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カテゴリ:手紙
<感想>
感情が大きく揺さぶられ、深く深く考えさせらました。クライマックスには泣きながら笑い、笑いながら泣く。希望と絶望が混ざり合ったどうしようもない感情に涙があふれ、涙でにじんでスクリーンが見えない。必死に直貴の表情の移り変わりを目に焼き付けようと、目を凝らすけれど、とめどなく涙溢れて…。ラスト40分くらいの流れゆえにこの映画には最高の評価をしたいと思います。 とはいえ私は原作未読で見たので、初見の映画には違和感を感じた箇所がけっこうありました。 でも何度も見て、実は漫才のネタさえも本編と絡め、セリフのない場面の意味を深く深く考えさせるようにできている実に繊細な作品だなと。 正直見るたびに評価を上げています。(初見 80点→現在90点) まだまだ理解しきれていない部分もあるので、みんなで私はここはこんな風に見たんだけど、なんてわいわい語りたいと思います! 以下レビュー第1弾です。 <<甘栗の記憶>> 直貴と剛志が二人きりで生きてきた長い時間。直貴が小学校5年のときから、剛志は直貴を貧乏の中で、守り育ててきた。 可愛くて、大切で弟のためなら自分はどうなっても構わないとすら思える唯一の存在 直貴のためにと、弱い自分を奮い立たせて強盗を働く。 間違っているが、弟に託す夢の大きさの前にその間違いに気づけない。 一瞬の闇を跨いで犯罪者に成り果てた兄に、事件後面会室で震える声で弟は言う。 「違うよ…。甘栗好きだったの、母さんだよ。」 必死の思いで手にした甘栗が弟の好物ではなく、母のいた風景の残像だったと知る。二人が母を守り、母に守られていた幸せだったころの記憶。 「どじだな、俺…。」 どじで、間抜けで、どうしようもない馬鹿兄貴…。このシーンがあるから、最後の漫才が切ないほどに効いてくる。 「兄貴はすっげーーーー馬鹿ですから」 <<剛志>> 原作を読んでから映画を見ると剛志がいい人過ぎるとも感じる。あの愚直で学がなく、下卑たところもある兄貴が、刑務所の中で字を覚え、生を取り戻した上で、突きつけられる弟からの最後の手紙とラスト。カタルシスは圧倒的に原作の方が大きい。 けど、兄貴をいいやつに描くこのキャラ変更、確信犯だと自分は思いました。兄貴がいい人であればあるほど、もう許してあげたらという気持ちが見ている側には起こりやすい。 でも、剛志がいい兄貴であればあるほど、彼が犯した罪の重さがむしろのしかかってくる。 人を殺めてしまった兄貴はそれでも優しい俺の兄貴だと、ナオは犯罪者となってしまった兄貴を受け入れる。だからこそ、そんなナオのためにこそ、剛志は罪を犯すべきではなかった…。 結局そこにいきつくようにできている。 私はこの映画は一見、絶望の中に光を見出した救いのある前向きで清々しい映画のように見えるけれど、実際には罪を犯した先に未来などない、償うことのできる罪などないということを静かに、押し付けることなく描いていると思いました。 安直な救いを与えなかったところに、この映画の潔い深さがある。 <<夢の破片―お笑い芸人 直貴>> 兄のことで職場も住まいも変わり、裕輔以外の人との係わり合いを避けてきた直貴が、倉田のことはあったにしてもなぜお笑いで身を立てようとしたのか、ずっとなんだかエンディングありきの設定に感じ、説得力を感じ切れなかった。 兄貴が犯罪を犯してまで自分を大学に行かせたかった。ならば大学に行って一人前になってみせるという方向を選択するのが自然。漫才師への道への転換を「やりたいことがあるなら...」のセリフ一つで片付けてしまうのは、大味すぎではと…。 でも、ものすごく引っかかってはいても自分がどうしてもその意味を理解できなかったシーンが実はものすごく大切で、そこを理解できてないせいで、直貴の決断に説得力を感じてないんだと急に気が付いた! それはリサイクル工場をやめようとしていたときの直貴の背中、そして顔。崖の淵に立つ直喜の顔は顔面蒼白で、鬼気迫る雰囲気で、ナオの心情をセリフではなく、演技で表したシーン。 でも自分はそのシーンが重要だというのは分かるのに、なかなかそのシーンでナオが何を考えているのかがわからなかった。 で、考えて考えてようやく、思い至った自分なりの直貴の心の中。 倉田とのけんか。