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テーマ:ニュース(621)
カテゴリ:出来事
母さん、足、大丈夫?
うんうん。もう痛くないよ。 ちょっと消毒するね。沁みたら教えてね。 母のくるぶしのガーゼを交換するのは日課となった。 いつの間にか夏が過ぎ、秋は急ぎ足で寒さを運んできた。 おじさん、もうだめかもって連絡きたの。 咽喉にさしみが詰まって意識がなくなったって。 かわいそうにね。一生懸命、長男が介護してたのに。 母さんが見舞いに来てくれたら、生命維持装置を外すって。 母さん、行く?弟でしょ? 母の下に連絡が来たのは、春もまだ浅き頃だった。 人口呼吸を外したら、すぐにおじさんの葬式になるからって。 母さん、しばらくそっちにいてね。 けれど、長男の懸命の看病で、叔父は一命を取り留めたようだった。 帰れなくなった母は、妹の近くで一人暮らしをしていた。 なんかね。変な男が母さんの部屋から出てきたのよ。いつも鍵を掛けていたのに。 妹から連絡が来た時、嫌な予感はしていた。 痛い、痛い。転んでね、足がすごく痛いの。 母さん、どうしたの?私はすぐにはそっちに行けない。 救急車を呼ぶね。 母の足は3か所も折れていた。 すぐに母を呼び返さなかったことを悔やんだが、後の祭りだった。 母の転んだリノリウムの床には、不思議なことに、その家にはないロウソクのろうが数か所垂れていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.10.30 21:29:02
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