコツでなかったら話が進展しないこと自体にシナリオに欠陥がある。
『第9地区』は地球に難民に来たエイリアンの話だけれど、シナリオの都合で変な液体を浴びることが必要にしても、進行役のエイリアン監視員の男が馬鹿だから変な液体を浴びたというのはご都合主義的な展開である。

・登場人物が活躍しないので魅力がない

基本的に宇宙船は高いし乗員も限られるのでエリートしか乗れない。『プロメテウス』の宇宙船のクルーは専門家ぞろいらしいけれど、専門的知識を披露して活躍する場面がまま自己中心的な行動をして失敗する場面だらけなので、まるで専門家に見えないし、専門家ならではのかっこよさがどこにもない。

・登場人物が成長しないので魅力がない

主人公が馬鹿というのは少年漫画にはよくあるけれど、少年だから馬鹿でもまだ許されるしその後にイニシエーションと精神的成長が待っているから成立するのであって、いい歳をした大人の宇宙飛行士が馬鹿だったら今まで何をやってきたんだという話になる。人間は失敗から学んで成長するけれど、だめな宇宙SF映画は失敗が死亡フラグになって失敗を反省して成長する前に死んでしまって、コイツ何しに来たんだという呆れた感じだけが残る。

・登場人物に動機がないので魅力がない

『エイリアン』は人命よりも金儲けを優先しようとする資本主義への批判や、アンドロイドを信用できるか否かという葛藤があったので、それが主人公のリプリーの行動の動機になっていて物語にリアリティがあった。しかし『プロメテウス』の主人公のエリザベスは仕事中に恋愛したりいきなり人類を救うだの言い出したりして場当たり的な動機しかなくて、科学者としての知性が感じられないだけでなく人間的魅力もまるでない。さらに巨人が人類を滅ぼそうとする動機についても不明なままで、エリザベスがこれから探すというオチで物語が終わっていて、作中で話が完結していない。『プロメテウス』はエイリアンシリーズの前日譚だそうだけれど、これでは単なる蛇足である。たくましいリプリーなら一人で何でもやるだろうけれど、エリザベスみたいなポンコツが一人で巨人の星に行ったところですぐドジ踏んで死ぬだろというようにしか思えないので、主人公がダメなせいで含みを持たせる終わり方が裏目に出てつまらなさを際立たせてしまっている。
『アルマゲドン』や『インターステラー』のように地球が滅亡するからなんとかしなきゃというのは動機には違いないれど、登場人物全員が同じ動機になってしまって個性がなくなるのはよくない。

●敵に魅力がない

いいフィクションというのは敵にも魅力があるものである。『プレデター』は宇宙から来た侵略者でありながら動機や個性を持っていて、強い相手を戦士として認めて最終的に人間とコミュニケーションがとれているところが面白い。『機動戦士ガンダム』シリーズは地球と月の人間が敵対する話で、敵も思想や個性を持つ人間だからこそ面白くなる。この敵の設定が突き詰められていないことが宇宙SF映画のつまらなさになる。
『エイリアン』シリーズは逃げ場のない宇宙船内で凶悪なゴキブリが繁殖するホラー映画みたいなもので、エイリアンは造詣は凝っているものの個体差がないので魅力がない。エイリアンが未知の存在だったからこそ体液が酸だとか人体に卵を産むとかの一つ一つの発見が面白さになるものの、エイリアンがどういう生物なのかというのが視聴者にばれると未知の生物に相対する面白さがなくなってシリーズを重ねるにつれてつまらなくなっていった。『プロメテウス』はエイリアンの前日譚としてすでに敵のエイリアンはどういうものか知っている人が見るので、何で今更そのネタやるのという既視感がつまらなさになる。『インデペンデンス・デイ』や『宇宙戦争』や『パシフィック・リム』のように地球外生命体が地球に侵略にくるパターンの映画は敵の素性や目的が不明なまま敵を全滅させて終わるので、敵の外見やギミックが違ったところで「侵略者」というご都合主義的でステレオタイプな存在になってしまって魅力がなくなる。
『パッセンジャー』は隕石で宇宙船が故障しただけで敵自体が出てこなくて宇宙船を直しておわりというあっけない終わり方になっている。『インターステラー』は過酷な環境でタスクをこなすのが見どころで敵がいない。こいういうのは宇宙はトラブルが起きるから怖いという話で、人間社会の問題から離れるのでテーマとしてつまらなくなる。
あるいは『アルマゲドン』のように直接的な敵は隕石なものの宇宙で奮闘する主人公を見殺しにしようとする政府関係者や軍人が間接的に敵になる場合があるけれど、権力者が敵になる場合は人物像の掘り下げが浅くてありきたりでステレオタイプな人物像になるし、間接的に敵になってもストーリーを盛り上げるために無理やり見せ場を用意した感じが出てしまってたいして見どころにならない。

●価値観の転換がない

いいフィクションというのは登場人物や視聴者に価値観の転換をもたらすことがある。正しいと思っていたことが間違っていたり、悪だと思っていたことが悪でなかったりして、登場人物たちは本当にこれでよいのだろうかと逡巡したりして、思想を深めて人間味を増していく。スタジオジブリの映画なんかは典型的で、『風の谷のナウシカ』で人類を滅ぼす敵だと思っていた腐海や蟲が実は環境を回復させているとわかってナウシカが人類と蟲の和解の仲介役をしたり、『もののけ姫』でアシタカは対立している人間ともののけの間に立って共存できる道を探してエボシを説得したりしている。
しかしだめなSF映画はうわー地球外生命体が攻めてきたーやっつけろー、うわー宇宙船のトラブルだー修理しろー、と敵を倒したり問題を解決したりしてそれで終わりで、主人公にも敵にも思想がない。思想がないので価値観がゆらぐこともなくて、登場人物が薄っぺらくなって演技もシナリオをなぞっている感じが出て嘘くさくなってつまらなくなる。正義は最後まで正義で、主人公は自己批判や反省をすることもなくて、悪は最後まで悪のままで、わかりやすい単調な展開なので何度も見返すような魅力がない。

●まとめ

だめなSF映画は登場人物の人間性を捻じ曲げてまで無理やりSF的な話を展開しようとして、人間の物語でなくなることがつまらなさになる。登場人物が苦境に直面したときに人間らしく苦悩して奮闘するからこそ人間である視聴者は共感して感動するのであって、地球外生命体や宇宙船やロボットとかのギミックが出てくるSF的な展開にしたら無条件で面白くなるわけではなく、その設定の中で人間が表現できていなければその設定にすること自体に意味がなくなる。結局は人間に向き合わないとよい物語は作れないのである。







最終更新日  2019.04.17 12:44:10
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