最低とののしられた兄貴へのあふれる想い。「やりたいことがあるなら、あきらめるな」の言葉。 「なぁ兄貴、俺みたいなのが夢見ていいのかな…。兄貴にあんなことさせてしまったけど。」 人殺しの弟って後ろ指さされてる俺が、舞台に立って人を笑わせたりできるのか。本当にできるのか。本当にやっていいのか。倉田さんが刑務所から出てやり直してるみたいに、 兄貴にもそんな未来もあるのかな。そんなことを考える俺は甘いのかな...。 見限られる前に自分で見限った世の中へ挑戦。「お笑いで天下取れ」裕輔にかけたことばは、 本当は直貴がやりたかったこと。笑われるより笑わせる(by 虎馬)。その立場への飛翔。だから、決して考えなしに飛び込んだんじゃなく、決死の覚悟がそこにあった。 あの無言の崖っぷちのシーンはそんなことを表してるのかな…と考えたり。 そしてその後のものすごい顔で思いつめたように歩いていくシーンも…。 だからこそ、加害者家族に向けられるまなざしの厳しい現実の壁が立ちはだかったとき、直貴はもろかった。決死の覚悟で、なかばあきらめつつすがった夢の欠片だったから。 そうだよな。本当は最初から分かってたことだよ。俺なんかが夢見ちゃいけなかったんだ…。 こう考えると漫才師になろうと決意し、努力し、あっさりあきらめた 直貴を甘くて弱いと安易に否定することもできない気もして…。 少し直貴の気持ちに近づけた気がするのです。 みなさんはあの崖の淵に立つ直貴、どう解釈しましたか。 あの視線の先にどんな未来を直貴は見ていたのか…。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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私が映画を観始めて、最初に違和感を感じたのが、bainekoさんがいうように、剛志をいい人に描いている事だったんです、
映画では揉み合って誤って殺してしまったって感じになってるけど、原作では自らドライバーでとなっている、人格とは別にそうなってしまう恐ろしい部分も人は持ち合わせてると思わさせるものだったんだけど、 それだと、balinekoさんがいうような話の本筋から 離れて戻せない可能性があると記事を拝読して思いました。 >安直な救いを与えなかったところに 確かに、ラストのシーンをセリフそのままには受け取らせない考えさせられるものがあって、自分がどういう感情で泣いてるのか定まらない感覚があって、自分自身答えが出せず困ってます^^ >みなさんはあの崖の淵に立つ直貴、どう解釈しましたか ん~ダメだ、1回しか観てないと、安易に何も言えない;宿題にさせてください^^ (2006年11月12日 02時12分10秒)
balinekoさん こんばんは!先日、主婦友達4人と3度目の手紙に行って来ました(私以外は初めてでしたが)。私は冒頭のシーンから既に涙腺が緩み始め、後半はやはり涙が止まりませんでした。そんなこんなで、まだ私には考える余裕がないようです。
私もkeiさん同様宿題にさせてください。 (2006年11月12日 22時20分49秒)
レビューを読ませて頂いて・・・「あーやっぱそうか?」と思ったのが本当です。正直、あの崖っぷちに立つ直貴、工場を去る直貴、が前後のシーンから「お笑いが夢」「夢を叶えるため?」の決断なのか?原作を読んでいる自分は・・・???とかえって思ってしまいました。
直貴の表情から夢だけでなく、「また兄の事がバレた・・」ことを表現してるような? 由美子が「夢かなえるかめやろ・・」とか言ったときにあーそうなのか?と思いました。 しかし、直貴の表情はいろんなごちゃ混ぜな感じが・・・人生って一つの夢だけ考えて悩むのでなく、夢とともにいろんな別の悩みも沢山あるとおもうから(普通の人でも)・・・難しいですね。 私的に兄の殺害シーン前にでも直貴がもともとお笑いが得意で好きで夢みている・・みたいなシーンが映像としてあれば良いのになぁ?と思ってます。 朝美に恋をしていくシーンは山田君の表情でよくわかるのですが(恋をしてる目)もっと二人の時間を表現して深みを出して欲しかったかなぁ? 映画は時間が限られてるから難しいですよね。 しかし、私もよく泣きました!! (2006年11月12日 23時51分30秒)
balinekoさん こんにちは
