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三角猫の巣窟

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サイド自由欄


純文学の小説を中心に読書録を書いています。基本的にネタばれしています。
小説の構成や描写技法を中心に考察しているので、小説家を目指す人にとっては参考になる部分もあるかもしれないし、小説家を目指すつもりでない人も次に読む本を選ぶ参考程度にはなるかもしれません。
古いほう読書録はほとんどこのブログへの訪問者がいなくて日記代わりに雑感をメモしていただけなので他の人が読むほどの内容じゃないです。自分で読書録を読み返してもあらすじを思い出せない本があって、もうちょいあらすじなり特徴なりを詳しく書いておけばよかったと反省したので、最近は時間をかけてちゃんとレビューするようにしています。
いち本好きとして良いと思った小説は賞賛して悪いと思った小説は罵詈雑言を浴びせているのですが、小説の感想というのは個人の知識や価値観を反映させるので、結局のところ自分で読んでみないと意味がないのです。
ネットの中をさまよって偶然この読書録にたどりついた人は、面白いと賞賛しているのを読んでみたり、逆に罵倒している小説がそんなにつまらないはずはないと読んでみたりするのもよいでしょう。
この読書録がきっかけとなって他の人にも本が読まれることで、小説の発展にほんの少しでも貢献できればよいと思っているのです。

 ∧ ∧
(=‘ω‘ =)つお勧め本
辻原登『東京大学で世界文学を学ぶ』
辻原登『東大で文学を学ぶ ドストエフスキーから谷崎潤一郎へ』

評価基準:
★★★★★:感動したニャー
★★★★☆:技術や感性に芸術性があって面白いニャー
★★★☆☆:暇つぶし大衆小説程度ニャー
★★☆☆☆:描写技術や知識が出版に満たないレベルニャー
★☆☆☆☆:ゴミニャー

 ∧ ∧
(=‘ω‘ =)<Amazonのほしいものリストから私にギフトを送れるよ。
2020.07.05
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カテゴリ:教養書

疾病予防などの衛生学・公衆衛生学について書いた本。

●面白かったところのまとめ

・消毒、滅菌、浄水、し尿処理などの衛生に関する知識や技術の体系が衛生学で、日本では第二次世界大戦までは主に衛生学、戦後の占領政策でアメリカ流の公衆衛生学が医学校に導入された。

・狩猟採集漁労社会の650万年前から1万年前までは新生児の死亡の問題にシャーマニズムで対処して、農耕牧畜社会の1800年頃までは腸炎、寄生虫、肺炎、疫病の問題に宗教や家庭医療で対処して、工業社会の1970年までは栄養失調、性病、結核、職業病の問題に環境浄化や医学で対処して、脱工業化社会の1970年以降は生活習慣病、加齢性病変、遺伝病、精神障害の問題に医学の専門分化と総合化やQOL技術で対処した。

・公衆衛生活動の基本は5つ。1、国勢調査、人口動態統計、患者調査、国民健康・栄養調査、国民生活基礎調査、業務上疾病調査、学校保健統計などの統計でその集団の特徴、生活、経済、罹病、有病、死亡の状況を統計数値で知っておくこと。2、健康教育をすること。3、食品、水、空気、農薬、金属類、化学物質などの環境要因をサンプリングして試験調査をすること。4、保健福祉サービスを提供すること。5、保健医療福祉計画を作ること。

・平均余命、有病率、受療率、乳児死亡率、粗死亡率、死因別死亡率などの集団の健康の程度を測る物差しを健康指標といい、その健康の程度を健康水準という。

・農耕牧畜時代の多産多死から環境衛生改善や公衆衛生の進歩で多産小死になったときに人口は急速に増加する。多産小死から小産小死になったときにはじめて人口増加は鈍り始めて、この生死の数的変化の減少を人口転換という。

