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三角猫の巣窟

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純文学の小説を中心に読書録を書いています。基本的にネタばれしています。
小説の構成や描写技法を中心に考察しているので、小説家を目指す人にとっては参考になる部分もあるかもしれないし、小説家を目指すつもりでない人も次に読む本を選ぶ参考程度にはなるかもしれません。
古いほう読書録はほとんどこのブログへの訪問者がいなくて日記代わりに雑感をメモしていただけなので他の人が読むほどの内容じゃないです。自分で読書録を読み返してもあらすじを思い出せない本があって、もうちょいあらすじなり特徴なりを詳しく書いておけばよかったと反省したので、最近は時間をかけてちゃんとレビューするようにしています。
いち本好きとして良いと思った小説は賞賛して悪いと思った小説は罵詈雑言を浴びせているのですが、小説の感想というのは個人の知識や価値観を反映させるので、結局のところ自分で読んでみないと意味がないのです。
ネットの中をさまよって偶然この読書録にたどりついた人は、面白いと賞賛しているのを読んでみたり、逆に罵倒している小説がそんなにつまらないはずはないと読んでみたりするのもよいでしょう。
この読書録がきっかけとなって他の人にも本が読まれることで、小説の発展にほんの少しでも貢献できればよいと思っているのです。

 ∧ ∧
(=‘ω‘ =)つお勧め本
辻原登『東京大学で世界文学を学ぶ』
辻原登『東大で文学を学ぶ ドストエフスキーから谷崎潤一郎へ』

評価基準:
★★★★★:感動したニャー
★★★★☆:技術や感性に芸術性があって面白いニャー
★★★☆☆:暇つぶし大衆小説程度ニャー
★★☆☆☆:描写技術や知識が出版に満たないレベルニャー
★☆☆☆☆:ゴミニャー

 ∧ ∧
(=‘ω‘ =)<みかんの妖精のLINEスタンプを作ったのである。
2018.11.18
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カテゴリ:小説

でくのぼうの成田長親が忍城に攻めてきた石田三成と戦う話。

●あらすじ

序:石田三成は秀吉が備中高松城を水攻めするのを見てこんな戦がしたいと思い、秀吉が天下を取った後は兵糧担当の三献茶として他の家臣に見下されていたところ、秀吉から北条家の支城の武州忍城を攻めるように命令される。

1:アラフォーの成田長親は百姓たちからは役たたずのでくのぼうとして「のぼう様」と呼ばれていて、家老の正木丹波も幼馴染の長親を馬鹿にしていた。北条家は小田原城に籠城すると決めて成田家に兵を出すように言うものの、成田家当主の氏長や家臣は秀吉に降伏するか戦うか決めかねていて、北条家の使者が来て返答を迫られて主戦派で氏長の叔父の泰季が五百騎を出すと言い出す。長親は北条家にも関白にもつかずに今と同じように暮らしたいと言って馬鹿扱いされるものの、氏長の娘の甲斐姫は村娘を手籠めにした侍を成敗したときに事を収めたのが長親だったので長親に惚れていた。氏長は山中長俊を通じて関白に内通するつもりで主戦派の正木丹波、柴崎和泉守、酒巻靭負と役立たずの長親を留守居にして、北条家にばれないように戦の準備だけして秀吉が攻めてきたら戦わずに開城するように命じると、和泉の失言で村人にも降伏するとばれてしまう。

2:秀吉は三成に忍城に出陣するように命令するものの、内通の事は堅物の三成には伝えなかった。三成は館林城が戦わずに開城したのが不満で、事を荒立てるために忍城へ戦をするか尋ねる軍使に高飛車な長束正家を送ると、正家は長親たちを愚弄して長親に甲斐姫を秀吉に差し出すように言ったので、長親は戦うと勝手に返答して家臣たちも同意する。泰季が病死すると長親が城代になり、丹波が百姓を徴発して籠城するのを三成は兵糧が減るだけだと判断して手出ししないでおく。