崖っぷちの直貴が見たものは 絶望と諦めの暗闇です。 それを知らしめる為の映画です! 犯罪者のDNAは 世間の意識の中で受け継がれ育っていくもの いつの日も貧しい 軒に雨が降り続く・・・ 亮が見降ろす 工場の町 朔が佇む 色を失くしたエアーズロック 山田クンの演技はここから始まります^^ 台詞のないシーンの心情 行間の演技 ここを評価してもらえるなんて役者冥利に尽きますね^^; 人目を忍んで生きるのを強いられた直貴が 名前を売る(バンドや)漫才を目指すのは 現実的にどうかなと私も正直思いましたが 見終わった今 違和感どころか 兄(観客)にメッセージを伝えうる 唯一の方法かなとも感じました。 「ナオキ(ヒロシ)です。」みたいなキャラだったらなんて 心配だったよ~^^; あんまり仲良くはなかったけど おいらも男二人兄弟の兄 昔を思い出して ちょっと胸締めつけられました。 ちなみに競馬は親譲りです・・・ 「血が繋がってますから~!!!」^^; (2006年11月13日 16時43分36秒)
Kさん
>剛志をいい人に描いている事だったんです 私もここは最初からずっと違和感アリ。で、自分なりにどうにか納得させようと思って、記事のような感じになりました。 そもそも、原作より殺害方法がマイルドになっているのに、罪は無期になってたりとちょっとアンバランス感があるつくりなんですよね。私なんて頭が悪いから、剛志の殺害シーン。あのおばさんがはさみ振り回すから、腰の悪い剛が抵抗して、強盗の正当防衛(?)とか思いそうでした。そんなのありえないけど。 >>安直な救いを与えなかったところに > 確かに、ラストのシーンをセリフそのままには>>みなさんはあの崖の淵に立つ直貴、どう解釈しましたか > ん~ダメだ、1回しか観てないと、安易に何も言えない;宿題にさせてください^^ 本当はDVDでてからじゃないと納得行くまで語れないかもね。ただもう1回見に行く前にいろんな人の意見を聞いてみたくて。宿題の回答待ってます。 (2006年11月13日 21時00分41秒)
ハコさん
>私もkeiさん同様宿題にさせてください。 そうですよね。私は4度目くらいから結構冷静に見れるようになったので、いろいろ考えながら見てます。 考えがまとまったら是非聞かせてください。 (2006年11月13日 21時01分53秒)
さちさん、
> 直貴の表情から夢だけでなく、「また兄の事がバレた・・」ことを表現してるような? それは当然あると思います。倉田との一件で隠してきたことがまたばれてしまった。で、どうするか。 夢への決断といっても、決して明るい能天気なものではなく、自殺する気ならくらいの壮絶な覚悟での決断かなと思ったりしてます。 > 私的に兄の殺害シーン前にでも直貴がもともとお笑いが得意で好きで夢みている・・みたいなシーンが映像としてあれば良いのになぁ?と思ってま す。 さちさんにすごく同意!直貴はお笑いでと思ってるのに、兄貴がどうしてもなおを大学に行かせたかったという気持ちのすれ違い的なものが映像でほしかかったかも。あと兄がどうしてあんなことまでしてナオを大学にやりたかったのかも、あんまり描かれてないし。 > 映画は時間が限られてるから難しいですよね。 欲張ってるだけてのはわかってるんですけどね。もっと脳内補完して、映画の直貴の気持ちを分かれたらなと思ってる次第です。 (2006年11月13日 21時08分13秒)
虎馬さん
>崖っぷちの直貴が見たものは >絶望と諦めの暗闇です。 もうあそこで見ちゃったって解釈?虎馬さんは? なら直貴はものすごく強い人間ですよね。 絶望の果てからもう一回挑戦してくから。 あ、でもお兄さんのことを誰にも隠してるから、 やっぱ弱いのかな。 うーん、難しいな。 >台詞のないシーンの心情 行間の演技 > >ここを評価してもらえるなんて役者冥利に尽きますね^^; この人はセリフがないシーンがうまいからね。生野監督もセリフ減らしたらしいから、山田君の演技力に任せた部分もあるんだと思います。読み取りきれない自分の感性の貧困さがうらめしいよ! >ちなみに競馬は親譲りです・・・ > >「血が繋がってますから~!!!」^^; 親を言い訳にするんじゃない!なんちゃって! (2006年11月13日 21時14分31秒)
balinekoさんこんにちは!!
