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テーマ:こけし探訪(85)
カテゴリ:伝統こけし
丑蔵愛の北川太一『こけし惜別』を読む 北川太一『こけし惜別』 北斗会出版部 1995/10/15
署名落款入りでかつ二重箱入りという豪華なもの。しかも当時でもあり得ない活版印刷。単色本文74ページでは、贅沢の極みであろう。 「惜別」とは多くの工人や西田峯吉、土橋慶三などを失った追悼が多いことによるもの。 印象をひとことで言えば、丑蔵愛に溢れた一冊であるといえよう。丑蔵から文六、文男、文吉への思いは広がる。さらに奥瀬鉄則への叱咤激励である。 その鉄則も失うなど、まさに惜別である。 「丑蔵恋慕」の冒頭をあげる。
丑蔵がいない、と思うと体のどこかに大きなほら穴があいたような気がする。丑蔵逝去の電話が新地から届いたのは、朝から雨の九月二日火曜日、 夜も八時半を廻っていた。追われている原稿があって、いま東京を離れる わけにはいかない。いくらあがいてももう丑蔵はいない、そんな取返しようもない思いに駆られて、丑蔵にとも英裕にともつかない電文を綴った。
亡き父と同年の丑蔵を悔やむ弔電としては、感傷に過ぎると人は笑おうとも、わが壮年に丑蔵でなくては夜も日も明けぬ丑蔵恋慕の数年があり、そしてそれが還暦をすぎた今もたちどころによみがえることを、溢れる思いのたけをこめて、幽明を異にする丑蔵に語りかけずにはいられなかった。 にほんブログ村にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年02月07日 01時16分31秒
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