3:鉄砲組を横一列に配置した正家に対して丹波は騎馬鉄砲で迎え撃ち、丹波は山田帯刀との一騎打ちに応じて倒して、敵を圧倒して正家を撤退させる。軍略好きな靭負はあえて老兵を集めて、三成の先鋒の貝塚と一騎打ちしてわざと逃げて、追ってきた敵を迎撃して三成を撤退させる。和泉は大谷吉継の鉄砲隊に苦戦するものの、鉄砲隊が進軍して川に入ったところで堰を破壊して敵を一掃する。三成は敵を見直して水攻めをすることにして、大金をかけて百姓を集めて利根川と荒川を結ぶ巨大な人工堤を5日で急造して川を決壊させると、忍城は本丸を残して水没する。

4:長親は水攻めを破ると言って舟の上で田楽踊りを始める。これは長親があえて撃たれることで自分を慕う百姓を死兵にして弔い合戦に持ち込む作戦だと大谷吉継は気づくものの、三成は秀吉が水攻めを見物に来るという手紙を受け取ったので秀吉が来る前に忍城を落としておこうと焦って長親を鉄砲で撃つ。長親は生きていたものの百姓の士気が上がり、場外の百姓が堤を決壊させる。水が引いたら三成は総攻撃をする予定だったものの、秀吉は一夜城を築いて北条家を圧倒して小田原城を落城させたので、忍城も開城する。

終:三成は長親に会いたがり、自ら軍使として入城する。正家が士分は財産と兵糧を全部置いて行けと本来の和睦の条件にないことを言い出すと、長親はそれなら戦うと言い出して撤回させて、甲斐姫を秀吉の側に置くという条件を受け入れて和睦する。北条家の支城で落ちなかったのは忍城だけだった。