ネタバレレビューありがとう~ 読んでたら無性に直貴に会いたくなって今週行こうと思って友達誘ったけどスケジュールが合わなくて 来週になりそうです。 私もbalinekoさんの宿題もって5回目の鑑賞行ってきますね。 直貴の気持ちにどこまで寄り添うことができるのか・・・ 山田くんが「いろんな人の視点でみてください」って言ってたけど、まずは直貴の気持ちを自分なりに 理解していきたいと思うから。 旦那さんとは鑑賞できました? ではまた~ (2006年11月14日 11時15分11秒)
tomorinさん、どうも!
>ネタバレレビューありがとう~ >読んでたら無性に直貴に会いたくなって みんなに宿題だしまくって、観客動員UPをもくろんでます(爆)。おらおらー、見て考えてこい!みたいな。 山田くんが「いろんな人の視点でみてください」って言ってたけど、まずは直貴の気持ちを自分なりに >理解していきたいと思うから。 自分は裕輔演じる尾上君がかなり気に入っていて、 4回目は彼目線でみたりしちゃった!彼すごいよくない?パッチギ見なきゃ。 >旦那さんとは鑑賞できました? げ!まだなんです。11月中にはいってきます。 手紙の初登場興行ランキングで賭けをしたんですが、私はずばり4位で的中!! まずはおごってもらってきます。 tomorinさんの意見も聞かせてね!待ってます! (2006年11月14日 19時31分32秒)
おっは~!!
尾上くんいいとおもうよ~ 「パッチギ」観たあとネットでプロフィール調べたもん!! オダギリくんと同じ事務所なんだよね。 「ゆれる」「夜ピク」にも出演してるんだよね。 脇でもしっかり演技していて相方彼でナイスキャスティングでした。 旦那さまにおいしいものご馳走になってね~ もう~仲良しなんだから~ では~ (2006年11月15日 09時53分32秒)
balineko様
ようやく遊びに来られました。もう本当に色々と考えてしまって。こちらの記事もコメントも何度も読ませて頂きました。 私も観る度この映画の評価はアップしてます。それはまぎれもない真実。でもね…前半部分がね…何と言ったらいいのか…。同じようなご意見もありましたが、やはり剛志が犯罪をおかすに至るまでの心の動き、仲の良い兄弟の中にもある少しの心のずれは脚本に描きこむべきだったと思うのです。なんだかこう、前半急いでる感を否めないのです。そしてそういう足りない部分を、今回もまた、山田さん達が言葉でない演技で補っているんですよね。多くの人たちに(この映画が上映された刑務所の人達も含め)色々なことを考えさせることに成功はしているようですが、どんな人間もいつ剛志・直貴のようになるかわからない危険性を秘めているんだという普遍性までも感じさせる作品にはなっていたか?前半部分の描き方ではそれが足りないと正直思います。人間の普遍的な部分(弱さなど)をしっかり表現できる山田孝之という役者を主役にもってきているのに、どうして話を急ぐの、と残念です。幅広い世代に観られるメジャー作品だからこそ要点要点を絞ってわかりやすくする、というのではなく、むしろ細かい部分をしっかり描くべきだと思うんですよ。そういう意味ではもっと他の描き方だって出来た映画だと思っています。だから原作未見で映画だけご覧になった方には、是非原作もしっかり読んでね!と言いたいです。でもね、それにしても、もう言うまでもないことですが、山田孝之という役者さんは素晴らしいですよ。何と言ったらいいのか、彼は武島直貴ですよ、まぎれもなく。 あ~どうしてこう長くなるんだ、ごめんなさい!また遊びに来ます! (2006年11月16日 02時08分08秒)
balinekoさん、こんばんは。
