命もいらず名もいらず
命もいらず名もいらず(上(幕末篇))「命もいらず名もいらず」の主人公は、山岡鉄舟だ。山岡鉄舟の名前は知っていたが、何をした人かよくわかっていなかった。この本を読んでみて、何をしたかという事よりもどういう人物だったかが重要だと感じた。歴史に名を残す人物は、多かれ少なかれ、政治力に長けた人だと思っていた。けれど、山岡鉄舟は、どうやらそういう人物ではなかったらしい。彼は、徳川の家臣でありながら、新政府でも頼りにされ奔走し、爵位までもらっている。明治天皇からの信頼も厚かったという。処世術とは縁のない性格なのに、時代をうまく乗り切っているようにみえるのは、なんとも皮肉な現実だ。彼の言う「精神満腹」という言葉は、本物の武士のあるべき姿だろう・・・主人公の精神世界を最後まで追った著者に拍手を送りたいと思った