●感想

三人称で、ちょくちょく資料を引用しつつ物語を展開する形式。「いま、成田氏長の軍勢が入場するのを見下ろす氏政は、この五カ月後に自刃し、息子の氏直は、高野山へと追放され、この翌年死ぬ。」(上巻p.107)「のちに秀吉は、北条方に氏長の内通を知らせて、この小才子を窮地に追い込む。」(下巻p.76)のように、読者が物語世界に入りこんでいるところにわざわざ現代の俯瞰視点を持ち出して未来をネタバレするのは邪魔だし面白さを損ねている。「当時の人は、秀吉の異様な風体を「大魁美麗」の粧とか「天下希代の壮観たり」などと激賞したというから、この時代の豪華趣味はよくわからない。」(上巻p.130)と作者の意見を挟むのも邪魔くさい。読者は物語を読みたいのであって、歴史の解説や作者の意見を読みたいわけではないので、物語を語ることに徹してほしい。
古い言葉と現代語が混じっている会話文も雰囲気を損ねていて、酒巻靭負がいくら若造でもありえないだろうというくらいチャラ男すぎるので会話のトーンを統一してほしい。幕末くらいの下級武士なら砕けた話し方をする人がいるのもわかるけれど、戦国時代の武士が礼儀知らずのチャラ男なのは違和感しかない。それに章分けが序の後が1、2、3というアラビア数字で、そこは壱、弐、参じゃないのかとちょっとがっかりする。おしゃれな章分けのデザインになっているけれど、こだわるなら漢字にしてほしかった。
内容としては、いくさの部分はエンターテイメントとしてそれなりに楽しく読めるけれど、甲斐姫が長親に惚れているという設定が話から浮いている。甲斐姫がおてんばとしてキャラ付けされすぎていきなりキスしたりして悪目立ちしているし、長親は武士の結婚適齢期を過ぎているのに妻帯者でないのも謎だし、長親がもめ事を一回収めただけでは甲斐姫が長親に惚れる動機としては弱いし、戦国時代に自由恋愛の価値観を持っているのも不自然で、甲斐姫がご都合主義的なお色気担当になっている。最後に秀吉の側室になる前に惚れた男に抱かれると言い出すあたりがおてんばというより破廉恥で興ざめした。ロマンティックが止まらない恋愛を書きたいなら時代小説でやる必要はない。
三成は秀吉の真似をしたがって水攻めをしたのだ動機と行動の辻褄が合うようにしているけれど、それに対して主人公である長親は馬鹿なのか大器なのかよくわからない人物という演出をしているせいで、結局長親は何がしたいのか動機がわからなくなっている。長親が三成と戦うと言い出す動機付けに甲斐姫が使われているけれど、それなら最後に甲斐姫を秀吉の側室にすることにあっさり同意するのは意味が分からない。弱者である百姓を守りたい博愛主義者かと思いきや、無能だけど馬鹿にするやつに降参するのは嫌だという個人的なプライドで百姓をいくさに巻き込んでいて、何がしたいのかわからない。無能な長親が今までどんな戦に参加してどんな戦果を挙げたのかは書かれていないけれど、武士が中年になるまで生きればさんざん修羅場を見てきただろうに、長束正家に啖呵を切った程度で長親が腰を抜かす描写はおかしい。武家に産まれても殺し合いをしたくない人は出家するので無能で戦闘には参加しないけど将器だけはあるという武士像は違和感があるし、無能なのにカリスマがあるという十分な理由付けがされていないので、長親を馬鹿扱いしていた百姓たちがいきなり結束するのも不自然に見える。長親が甲斐姫のトラブルをうまく収めた方法を書かないことで本当は切れ者だという可能性を残しておいたくせに、長親の行動の一貫性のなさを最終的に馬鹿だからと片付けてしまうのはずるいやり方。三成側の動機を書いたことで一応物語として成立しているけれど、敵よりも主人公側の動機を掘り下げるべきだろう。それに三成にしても、忍城を愚弄して無駄に戦を仕掛けたくせに最後は投降しようとした百姓を殺したやつは許せんと善人ぶったりして、人物像がぶれている。
フィクションは何でもありとはいえ、実在の人物をフィクションとしてゆがめた形で消費してしまうのは私は個人的に好きではない。偉人を魅力がある人物として書くならいいけれど、プロットの都合で馬鹿や悪人に仕立て上げるやり方は嫌いである。時代小説は現代とは違う戦時下の環境でどういう思想をもってどういう生き方をしているかという個々の武将の生き様が見どころだけれど、そこで現代人っぽい人物像に脚色してしまうと時代小説の意味がなくなる。生死をかけた武士を命をかけたこともない現代人が馬鹿扱いするのは敬意がない冒涜で、これがもし自分の先祖ならこういう書き方はできないだろうし、世が世なら打首になる所業である。忍城が水攻めを耐えたという史実の面白さに頼りすぎて、戦国時代のうわべの面白さだけ書いて武士の死生観や甲斐姫の乙女心は書けていないし、創作部分が逆に史実の面白さを損ねている。結局は作者自身が生きることはどういうことなのかということに向き合って敬意をもって人物を描写しないと、何を創作しても実在の武士の死生観に劣るものにしかならない。歴史考証をした結果として長親がでくのぼうだったという説を出すならまだわかるけれど、歴史上の人物を当人から文句が出ないのをいいことに勝手にでくのぼうにしてはいけない。勝負を書きたいだけなら歴史の面白さに頼らないでファンタジーでやればよい。

★★☆☆☆


のぼうの城【電子書籍】[ 和田竜 ]

「本文にわいせつ、もしくは公序良俗に反すると判断された表現が含まれています。」とエラーメッセージが出たので、楽天の言葉狩りにこの場で抗議しておく。「ごうかん」を漢字にすると引っかかるようだけれど、単語が公序良俗に反するのではなく、行為が公序良俗に反するのであって、言葉狩りをしてよい理由にはならない。誰が何の理由で公序良俗に反すると判断したのか開示するのが楽天の企業としての責任だろう。それができないから楽天は三流IT企業なんだ。







最終更新日  2018.11.21 10:16:55
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