あの崖っぷちのシーンは、私が本作品中、最も目に焼きついているシーンの一つなんですが、なんでそんなに印象に残ったのか・・、と改めて考えてみても、これは文字にするのが中々難しいですね。 私はあれ観た時、 「直貴が今、立っている世界の全て」 だと思ったんだと思います。 隔離された世界の果てから人間界を傍観している、一人の青年。 今まで、人事のようだったけれど、 「夢を諦めるな。」 と言われて、あの人間界へ今一歩踏み出そうとしている・・・、 この想いを一つ言葉で表すならば、 やはり、私は「決意」ではなかったかと思います。 おそらく直貴はあの位置に立ったことは初めてではなかっただろうけど、どこかしら羨望の目で街を眺めていたような気もします。そして何時しか、自分のいる場所は、あの無機質で頑丈な城のようにも見えるリサイクル工場だと、決め付けていたのではと思います。 そこから、今飛び立とうとしている。 もし直貴に翼があったら、あの崖からそのまま鳥のように飛び立って行けるほど。 やはり思うのは、意志の力でしょうか。 そしてもう一つ。 いつも帽子を目深に被り、人と目を合わせないように生きてきた自分への「決別」ではないかと。それは振り切る力を必要とするが故に、あのように切ないのかな・・とも思います。 どっちにしても、後から自分の気持ちを分析することになってしまい、「ん~、ホンマかいな?」ってこともいっぱいです。 それもなんですが、先日『メトロ』のことで丁寧にお返事書いてくださって、そのお礼が言いたかったんです、私。とても嬉しかったから。 で、それはあちらへ書かせてもらいました。 (2006年11月16日 02時18分44秒)
tomorinさん
>尾上くんいいとおもうよ~ だよね。彼すごくいいよね。彼が裕輔だったから、テラタケがすごくリアルに感じたんだよー! 自分の中で助演男優賞決定です。 >オダギリくんと同じ事務所なんだよね。 いいなー。山田君もオダギリ君の事務所ならよかったのにと無理なこといってみる(笑)。俳優として冒険させる事務所ですよね。 >「ゆれる」「夜ピク」 どっちもみたいんだけどDVDになるかな。 映画館ってよっぽどのことがないといかない。 ま、そのよっぽどが山田くんなんだけどさ。 (2006年11月16日 09時42分13秒)
正夢様
お返事ありがとう!待ってました!私は初日舞台挨拶で5回目鑑賞だったので(笑)、一人先走ったかなとかもんもんとしてました。 >前半部分がね…剛志が犯罪をおかすに至るまでの心の動き、仲の良い兄弟の中にもある少しの心のずれは脚本に描きこむべきだったと思うのです。 そうですね。これは本当にそう思います。それにしてもこの兄弟の周りには本当に誰も頼れる大人がいなかった。描かなかったこの空白自体は、十分現代における大人不在、親不在の問題を問う普遍性を持っていると思います。 あと私は前半以上に中盤の展開に大問題を感じていまして…。今正夢さんの前半急ぎすぎの指摘で思ったんですが、中盤の恋愛電車男の時間を削って、もっと「起」の部分をしっかり描いてほしかった。中盤に関してはまたレビューを書きますので、正夢分析をお聞かせください。 >原作未見で映画だけご覧になった方には、是非原作もしっかり読んでね!と言いたいです。 原作の方がもっと細かく人間の心の弱さまで痛々しく描き出していますからね。私は原作の直貴の心の動きはよく理解できるんですが、映画の中の直貴の心の動きはよく分からないところがあって。今までで一番難しい。 山田君は本当に説明ぜリフのない、行間を演じることが抜群にうまい役者です。しかしそれも緻密な布石と伏線あってのもの。今回は時間の関係か、そこが弱い。だからところどころセリフのない部分で直貴が何を感じていたのか、迷ってしまう。ま、それを知るために何度も見させたくなるという意味では、実は説明不足なのは確信犯なのかも(笑)。 リピーター割引もありますし。 (2006年11月16日 19時34分25秒)
不二子様
おいでいただいて嬉しいです! >あの崖っぷちのシーンは、私が本作品中、最も目に焼きついているシーンの一つなんです そうなんですね!私はいつも何か引っかかりを感じつつ、あのシーンを見ていて、で、夕飯の支度をしながら考え込んでいた時に、突如なんかひらめきました(笑)。 >隔離された世界の果てから人間界を傍観している、一人の青年。 ああー、なるほど。直貴は自分で自分を見捨てていた。始める前にあきらめていた。それが自身が犯罪者である倉田がやり直しているのを見て、考えるものがあったんでしょうね。 >もし直貴に翼があったら、あの崖からそのまま鳥のように飛び立って行けるほど。 うんうん!やはり飛翔ですね。ただそれはやっぱりもろい翼でなんですよね。蝋で固めた羽。 スポットを浴びて輝いたはずなのに、解けて消えてしまった…。 >いつも帽子を目深に被り、人と目を合わせないように生きてきた自分への「決別」 うーん。素晴らしい。自分の殻から一歩踏み出そうとした決意。なんですね。由美子もそういうナオを後押しし、顔を出して生きていくようナオの髪を切りたがっていたのでしょうね。 生野監督が「小説のような映画」とおっしゃっていました。見ては立ち止まり、咀嚼し、本当に自分は理解できてるのか考える…。 不二子様のコメントを読んで、また一歩直貴の心に近づけた気がしています。ありがとうございました! またぜひ不二子さんの意見聞かせてくださいね! (2006年11月16日 19時39分17秒)