・疫学とは人間集団における疾病の分布とその発生原因を研究する科学である。疾病の発生に関与している要因がわかれば、集団から除去したり回避させることで疾病の発生を防止することができる。疾学の考え方はBC5世紀のヒポクラテスの著作「水・空気・場所」に見られる。高木兼寛は海軍の脚気は炭水化物中心の食事が原因だと予想して、脚気がビタミンB1の不足によって起こることまでは解明できなかったが、食事に麦、大豆、肉を増やして疫学的手法で疾患を予防した。

・疾病分類はその分類が全ての疾病を包含するとともに、それぞれの疾病は互いに排他的でなければいけない。WHOが制定したICD(国債疾病、傷害及び死因統計分類)に基づいて基本分類や死因分類をする。

・疫学調査ではまずある集団に発生する異常者を調査してその頻度を定量化することを行う。正しい定量を行うためには危険曝露人口(分母)と異常者数(分子)の正確な把握が必須である。対象集団全員を調べる方法を全数調査といい、禅集団から一部を抽出して調査することを標本調査という。

・分子(A)と分母(B)の把握によって算出される値(A/B)を比率という。厳密には比(ratio)、割合(proportion)、率(rate)、率比(rate ratio)に区別される。比は分子と分母が異なる属性からなり、例えば性比は男性人口/女性人口で表される。割合は分子が分母の一部を構成している場合で、有病率(一時点またはある期間における有病者数の割合)は代表的な割合である。率はある人口集団である一定期間に発生した疾病または死亡数を危険曝露人口で割って得られるもので、代表的な率として罹患率や死亡率がある。率比は分子、分母共に率であり、その比で表されるもので、代表例として相対危険度(ある要因曝露群の罹患率/非曝露群の罹患率)がある。

・死亡率や罹患率を集団間で比較する際、各集団の年齢構成が違えば比率が違ってくるので、各集団で得た比率をそのまま比較しても意味がない。年齢構成を同一にした場合に各集団の比率が高いか低いかを比較するのが正しいやり方で、この処理を調整(標準化)といい、調整を行ったものを調整率または標準化比といい、調整を行わない率は粗率という。

・疫学研究は観察疫学研究と介入疫学研究の二つに大きく分けられる。観察疫学研究には人間、空間、時間の観点で疾病の分布を記述する記述疫学研究、集団の特性に着目した生態学的研究、一定の特徴(要因曝露)を共有する集団を追跡して発生する疾病を観察するコホート研究、調査対象の疾病にかかった患者(症例)とその病気にかかっていない人(対照)の双方を調査する症例対照研究がある。介入疫学研究は研究者が対象者の要因曝露を変えたうえで健康状況を調べてバイアスや交絡の影響を完全に排除できるので、疫学研究の中でもっとも強力なエビデンスを提供する。介入疫学研究には介入群と介入を受けない対照群をランダムに行うランダム化比較試験(RTC)と、非ランダム化比較試験がある。

・科学的な根拠に基づいて医療上の判断を行うことをevidence-based medicine(EBM)という。エビデンス・レベルの強さは、複数のRCTに基づくメタアナリシス>RCT>非ランダム化比較試験>コホート研究>症例対照研究>相関研究>
専門家委員会や権威者の意見の順番。

・疾病発生のメカニズムの解説にはウインスロウが提唱した多要因説が用いられることが多い。健康を生涯するものは宿主要因(内因)と環境要因(外因)に大きく分けられる。病気の予防にはそれぞれのリスク要因を明らかにして、その要因を除去あるいは軽減するような対策がとられなければならない。

・事故、自殺、がんなどによる早死にの阻止や疾病からの早期の回復を目指した栄養指導、健康教育などを科学的根拠に基づいて考えていく学問体系を予防医学という。一次予防では第一段階では生活環境や栄養摂取などの健康増進、性教育や退職者の生活相談などの健康教育、第二段階では予防接種や事故防止対策などの特異的予防の手段を使って、宿主の感受性を変えて危険因子曝露を軽減することで疾病の発生を未然に防止することを目的にする。二次予防の第三段階では疾病の早期発見と早期治療を目的として、がんなどの集団検診で症状が現れない初期に発見して合併症や機能障害を防いで早死にを防ぐ。三次予防の第四段階では永久的な欠損や後遺症が固定されていない状態の時に活動制限を採用にする活動制限防止をして、第五段階では患者を社会生活に復帰させるためにリハビリテーションをする。

