すべりこみアウト。10すべりこみアウト。 10 すべりこみアウト。9へ <名前> 名前をつけるのが好きだった 細かく分析を続けて 結論を出さなければ気が済まないタチ 丁度あてはまる名前をつけると あつらえたようにぴったりの箱を見つけたようで 気持ちがとても落ち着いた 箱の中に納まり続けるものなんてありはしないの 窮屈に閉じ込められて かわいそうな ココロの数々 <ちいさなちいさな> あなたと歩いたこの道が いつまでもどこまでも続くと信じた 意識することもないくらいに当たり前のように 人は変わるよねと言いながら自分が一番変わってしまって いいや変わらないよというあなたの言葉は信じられなかった ちいさなちいさな出来事が 今は大切に思える あの頃は取るに足らないことと思い込んでいた、 ちいさなちいさな <傲慢> 願いはただ一つ。 僕を愛して。 ずっと。 いつまでも。 僕だけを見ていて。 僕がどんなに変わっても 僕がどこへ行こうとも それはどうやったって変えようのない 真実だと信じてた。 そんなお人よし、いるはずない。 <仕事納め> 今までいつかやらなければ きっといつかはやらなければと 思いながらついそのままにしておいた いろんな事柄のしっぺ返しが迫ってるのを なんとなく感じて なんとかしなくちゃと思うけれど もうあそこへ戻れるはずもなく 一体どうしたら辻褄が合わせられ 一体どうしたらこの仕事を終えることができるのか もうあまりにも長く長く誤魔化し歩き続けてきて さっぱりわからない。 <行きたかった場所> 夢でもいいから行きたい場所がある。 ボクがいつのまにか手を離してしまったばかりに キミに連れて行ってもらえなかったところへ。 <3人> 3人でバラバラなことをしながら一緒の部屋にいる。 一緒の部屋にいるのに好きなことをそれぞれしてる。 私の一番好きなやり方。 私の一番好きな関係。 誰にも邪魔されず、誰もがのびやかで、誰もがシアワセな気持ち。 時々は声を掛け合って、それぞれのシアワセを確かめる。 そこにいるだけでいいのです。 <渦> もう自分の中ではとっくに終わってケリのついた出来事が 今もなお別の人の心の中にわだかまりを残している事に驚く。 全然知らなくて。 またあの時間に引き戻されて少し巻き込まれそうな気持ちになる。 でもせっかく通り抜けてきた道、戻ってなるものか、と振り切って歩き出す。 それにしても、よくわかる。奈落のそこにいるような、あの気持ち。 冷たいようだけれど、本人が通り抜けるしかないのだ、あの道は。 <決着> 一つのことが終わる時、嬉しくもあり、悲しくもなる。 なぜかというと、やっと終わるからで なぜかというと、とうとう終わってしまうからだ。 待ちに待ったこの瞬間が、いつ来てしまうのかと身構えていた。 綺麗ごとは、もうよそう。 <お城> 昔からそうだったの。 待ちかねたように出迎えて、お茶を出して、雑談。 楽しくて、笑顔までこぼれるけれど 誰よりも終わりを待ってる。 私のお城には私だけ。 用があれば私から行きます。 これ以上踏み込まないで。 私のお城には私だけ。 <我慢> 我慢することが当たり前だと彼女が言った。 生まれてこの方言われ続けた言葉なのに なぜか今度はしみこんできた。 そういうことってある。 言葉には発する人と発するタイミングと発する場所が必要だ。 お天気も、その日の服の色もあるかもしれない。 とにかくしみこんできて いつもは絶対に我慢できないことが どうにかこうにかやり過ごせた時 まだどこにも芽吹いてない何かの息吹を少し感じる。 自分を折る。 自分を折れる人になる。 プライドの高さを逆手に取り、今日をやり過ごそう。 <蒼い時間> 夜の高速。 インターを下りると見えてくる高層ビル群が好きだった。 夜の街は冷たく、何もかも拒まれそうなのに どうしてもそこに溶け込んでいきたくなる。 さまよう街明かりを空とセットで見ていると 懐かしい空気に包まれる気がする。 ボクはどこから来たのだろう。 帰る場所などない気もするのに どうしてもあそこに入り込まずにいられない。 <塊> 塊を除こうとして躍起になっているときには 時間はいつも止まっていた。 粉々に打ち砕くものや、柔らかく変えるもの、溶かしてくれるものなど。 いつもいつも探しては走り回ったりして。 景色は変わらない。 焦り、憤り、やがてあきらめる。 時間のいたずらか運命というものか、あらゆるバランスのなせる業か 何かが功を奏した、という感じでは全くない。 とにかくコトリと落ちる瞬間がやってくる。 何を待っていたのか、何がやってきたのか。 わからないままに、塊が、姿を消している。 不思議なきつねがつまんでいった、私のほっぺ。 <ひとかけらのヨロコビ> ほんのひとかけらのヨロコビを今日もそっと抱いて眠ろう。 明日という日は知れない。 昨日だって叶わなかった。 だけども今この胸にある、はかなくも確かなこのあたたかみ。 一晩の後に夢と消えようとも 今宵の月に刻み付けるべく、そっと抱いて眠りましょう。 星を見上げて眠りましょう。 |