balineko様
早速レスを感謝です!balineko様の文章を拝見すると、語り魂が熱くなってきます(笑)! >私は初日舞台挨拶で5回目鑑賞だったので(笑)… ふははっ!さすがっ!私は来週やっと5回目なのに! >十分現代における親不在の問題を問う普遍性を持っていると思います。 なるほどね。この点も意見様々あるでしょうね。実は私の中では『手紙』と同じく1組の兄弟を描いた『ゆれる』が今年の邦画ベスト1か2にランクしてるんですが、『ゆれる』の凄かったところは、親がいようと同じ屋根の下で暮らしていようと心は哀しくすれ違い悲劇を生むこともあるんだってことを真正面から描いているところなんです(これ以上は未見の方々のために申しません)。『手紙』の兄弟の描き方はたしかにbalineko様のような捉え方もできるけれど、それにしてももっとこの兄弟の歴史を描きこんでほしかったと私は思うのです。 >中盤の時間を削って「起」の部分をしっかり描いてほしかった。中盤に関してはまたレビューを書きますので、正夢分析をお聞かせください。 多分balineko様のおっしゃりたいことは私のと同じなんじゃないかと感じています。次回レビュー楽しみにしています! >山田君は説明ぜリフのない、行間を演じることが抜群にうまい役者です。しかしそれも緻密な布石と伏線あってのもの。今回は時間の関係か、そこが弱い。 全く同感です!私、編集でかなりカットされたのかもな、とも思ってますもん。憶測ですけどね!とにかく、私も来週また観に出かけます! それではまた♪ (2006年11月18日 03時20分03秒)
正夢さん、こんにちは!
>『手紙』の兄弟の描き方はたしかにbalineko様のような捉え方もできるけれど、それにしてももっとこの兄弟の歴史を描きこんでほしかったと私は思うのです。 見ていないからなんともいえないですが、作品の完成度という意味では「ゆれる」の方が上なんでしょうね。ただ私は瑕さえも魅力にできる作品というものもあると思っていて、手紙はまさにそれです。だから私も正夢さんも何度も見ちゃってるんでしょう(笑)。 > 全く同感です!私、編集でかなりカットされたのかもな、とも思ってますもん。憶測ですけどね! 私もこれ思ってたんです!手紙メイキングでクランクインの時のお味噌汁飲んでる玉山君と山田君のシーン、本編にでてこないですよね?! DVDでは完全版にしてくれないかな(笑)。 (2006年11月18日 14時29分41秒)
balineko様
ふははっ!昨夜は遅くまで外で盛り上がってたので…興奮さめやらずの頭でコメントさせてもらっちゃいました。今日は早く寝ます~♪ >私は瑕さえも魅力にできる作品というものもあると思っていて、手紙はまさにそれです。だから私も正夢さんも何度も見ちゃってるんでしょう(笑)。 ふははっ!あの映画で私が惜しいと感じているのは脚本前半部分と台詞と演出の一部だけで、役者さん達の演技や作り手さんの思いは本当に伝わってくるので…もう一度!もう一度!と追ってしまうんですね。 >手紙メイキングでクランクインの時のお味噌汁飲んでる玉山君と山田君のシーン、本編にでてこないですよね?! 実は今回あえてメイキングDVD観てないんです。山田さんの生の言葉には触れたかったけど、「感動モノ」を謳うようなナレーションが後からつけられていたらどうしよう、なんて思っちゃって。ごめんなさい、これこそ偏見ですね。お味噌汁のシーン、あったんですね。うーん、なんだかそこに重要な台詞のやりとりがあったんじゃないかって予感が…! ではでは、次回レビューにて! (2006年11月18日 22時56分08秒) |
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