・感染とは病原体が宿主内に侵入して生活環を形成して増殖すること。感染しても発病しない場合は不顕性感染という。多要因説では病因、環境、宿主の3つの要因が疾病の発生に必要で、これを感染症に対応させると感染源、感染経路、感受性をもつ宿主の3つで感染症が成立する。

・感染症発生時の流行防止対策としてまず行われるべきことは感染源の発見と、隔離、除去。

・ワクチンには強力な免疫が得られる弱毒性ワクチン(ポリオ、MRワクチン、ムンプス、黄熱、水痘、BCG)、数回の摂取が必要な不活化ワクチン(百日咳、日本脳炎、B型肝炎、狂犬病、インフルエンザ)、無毒化したトキソイド(ジフテリア、破傷風)がある。

・化学物質の人体への影響は侵入経路、量-影響関係および量-反応関係、毒性及び毒性試験をして判断する。一般毒性試験には急性毒性試験(数週間以内に50%が死亡)、亜急性毒性試験(数か月間投与した影響)、慢性毒性試験(ほぼ一生投与した影響)がある。特殊毒性試験には催奇形性試験、内分泌かく乱化学物質試験、発がん性試験、突然変異試験がある。そのほかに代謝試験や一般生物学試験がある。このようにして得られた毒性データで、食品添加物の許容1日摂取量やダイオキシンなどの汚染化学物質の耐容1日摂取量を決める。

・1901年のマッチ職工、セメント職工、ガラス職工、織物職工、生糸職工は一日の実働時間が平均10時間以上だった。富岡製糸所は全国の農村から集めた若い女工を一日16時間労働させていたことが軍部に問題視されて、1909-1910年の調査で女工の半数が結核をうつされて帰郷して死亡することが判明して、1911年に幼い女子労働者の労働時間制限を目的にした工場法が成立して、1916年から施行された。

・1775年にイギリスの外科医ポットが煙突掃除婦に陰嚢がんの発生率が高いことを報告。1895年にドイツの外科医レーンが合成染料工場労働者に膀胱がんの発生率が高いことを報告。それ以後、次々に新しい化学物質による職業がんが報告されてきた。

●感想

最近はコロナウイルス対策のマスク着用やらの公衆衛生が問題になっているので、ちょっくら公衆衛生学の知識を仕入れてみようと思ってブックオフで安く買ったのだった。定価で2000-4000円くらいする専門書が中古で100-200円で買えるので、その分野の概要を知りたいときには中古で十分である。主に感染症対策をどうしているのか知りたかったのだけれど、それ以外の生活習慣病やがんやメンタルヘルスや母子保健や老人保健や産業保健の部分も社会の問題点を考える上で重要なので、医療や福祉の専門家になるつもりがない人でも読んで損はないと思う。
公衆衛生学は戦後アメリカから来たものなのに、現在のアメリカでは公衆衛生をないがしろにしてマスク着用義務化に反発する人だらけでコロナウイルス感染が止まらなくなっている。そのうえマスク不着用を先導したのがトランプ大統領だというのがアメリカの救いようがないところで、Make America Great Againどころか知性が後退していて、コロナウイルス感染拡大は専門家を軽視する反知性主義のしっぺ返しを受けているといえる。
2012年の​National Scince Foundationがアメリカ人2200人を調査したレポート​によると、天動説と地動説の二択で地動説を答えたのが74パーセント、宇宙が爆発から始まったと答えたのが39%、人間は動物から進化したと答えたのが48%だそうで、特に進化の問題はEUや中国よりも正答率が低いようである。こんな中学生レベルの科学の知識さえない人が多い状態ではマスク着用を義務化されても科学的な必要性を理解できなくて納得できないのだろう。マスク着用をかたくなに拒む理由も科学的根拠に基づくものではなくて、女々しいからというマチスモや、病気の時には家にいて元気な時にはマスクをしないという慣習が理由で、無症状病原体保有者がマスクをしないで外出して市中感染を広めている。それに英語はパ行やバ行の唇を使った両唇破裂音の単語が多くて咳やくしゃみをしなくても会話で唾が飛びやすいので、それが感染拡大につながっているのではないかと思う。たぶんカラオケで「PPAP」を歌うと唾が飛びまくってクラスター感染が起きると思う。日本でコロナウイルス対策がぐだぐだだったのにあまり感染が広がらないのは、日本語は会話で唾が飛びにくいのが原因のひとつかもしれない。

さてせっかく畑違いの本を読んだのだから無理やりフィクションについて考えてみると、フィクションでQOLを高める公衆衛生フィクションというフィクションの在り方があるかもしれない。例えば昼ドラは姑との付き合い方を新妻に教育してライフスタイルの向上につながるかもしれない。ゾンビ映画は伝染病の感染予防と災害時のホームセンターの有用性を周知させてサバイバル能力を高める災害予防教育になるかもしれない。フィクションが愛情だのなんだのの人生の意義を伝えることができれば、人生の意義を求めてカルト宗教に傾倒してテロを起こしたり集団自殺したりすることを予防できるかもしれない。医療系の漫画やドラマは物語形式で病気の特徴を知って健康管理の教育になるし、例えば医学書を読んだことがなくてスキューバダイビングをしたことがない人でもたいていフィクションで減圧症がどういうものか見たことがある。ミステリやサスペンスなどの犯罪系のフィクションは犯罪の手口を紹介して防犯意識を高める効果があるかもしれない。SFは科学の濫用や社会制度の変化を警告して、ディストピアにならないように予防しているかもしれない。異世界チート無双ハーレム系のライトノベルは作者や読者のストレス解消になってポジティブメンタルヘルスとしての効果があるかもしれない。文芸サークルに参加して年代が違う人と知り合ってソーシャルネットワークを広げることは疾病の一次予防に役に立つかもしれない。このようにフィクションに公衆衛生的な価値があるかもしれないので、物語の面白さや芸術性だけがフィクションの価値の指標ではないといえる。しばしば文学や文学部は役に立たないと言われていて、そういう人はたいてい仕事や金儲けの役に立たないという指標で文学を批判するけれど、公衆衛生という指標で文学をとらえてみたら十分役に立っていると思う。
フィクションの中でも比較的新しいジャンルのコンピューターゲームは青少年に有害だとマスコミに敵視されて、犯罪者の家からゲームが見つかったとかの直接ゲームを動機に結び付けようとする偏向報道がされていたり、香川県の県議の思い込みでゲーム規制がされたけれど、有害だというならどのゲームを何時間プレイすると症状がでるのかというリスク要因について具体的な科学的根拠を出してほしいものである。家庭環境が問題で子供がゲームで現実逃避して不登校になった場合、ゲームと不登校の関連が家庭環境によって交絡されていて、実際はゲームと不登校と因果関係がないのにゲームのせいにされている可能性もあるので、主観的にゲームを悪にするのでなくて疫学研究すればよい。
フィクションで精神の健康を保てることが科学的に証明されたら、ストレス発散効果が高い特定保健用フィクションが認定されたり、薬剤師みたいな資格持ちのフィクション師が病院の処方箋を見て患者に合ったフィクションを提供するようになったり、集団検診としてライフスタイルを確立するのに適したフィクションを鑑賞するようになるかもしれない。睡眠薬を処方せずに読むだけで眠くなるようなすごくつまらない小説を処方する社会になったらオーバードーズがなくなるかもしれないし、ラジオですごくおもしろいフィクションを流すようになったらトラック運転手の居眠り運転が少なくなるかもしれない。フィクションが薬みたいに役に立つ社会のSF小説を書いてみるのも面白いかもしれない。

★★★★☆

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最終更新日  2020.07.05 23:46:00
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